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#3 お小遣いの話

 どうしよう、お金がありません。自販機をあさりまくって13台。手に入ったのは170円。微妙すぎてあたし泣きそうだよおおおおお!!


「てなわけで、お金を出しなさいゆずちー」

「何をいきなりカツアゲしようとしてるんだ君は」

「違うよっ、昨日ゆずちーに50円貸したからそれを返して欲しいなと思って」

「君はいろんな意味で紛らわしい。むしろ存在自体が紛らわしい」

「存在自体がネタのくーちゃんが酷いこと言ってます!」

「君もな……。てか存在自体がネタって。むしろそれはみっちゃんだろう」

「えっと、……これ、50円」

「ありがとうゆずちー! これでちょっとだけ戦えます!」

「聞けよ。君は一体何と戦ってるんだ? 悪人か? それとも怪獣か?」


 50円玉を強く握り締めて喜んでいたらネタ存在の友達が余計なツッコミを入れてきたのです! ぜになげでもすると思ったのかな? 投げるなら10円玉で十分だよねっ!? 50円玉を投げるなんてとんでもない!


「みっちゃんは何と50円玉で戦うんですか?」

「ゆずちーまで……。それはね、夜中の空腹とです!」

「確かに50円あれば駄菓子は買える。だがねみっちゃん。お小遣いはどうしたんだ? 手持ちがあればもっといいものが買えるだろう?」

「経済の流れに飲まれて消えてなくったわけで……」

「つまり貰ってすぐに使ってしまったというわけですね? 来月から無駄遣いは控えるようにしましょうね、みっちゃん」


 無駄遣いをしてるつもりはないんだけどなぁ。あたしだって少ないお小遣いを頑張ってやりくりしてるんだよ!


「具体的に毎月いくら貰ってるんだ?」

「あたしのお小遣いは1000円。月初めに1000円が紙で支給されるの!」

「紙じゃなくてお札って言ってね」

「いや、もしかすると商品券的な何かであって現金じゃない可能性もあるぞゆずちー」


 あたしのお母さんそこまでケチじゃないよ!?


「2日目に残金が90円になってしまったのは迂闊だったかもしれません」

「やりくりしてないじゃないか。どうせお菓子とかに全部消えたんだろう?」

「みっちゃん、何を買ったのか教えて」

「ふっ、仕方がない。910円が何に消えたのか。あれから3日が経過した。ならばもういいだろう……今こそ理由を語る時」

「そういう前フリはいらないから早く話せ」


 えー? 重要だよね、前フリ? いらないなんて酷い……。


「ところでくーちゃんにゆずちーはお小遣いいくら貰ってるの? 500円?」

「私は1500円貰ってる。どうだみっちゃん羨ましいだろう」


 い、いってんごばい……。そんなっ、あたしは1000円ピッタリなのにどうしてくーちゃんは500円も多いの!? 日頃の行いはあたしの方がいいはずなのに!! あたしのお母さんはケチだったんですか!?


「に、250円あたしにくれれば同じになるんですけどどうでしょう?」

「何がどうでしょうだ。やるわけないだろうが」

「ケーチ、ケチケチ。くーちゃんのケチンボ!!」

「あんまりケチケチ行ってると君のお小遣いから250円抜くぞ。チートツールで!」

「そんなツールあったら困るよ!! ……ゆずちーは?」

「私はお小遣いを貰ってません」

「そんなっ……ゆずちー……ご、ごじゅうえん、あげる」


 ゆずちーの貰ってない発言を聞いたら、どうしてか分からないけど目から汗が出て来るんだよ……。ゆずちー……ごめんね。ゆずちにーとって50円は大金だったよね。無理に取り立ててごめんなさい。


「ちょっとカッターナイフもって銀行に行ってくるね。待っててねゆずちー。100万円をプレゼントしちゃうよ!」

「あたしにも50万円分けてくれ」

「おっけー!」


 いざ、第一話『みっちゃん・ストライク』を開始する! 目指すは1000万円! 金を出せって言えばいいだけなんて楽勝だね!


