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#8 パソコンの話

「パソコンを始めようと思います!」


 声高らかに宣言する。これはあたしの意思を世界へと知らしめる大変重要な行為であり、いずれはみっちゃん史の教科書に載るであろうできごとなのだ!


「ついにみっちゃんもパソコンを使う時代になったんですね」

「待て待て。あんな高度な機械はみっちゃんには10年早いだろう。パソコンはやめてPF3で遊んでた方がいいって。そもそもパソコンを始めるって、パソコン本体はどうしたんだ?」

「フッフッフ。勿論手に入れました」


 それは昨日のこと。


「今日は海々にプレゼントがあるぞ」

「えっ!? 誕生日でもないのにプレゼントがあるんですかっ!? お父さん大好きです!!」

「だろうだろう! これが今回の海々へのプレゼント。パソコンだ!」

「パソコン!?」

「母さんはまだ早いって言うが、父さんはもう中学生なんだしこういうのはあってもいいと思うんだ」

「ありがとうお父さん!」

「ちょっと古いタイプだが、初めて使う分には新しい必要はないだろう」


 そしてあたしの部屋にノートパソコンが置かれることになりました。会社から持ってきた中古品だから初期設定みたいな面倒なものは一切なし! これならあたしでもすぐに使える!!


「で、何をするつもりなんだ?」

「だからパソコンだよ、パソコンをします!」

「みっちゃん……パソコンはいろいろできるんです。パソコンを使って何をする気なんですか?」

「………………」

「何も決めてなかったんだな」

「パソコンって何ができるの……?」


 パソコンの設置はしたものの結局一度も起動してないんだよね。……起動スイッチがどこだか分からなかったなんてことはないんだからねっ!?


「絵を描いたり、文章書いたり、音楽聴いたり、動画みたり、インターネットしたり。いろいろできるぞ。やろうと思えばゲームだってプログラムだって作れるし、自分で動画を配信だってできる」

「配信っ!? 個人でテレビ局になるの!?」

「……まあ、あれだ。そんな感じだ。ただしローカルだから視聴者はそんなに取れないと思う」

「どうやってやるの?」

「どれをですか? まず何がしたいのかを決めないことには私達でも教えるのは難しいと思います」

「そもそもみっちゃんはキーボードとマウスをちゃんと使えるのか」

「マウス……? そういえばマウスがなかった気がする……! どうやってあの矢印動かせばいいんですか!?」

「マウスがないって……。ああ、もしかしてノートパソコンなのか? だったら、指で動かせるパッドがついてるはずだからみっちゃんには丁度いいな」

「キーボードはどうですか? 文字打ってみたりしました?」


 キーボード……あれですか。ふむ……。あれは人間が使う道具じゃないとあたしは思いました! だってあいうえおが並んでないんだよっ! どうやって文字を打てばいいのかさっぱり分かりません! 悪魔の発明です……!


「この調子だとタッチタイピングは夢のまた夢か……」

「よ、用語で言われてもさっぱり分かりません……! どういうことなのパソコンってなんなの!? これは本当に人間が作り出したものなの!?」

「安心しろ。君よりも頭のいい人間が作り出したことは間違いない」

「パソコンの用語も使っているうちに自然と覚えられるはずです。私がそうでしたから」

「コピー&ペーストととかな」

「コピーはいいとして、ペーストって何? パソコンを煮詰めてジャムにする行為……?」

「悪魔の発明をしているのは君なんじゃないのか?」

「助けてゆずちーせんせー!!」


 ゆずちーなら意地悪しないで教えてくれるはずっ! せっかくのパソコンなんだし使いこなせるようになりたい!!


「ペーストっていうのは貼り付けるということです」

「は、貼り付ける……!? パソコンに何を貼り付けるというのでしょうか!?」

「こ、コピーしたファイルを、えっと、増やす行為?」

「……??」

「だめだ。みっちゃんに口だけで説明するのは難しすぎる。今度みっちゃんの家に行ってみっちり教えよう。絶対にその方が早いって」

「仕方ないですね。あたしもきっといろいろ言われても家で忘れてる気がします」

「HDDは分かるか?」

「ハードディスクだよね、確か。パソコンのデータが入ってるやつ」

「よしよし、偉いぞ。さすがのみっちゃんもHDDくらいは分かってくれたか」

「あたしの家にはブルーレイディスクレコーダーがあって、それにもHDDはついてるからねっ!」

「あっ、私の家にもありますよBDレコーダー。4番組の同時録画が可能なタイプです」

「そんなにいっぱい重ねて録画するものなんてないだろ常識的に考えて」

「深夜アニメ……」

「ゆずちーアニメ見てるの? 深夜? えっ? 夜中にアニメ放送してるの!?」

「知らなかったのか……。パソコンでならすでに放送しちゃった1話から見れるサイトあるぞ」

「それがインターネットだね!? インターネットぱねえ!!」


 インターネットくらいあたしだって知ってる! ふふん、ケータイでインターネットたまにするもんねっ! きっとあれの凄いバージョンがパソコンのインターネットに違いない。我が家でもついにスーパーインターネットの時代がきたってことだよねっ!!


「みっちゃんの家にインターネットの回線ありましたか?」

「どうだろう? 気にしてなかったけど、それっぽいものを見た記憶はないな」

「えっ? インターネットってパソコンがあればできるんじゃないの? だって、ほら、コレ見てよ。ケータイは別に他に何もいらないよねっ?」

「残念だが、みっちゃん……パソコンのインターネットにはプロバイダの契約とか場合によっては工事とか必要なんだぞ」

「ガァァァァァァァン……」


 さよなら、あたしの素敵インターネットライフ……。


「インターネットしたいってご両親に言ってみてはどうですか?」

「それですっ! さすがゆずちー! 絶望しか運んでこないクーの人とは大違いだねっ!」

「ついでに拳骨も運んでやろうかみっちゃん」

「いやんっ、暴力反対!」


 それからしばらくして、我が家にもインターネット回線が導入されました。


「納得がいかないぞ! パソコンを使いこなせないくせに回線だけ無駄にいいもの引っ張りやがって! 宝の持ち腐れじゃないか! 私にも分けろ! 席を替われっ、変なものをいっぱいダウンロードしてHDDを埋めてやるーっ!」

「くーちゃん、そんな子どもっぽい真似をっ……! ああ、ごめんなさいみっちゃん! 私ではくーちゃんを止められません!!」

「ところでくーちゃん何かエラーが出てるんだけどこれは何?」

「強制終了のメッセージが出てるぞ、何したんだみっちゃん!?」

「あたしに聞かれても分からないよっ!? あれっ!? ふりーずして矢印が動かなくなった!?」

「えっと、これはなんだっ!? お、ちょっとだけポインタ動いた!? いや、だめだったか!!」

「ゆずちー!」

「ゆずちー!!」

「えぅ……」


 電源ボタン長押しでパソコンの強制終了ができることを今日初めて知りました。

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