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#9 超能力の話

「みっちゃん! 超能力と聞いて何を思い浮かべる!」


 超能力? あの不可思議パワーのことだねっ!


「スプーン曲げ!」

「しょぼいな。スプーン曲げ? フォーク曲げ? そんなもの超能力がなくてもできる! ぐいっとな! 見たまえ! 給食のスプーンがちょっとだけど曲がったぞ」

「確かにそれくらいならあたしにもできそうだけど、でもほらテレビでやってる風にはできないと思う。こすってるだけで曲がっていくやつとか」

「映像なんていくらでも細工できるじゃないか。少なくとも生で見ない限り信用できないだろ常識的に考えて」

「えー……」

「敢えて言わせてもらおう。超能力を謳うんだったら、普通じゃ曲げられないものを曲げろとな!」

「例えば何を曲げるの? くーちゃんの根性?」

「違うっ! スプーンがいけるなら箸だっていけるはずだ。無理とは言わせないぞ!」

「えっ、でも、くーちゃん……金属は曲がるものだけど箸は木だから曲げすぎると折れて……」

「超能力者ならそのくらいの無理を通して見せろ! できないんだったら手品師でも名乗ってればいいんだよ」

「なるほど……」

「確かに超能力と言っているのに準備が必要だったり、制限があるのはおかしいかもしれません」

「だろ? 要するにスプーンなんて曲げてるやつは超能力の超の字も理解してないアホ野郎ということだ!」


 さようならスプーン曲げ……。あたしは結構好きでした。確かに最近は手品師の人もスプーンを曲げるから超能力の有難味が薄れてきてるよね。スプーンじゃもうダメなんですね……。似たような形状のスコップかシャベルにランクアップする必要がありますね!!


「くーちゃんはどんなものなら超能力って認めるの?」

「サイコキネシスくらいやってくれたまえよ」

「なにそれ? 漢方薬の柴胡さいこと一体どんな関係があるの?」

「みっちゃんが漢方薬を知ってるなんて、……あ、ごめんなさい、別にバカにしてわけじゃなくて、知らない人の方が多そうだったから」

「どっちにしろ関係ないけどな。サイコキネシスっていうのは念動力、つまりは近くにある物体を念じるだけで操作する超能力だ」


 そんな能力が……!? つまりモノが自動的に空中を移動していたらそれはサイコキネシスなんだね!?


「つまりポルターガイストはサイコキネシスだったんだね!」

「……まあ、いいか。みっちゃんがそれでいいのならいいか。対して変わんないだろう」

「パイロキネシスはどうですか、くーちゃん」

「ありだな!」

「またキネシス能力が出たねっ! きっと高い温度を計測する能力と見た!」

「くそっ、みっちゃんが言っている意味が分からない!!」

「えっと……パイロメーターっていう表面の温度を非接触で測れる温度計がありまして……きっとそこからきてるんだと思います」

「みっちゃんの知識の偏りはどうなってるんだ? まあ、どうせ漫画とかテレビで見たとかそんなのだろうけど」

「いやいや、確かお姉ちゃんから聞いたんだったと思う。あんまりよく覚えてないけどねっ!」

「さすが高校生! いろいろ知ってるな」

「ゆずちーより頭悪いけどねっ」

「えっ!! 私そこまでは……!」

「海深さんに密告電話してくる。じゃあなみっちゃん。明日生きて学校に来るんだぞ」


 そ、そんなっ! マイシスターにそんな密告をされたらあたしはっ! あたしはっ! 今夜きっと抱き枕の刑に処されてしまのうではないでしょうか!?


「くーちゃんのケータイをへし折るから貸して!」

「そんなこと言われて貸すやつがいるかっ!」

「みっちゃんが命じる! ケータイをよこせ!」


 あたしの目から朱い光線(光情報)が飛んでくーちゃんの脳を刺激する! ……といいなぁ。


「残念だが君には他人を操る超能力なんてないからなっ!」

「ちぃっ! もしかしたらと思ったのに!」

「そんなわけあるかっ! みっちゃんに他人を操る力なんて持たせたら絶対にろくなことにならない。世界が滅亡しても不思議じゃないな」

「いくらなんでも滅亡させるほどのチカラじゃないと思います!!」


 「じゃあ使わないんだな?」と問われると「うん」とは言えないけど……言えないけど、乱用はしない。しないはずです! そういうのに頼りすぎると人間絶対にダメになるからねっ! あたしはダメルートには突入しないんですよーだ!


