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#7 雷の話

「そう言えばすっかり忘れてたんだけどね」


 今日はあたしの大好きな休日、日曜日。明日は大嫌いな月曜日だけど、明日のことは明日考えるとして今はお休みのことだけを考えていればオッケー! たとえ明日不幸になったとしても、今だけは超幸せ!


「ん、どした? 宿題は出たなかったはずだぞ」


 うちに遊びに来ているくーちゃんが煎餅をかじりながら聞いてきました。ジュースのみながらニコニコしているゆずちーとはなんだか態度が違って見える不思議。これが日頃の行いが云々というやつなのでしょうか!


「違うよ、勉強の話のじゃなくてね。春休みにゆずちーが魔法使ってるところを見たんだよっ!」

「ぶぶぅーっ!?」


 ゆずちーが盛大にジュースを吹き出して、咳き込みました。どうしたのゆずちーそんなに慌てて。タオル持ってくるからちょっと待っていてください。


「持ってきたよタオル。それでゆずちーの手から雷が出てきてババーッビリビリって」

「そうかゆずちーが魔法を使ったか。みっちゃんが使ったっていう話ならありえないって断言するけどゆずちーだしな」

「どういうことですかっ!? 魔法だよ魔法!? もっとそんなわけないだろーとか、バーカとか、頭おかしくなったんじゃないのとかそういう風にならないの!?」

「だって魔法少女プリチーゆずちーだぞ。魔法くらい使うだろう常識的に考えて」

「なるほど、そうだよねっ常識的に考えて!」

「ええっ!? どうしてそういう結論になっているんですか!?」

「そんなことよりも、私の話を聞け!」

「そんなこと、……なんですか? あれぇ?」


 ゆずちー頭を抱えながらソファに倒れこむ。ゆずちー、もしかしてお疲れですかっ!? マッサージとか必要ですか!?


「雷が海に落ちたらどうなると思う?」

「海水は電気を通すから感電して全ての魚が死ぬ」

「そんなわけあるかっ! だったら今頃海面はあらゆる死体だらけだよ!」

「魚はきっと電気抵抗100%のステータス補正を持っているから感電してもダメージなし!」

「電気抵抗って……そんな生き物はこの世にいませんよみっちゃん」


 ゆずちーが復活しました。同じ系統の魔法を使っていたからきっと気になってしまったんだと思います!


「それどこのゲームだよ……」

「えー……じゃあ、あれだね。雷は海に落ちない! ファイナルアンサー!」

「雷が海に落ちた事例は結構たくさんあります。サーファーの方が感電する事故も過去何度となく起こっていますし……」

「か、感電するけど死なない……!」

「確かに気絶する魚はいるんだろう。それではゆずちー、答えをどうぞ」

「えっ!? ここで私に投げるんですか!? えっ!?」


 ゆずちー先生の雷講座始まるよーっ!


「そのですね、雷が海に落ちても内部には電気は伝わらずに概ね海面を流れるんです。なので海の中にいる魚が感電して死ぬということにはなりません」

「みっちゃん、これ豆知識な。水は電気を通さないんだぞ」

「うっ、うそだー!? だって温泉で感電させて殺すサスペンスドラマありましたよねっ!」

「みっちゃん、本当に水だけのもの。純水は電気を通しません。明確に言えば電気抵抗が高くて電気が流れないんです。抵抗値は18mΩほどになって……」

「待て待て、ゆずちーそこまで言わなくてもいい。きっともう私もみっちゃんもついていけないから」


 メガオームってなんですかっ! ワームの超でっかいやつですかっ!? ウルトラ級のミミズですかっ!? え? 単位? 何の……単位なのかもよく分かりません。これが、これがこの世界の科学ということか!?


「みっちゃん、そんな真剣な顔してどうしたんですか?」

「どうもしてないよゆずちー。あたしはちょっとだけ世界の核心に近付いたんだよ。それであたし雷で思ったんだけど、雷おやじってなんで雷なんでしょうかね?」

「何かと怒鳴るからその音を雷の音に比喩られたんじゃないの?」

「じゃあ別に雷じゃなくてもいいと思うんだよねっ! 爆弾おやじ、工事現場おやじ、ジェットエンジンおやじ!」

「あの、それは……単純に昔からあるか否かという点が絡んでいるのかと」

「大昔にジェットエンジンがあるのかみっちゃん?」

「ジェットエンジンの化石はまだ見つからんのかーっ! 最近の考古学者どもはたるんでおる!」

「たるんでるのは君の頭だ! 思考回路だ!」


 いいもんねっ、いいもんねっ! そのうちくーちゃんの頭がたるんでることを証明してあげるんだもんねっ! 何気にいろいろ雑学知ってるからって調子に乗っていられるのは今のうちだもんね!


「雷と言えば、あれだよね。おへそをとられるとかいうやつ」

「聞いたことはあるな。でもどういう意味なのかはさっぱり分からん。ゆずちーパース」

「そうは問屋が卸さないよ!」

「問屋に転職してから出直して来い!」

「うぐっ!」

「てなわけでゆずちー解説頼む」

「えっと、このままの話題で行くんですか? いいですけど……。私も正確な由来を知っているわけではありません。私が聞いたことのある話では、オオカミが出るから森に入ってはいけない、という話に近いものです」

「どういうこと?」

「この場合オオカミと言うのは森に入ってほしくない大人が言い出した嘘です。それと同じようにおへそを取られるというのも嘘で、その実態は、雷が鳴って雨が降ると気温が下がってしまってお腹が冷えてしまうので、手を当ててお腹を暖めましょうということなんです」

「なるほど……大人はうそつきばっかりだってことだねっ! そうなんだよねゆずちー!」

「あ、えっと……でも、その、子どもは直接言っても聞きませんし、こういう遠回りな方法を使わないことには……その」

「つまり嘘!」

「はい……そうです」

「みっちゃんは夢のないことを言うな。そんなことを言い出したら、サンタクロースの存在だって嘘ってことになるわけだし、子どものクリスマスが楽しくなくなるだろう」

「えっ!! サンタクロースって実在しないの!? ど、ど、どういうことなのくーちゃん!?」

「えっ、あっ、その、だな……ゆずちー、パース!」

「えええええええ!?」


 どういうことなの? サンタクロースがいないってどういうことなの!? じゃあ毎年あたしにクリスマスプレゼントをくれてるのは一体誰!?


「あ、あのねみっちゃん。くーちゃんは悪い子だからサンタクロースがきてくれてないだけなんです!」

「うぉぉぉぉぉい!! それじゃあ私がただの可哀想な子じゃないかっ!!」

「くー、くーちゃんかわいそう……」

「こらっ、マジ泣きするなっ!」


 今度からくーちゃんにクリスマスプレゼントを自慢するのはやめようと思いました。ぐすっ……。


「ふざけんなっ、こらっ! 私の話を聞けそのこの小娘ども!!」

「今のくーちゃん雷娘ですね」

「いい度胸だ。覚悟はいいなゆずちー……」

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