表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/32

#30 おにぎりの話

 三角形に整えられた白いご飯。それに真っ黒な海苔を巻いてある食べ物がテーブルの上にあります。それを睨みつけることおよそ1分。解はでませんでした。


「ゆずちー、この食べ物はおにぎりですかっ、それともおむすびですかっ!」

「えっ!?」


 サンドイッチを食べようとしていたゆずちーが驚きの声を上げました。


「ど、どちらも同じ食べ物だと思いますけど……ごめんなさい、私には分かりません!」


 とゆずちーはサンドイッチをパクパク食べ始めました。お米派ではないゆずちーに聞いたのは間違いだったのかもしれません。ですがこれもまたゆずちーの言葉!!


「ほらくーちゃんゆずちーはこう言ってます!」

「いや、待て……私の調べによれば」

「まずはソースを明かしてください!」

「えっ!? みっちゃんの口からソースなんていう言葉が出てくるなんて……」

「確かにそうだがゆずちーの口からは白パンが零れ落ちてるぞ」


 慌ててティッシュを広げているゆずちー。ちょっと頬が赤くなってぷりちー!!


「あたしも日々インターネットに汚染されていますので!」

「汚染とか……そのうちコンピュータウイルスにでも感染するんじゃないのか?」

「手洗いとうがいしてれば大丈夫です!! あたしは毎日してるので万事OK」

「えーと、その、はい。そのまま続けていれば大丈夫だと思います」

「おーい、ゆずちー……いいのかそれで。あたしはゆずちーのツッコミに期待したんだぞー」

「大丈夫です。みっちゃんがコンピュータウイルスに感染しておかしくなることはありません」

「……まあ、いいか。いいよな、うん。嘘はついてないし」


 体調管理の最初の一歩。それこそが手洗いとうがいだと思います! お陰で小さな風邪はひいてもインフルエンザのような凶悪なやつにかかったことはありません! 同じようにパソコンからウイルスが飛んできてもきっと大丈夫です! それにここまでパーフェクトな私なら細菌兵器がばら撒かれてもゾンビになったりはしないでしょう! フッフッフ!


「そんなことよりも全部にぎりめしでいいと思うんです!」

「なんだ? またさっきの話か? そろそろゆずちーのサンドイッチ伯爵に飛び火しようじゃないか」

「話している間に食べ終わってしまいましたけど……?」

「そうか……。じゃあ、もういいから我々もそのおにぎりを食べよう」

「にぎりめしと呼称したまえくーちゃん」

「私は全部おにぎりでいいと思うぞ。最近おむすびって言葉きかなくなってきた気がするし、にぎりめしなんて今日久々に聞いた気がするわ」


 ぐぬぬ……確かにあたしもにぎりめしなんて表現久しぶりに使った気がします。


「コンビニではおにぎりが主流な感じがしますけど」

「あれってお店によって結構味違うよねっ! まったく塩味きいてなかったり、具がたっぷり入っていたり!」

「実は私、コンビニのおにぎりって嫌いなんだ」

「えー、どうしてですか!?」

「見たまえこれを!」


 くーちゃんがあたし達に見せてきたのはおにぎりを包んでいたビニールです。1番、2番、3番と開ける順番が数字で書いてあるので初心者でも手軽に開けることができます!


「サンドイッチの包装とは違ってこの複雑怪奇さは一体なんだ? この手順を踏むことになにか意味があるのか!? それにだ! ちゃんと順番通りに開けているのにのりが巻き込まれてちぎれるのが気に食わない!!」

「それはくーちゃんが不器用なだけだとあたしは思うんだよね!」 

「そういう包まれ方をしているのは形を崩さないという意味があるのかもしれませんね」

「三角に拘るからこんなことになるんだ!」

「おにぎりが三角形なのには意味がちゃんとあります」

「見た目がいいんですね分かります」

「いえ、そうではなくて……」


 ゆずちーによるおにぎり講座・神話編が始まりました。8割くらいはカットで!


「……というわけでして、昔の人は山を神格化していたのです。それで山を、つまりは神様を象って三角形にして食べていました。これが三角形になっている理由です」

「そんな神は大昔に死んだ! いいだろ全部丸型で!! そんなことよりも開けやすさが重要だ!!」

「ああ、せっかくの歴史が、せっかくの企業努力が……」

「ゆずちーの説が正しいとすると、焼きおにぎりは神様を火炙りにしてるんですねっ!! これはヤバイです!」

「みっちゃん、その理屈でいくとそもそも神様を食べてる時点でおかしいからな。あくまでも象ってるだけだからな」

「くーちゃんは偶像崇拝を知らないようですね」

「おにぎりで偶像とか無理ありすぎるだろ……。それにおにぎりなど所詮は食べ物だ」

「そんなこと言い出したら仏像なんて所詮木材だよっ!」

「みっちゃん……その言い方はどうかと思います」

「そうだぞみっちゃん。魔法少女は実在するんだ。後は分かるな……?」


 おおう!? オカルトは実在するつまり……神も実在する!?