「みっちゃんので思ったんだけど、超能力って言ったらあれだろ。ベクトルを操作して攻撃を全部跳ね返すとか、オカルトを全部無力化する右腕とかそういうの。あとは電気の応用でレールガンだかコイルガンだかを撃ったりするやつ」

「あの……そういうアニメとか漫画に出てきそうなものは超能力とは言わないんじゃないでしょうか?」


 小さい声でゆずちーが言いました。あたしもそう思います! そういう週刊少年誌的なパワーは違うんです! 超能力っていうのはもうっとこう宇宙的なパワーなんです! 太陽とか月とかねっ!


「くーちゃん、それはきっとスキルとか特殊能力とかいうやつだとあたしは思う!!」

「はぁぁぁぁぁ!! とか力をためて、波動砲みたいのを撃つやつはダメってことか。いや、わかってる。私もあれを超能力とか言われても困る」

「クレアボヤンス、テレパシー、リーディング、クリオキネシス、プレコグニション、テレポーテーション、ソートグラフィー。こういうのを一般的に超能力って言うんです」

「くーちゃん……どうしよう。あたし、今初めて聞いた名称があるんですけど……」

「安心しろみっちゃん! 私もいくつか初耳だ! プレコグニションってなんだよ!!」

「それは未来予知のことです」

「ゆずちーゆずちー! ソートグラフィーはっ!?」

「ソートグラフィーは念写のことです。分かりますよね、念写って」

「あれだろ。思い浮かべたものを写真に写すみたいな。実際に目の前にないものを写真に撮るってやつ」

「そうです」

「あ、水を差すようで悪いんだが一応言っておくぞ。早く給食食べないとお昼休みがガリガリと削られていくんだがこのままでいいのか?」


 すでに時計は1時近くの時間を示しています。あたしとゆずちーはいつもの3倍くらいの速度で給食を食べました。否、流し込みましたァ!! 加速する超能力が発動したのかもしれません!


 そして放課後。ゆずちーは車で迎えにきたお母さんとともに東京へと行ってしまいました。明日も平日なんだけど、ちゃんと登校してくるんでしょうかね? とゆずちーを見送ったまま、昇降口でぼーっとしていたら大慌てでくーちゃんがやってきました。


「大変だ……みっちゃん!!」

「どうしたのくーちゃん? なんだか遅かったけど男子に告白でもされたの?」

「違う。そういうのはゆずちーの役目であって私じゃない」

「いや、でも、くーちゃんも女の子……はっ、わかった! ポンちゃんにこくは―」


 お腹を殴られました。


「つい手が出てしまったが私は悪くない」

「酷いよくーちゃん!!」

「いいから私の話を聞け!! なんだか知らないけど超能力に目覚めてしまったみたいだ」

「えっ? 念願のお箸曲げ曲げができるようになったの? 見せて!」

「念願じゃないし! しかも私ができるようになったのはこっちだ。よく見てろ!」


 あたしの目の前からくーちゃんが消えた、と思えば今度は背後から声が!


「これが私の目覚めた超能力だ!」


 ど、どういうことなの!? なんで真後ろにくーちゃんがいるの!?


「あ、あたしの体感時間を止めて、背後に回り込む程度の能力……!!」

「普通にテレポーテーションだよっ!! なんだよその回りくどい超能力は!」

「あたしにも半分でいいから分けて! お願い!」

「まず半分にする方法を教えてくれ。そうしたら分けてやってもいい」


 その日、あたしは瞬間移動を初体験して家に帰りました。これが本物の超能力……! スプーン曲げがバカバカしく思えるほどに完成された奇跡。


 そして、


 ある意味これが「見えない世界」との最初の接触だったんだとあたしは思うんだよね。もしかするともっと前から触れていたのかもしれないけど、気付かなければ見えないのと一緒だしね。


「このチカラさえあれば遅刻の心配はなさそうだ」

「犯行時のアリバイもバッチリ」

「まずはみっちゃんから殺そう。次はゆずちーだ! その頃私は北海道の防犯カメラに映ってる。完璧だな」

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