「最近の銀行は防犯システムが過剰にあってすぐに警察が来るけどみっちゃんなら大丈夫だろう」

「あの……どこまで本気なのかわかりませんけど、勿論冗談なんですよね?」

「そりゃそうだろう。いくらなんでもカッターはないって。せめてピストル持たないとな」

「ももももももちろんだよゆずちー」

「その動揺おかしいだろ、まさか本気だったのか?」

「ふっ、みっちゃんに不可能はなーいっ!」

「ならば1000円のお小遣いで一ヶ月を乗り切って見せろ。話はそれからだ!」


 なん、ですと……。あたしに不可能が、あったというのかっ……。


「でも、お小遣い貰ってないゆずちーを救うためには大金が……!」

「えっ、いえ、お構いなく……! お小遣いは貰ってませんけどまったくお金がないわけじゃありませんから……」

「聞いたかみっちゃん。やりくりするっていうのはこういうことを言うんだよ」


 あたしにできないことをゆずちーができる……さ、さすがですゆずちー。


「あ、あたしには『やりくりスキル』のレベルが足りなかったみたいです。反省してます……。910円分も古本屋でマンガ買ってごめんなさい!」

「本当にごめんなさいだよなそれ! まずはお小遣いをくれた母親に謝れ!」

「ごめんなさい神様!」

「両親を通り越してますよ!? それに本気で神様に謝るのなら、神社の方がいいと思いますけど……違います、よね?」


 ゆずちー……自信を持って発言しようよ。別に初対面の人に何か言うわけじゃないんだから。あたし達は友達なんだらくーちゃんみたいにバシバシ言ってきていいんだよ! くーちゃんが二人に増えたらツッコミが激しすぎてあたしが爆発霧散しちゃうけど!


「まあいいです。今までの話は全部なかったことにするとして、あたしはどうやってお金を稼げばいいと思いますか?」

「なかったことになってない話がある気がするが、そうだな。アルバイトでもすればいい」

「中学生をを雇ってくれるところなんてあるのかしら……?」

「新聞配達だ!」

「嫌ですそんな仕事! 朝早く起きられるわけないでしょう!」


 わりと早く登校はしてるけど、それはお母さんが布団を引っぺがすからであってあたしの意思ではないんだよ! むしろあたしは平日でもずっと寝ていたいんです!


「あのね、みっちゃん。そんなに無理してお金を稼ぐ必要ないでしょう? 人の命でもかかってるの?」

「いや、でも……最新コミックが」

「あきらめろ。コミックは中学生が買うには高すぎたんだ……!」


 ぐっ……。本当だよねっ! 一冊400円近くするなんてお小遣いの少ない小中学生には高すぎるんですよ出版社さん!! せめて200円になりませんかっ!


「よしっ、ちょっとエッチなお仕事を始めましょう!」

「待て待て。そういうのは18歳以上じゃないと警察に捕まるんだぞ」

「でも、だからこそ逆に高く買ってくれる気がします!」

「あわわわわ、駄目です。ダメダメダメ!!」

「そうだ、臓器を売ろう!」

「京都にでも行くみたいに何を言ってる!! みっちゃん死ぬ気か! お金のためにもう人生捨てる気かっ!」

「でも、肺の1つくらいなら大丈夫じゃないでしょうか、2つあるんだし」

「マッチのように臓器を売り歩く、臓器売りの少女。近日ロードショーってか」

「うっ……。わ、わ、わたし、ちょっとトイレに」


 ゆずちーが口を手で押さえたままトイレへダッシュ。きっとゆずちーはリアルな想像をして気持ち悪くなったんだと思います。


「なあ、みっちゃん。母親のお手伝いでお駄賃を貰うとか、お小遣いアップを要求するとかまずはその辺を試せ、なっ?」

「その手がありましたねっ! さすがはくーちゃん、たまには役に立つ!」

「君はめったに役に立たないけどな」

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