「変な思考誘導してみっちゃんに誤解を受け付けないでください!!」

「そう怒るなよゆずちー、可愛い顔が台無しだぞ!」

「誰のせいですか!」

「すべては企業努力が足りないせいだ。きっとそうだ。日本政府が迷走してるのも企業努力が足りないせいに違いない」

「それは政府本体と、選挙にいかない若い人のせいでもあると思います」


 おにぎりの神がいるのならラーメンの神もいるに違いありません。

 カップラーメンが3分待たないと食べられないのは、その間に食欲が膨れ上がるからだとか聞いたことがあります! お湯をいれてからの180秒。それは体感では千秋にも等しい時間。それを導き出したのは企業努力、あるいはラーメン神のお導き。そんなわけで待つことによりラーメンの美味しさは最高ランクまで急上昇するんです!! これが神の奇跡。


「ラーメン食べたくなりました!」

「どうして急にラーメンを? もうおにぎりに飽きて?」

「割り箸をちゃんと割れないみっちゃんがラーメンなど100年早いわ!!」

「あたしだって毎回へんな感じになるわけじゃありませんから! この前のはたまたまです!」


 割り箸の企業努力が足りないと思うんです! サルでも綺麗に割れる割り箸というのを誰か開発してください! 割り箸は日本人にとっては必須なアイテムなんですから、企業努力という名の神の御業が入る余地はいっぱいあるはずです!

 それと割り箸と一緒に入っている爪楊枝には何の意味があるんですかっ! 指に刺さって痛いだけです!! あれをなくせば経費削減効果があるのではないでしょうか!


「ところでみっちゃん。そのおにぎりの具って何ですか?」

「焼きネギ豚キムチだったと思います!」

「なんだその迷走してる具は……。梅干とかたらことかじゃないのか!!」

「照り焼きチキン! 牛丼おにぎり! チーズミートボール! やきそば! ラー油チャーシュー! すべておにぎりの具!!」

「ばらばらで買えばいいだろう!! 何でそんなサンドイッチ伯爵みたいなことやってんだよ! どこにおにぎり男爵がいるんだよ!!」

「コンビニの従業員だと思うんだよね!」

「じゃがバターおにぎりや、カレーおにぎりなんていうものも実在していますよくーちゃん」

「いいよ私は鮭で! ツナマヨで!」

「そんなオーソドックスな具が流行ったのは今は昔。最近はこういう変わったおにぎりを作っていかないとおにぎり業界では生き残れないんです!」

「マジか!! 辛いなおにぎり業界!!」

「実態は私も知りませんけど、新作の開発に力をいれた結果であるのは間違いないでしょう」

「あたしとしてはおにぎりばっかり力を入れてないでコンビニスイーツにも力を入れてほしいんだよね」

「それは言えてるが最近はコンビニスイーツパワーアップしてると思うぞ」

「雪花堂レベルに!?」

「いえ、みっちゃん……さすがにそれは難しいでしょう」


 そのうちスイーツにもおにぎりが侵食してきて、謎のおにぎりケーキとか、おにぎりゼリーとかが出現するかもしれません! ネタとして1回買ってしまいそうなラインナップがどーんと!! それで美味しかったらあたしはどうすれば……!!


「……身近な食材で美味しいスイーツを作るというのは逆にありな気がしてきました! あたしがゆずちーを唸らせるおにぎりスイーツを作ります!」

「ま、まってください! おにぎりとはいえ仮にもスイーツなんですよね!? そんなものをいくつも食べるわけには……」

「太るからなー」


 何気なく飛び出したくーちゃんの言葉がグサリときたらしくゆずちーは崩れ落ちました。


「くーちゃんのバカー!!」


 というセリフを残して。


「仕方ないので試作品の実験台はお姉ちゃんに任せて、ゆずちーには完成品をプレゼント」

「安心しろゆずちー! みっちゃんの試みなんてどうせ1%の成功率もないんだ!」

「酷いよくーちゃん!! あたしだってやればスイーツの一つや二つパパパパーッと作れます!!」


 これが、後々あたしがパティシエールになっていた理由、その1つかもしれません! うん、10数年とか経過すると完全に忘れてますけどねっ!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