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#23 ◆Dance with April Fools' Day phase1: 有言の話

 4月1日――恐ろしい日だったよ。それと同時に思い出してみると最高傑作でもあったな。てなわけで語ろうか、あの日に一体何があったのかを。


 4月最初の日。みっちゃんとゆずちー家に呼んで遊ぶことになった。ゆずちーはともかくみっちゃんはレベルの低い嘘を量産してくるだろうから、今年も一つ残らず滅多切りにしてやろうと気合を入れて2人が来るのを待っていたのさ。


「みっちゃん、春休みの宿題はどうだい?」

「くーちゃん、春休みは英気を養うための時間であって苦行に励む時間じゃないんだよ!」

「学生の本分は勉強だぞ。真面目にやる気はないが、それでも姿勢は見せるべきだ!」

「姿勢なんて飾りです! 偉い人にだってそのくらいバレてるんです!」

「宿題未提出で怒られるのはみっちゃんの勝手だが、そこに私達を巻き込むんじゃないぞ!」

「ところで今日はくーちゃん1人だけなの?」

「親は下にいるけど兄貴ならエイプリルフールイベントだーって、気合いれた格好でどっか行った。後は知らん」


 私は兄貴の背中をちょっとだけ押してやっただけなんだ。後は兄貴が勝手にああなって、そうなっていったんだよ。だから、もう兄貴は私の手を離れているんだ……。雛鳥だった兄貴はいつの間にか成長して巣を飛び出していったのさ。フッ……。


「それにしてもゆずちー遅いな」

「ゆずちーなら実はくーちゃん家の前で転んで唸っているんだよっ!」

「そんなわけがあるか……」


 と、窓から外を見たら本当にゆずちーが転んでいてビビッた。みっちゃんは超能力者だったのか!? そういうのは私だったと思うんだけどな!?


 1分後、ゆずちーイン。


「おじゃまします」

「ゆずちー……盛大に転んでたみたいだが、大丈夫か? 血が出てるなら救急箱持って来るぞ」

「え? ゆずちー転んだの? そんなに急いでこなくてもよかったんだよ?」

「み、見ていたんですかっ!? あわわわわわ……」


 玄関で丸まってないで早く入っておくれよゆずちー。ちなみに盛大に転んではいたものの出血を伴うような怪我はなかった。みっちゃん曰く魔法のバリアがゆずちーを防御したらしいぞ。いいなそれ。私も欲しいぞ魔法バリア。それさえあれば交通事故もポンも怖くなさそうだ。


「さて、2人とも。分かっているとは思うが今日は嘘をついてもいいあの日だ!」

「つまり詐欺師が逮捕されない日ってことだよねっ!?」


 とんでもない日だなおい! そんなで大丈夫なのか!? 警察仕事しろっ!


「いくらなんでも犯罪レベルになってしまうと逮捕されます!!」


 ゆずちーが慌てて補足する。常識的にはありえないが、みっちゃんならやりかねないと思ったんだろうよ。


「嘘ってどこからが犯罪なのっ!? 教えてゆずちー!」

「え、えっと……悪戯ですまないあたり? 後は警察にお任せします!!」

「投げたな」

「病院に爆弾を仕掛けたって電話しても大丈夫?」

「爆弾の時点でアウトだみっちゃん!」

「私がたとえ歩くインターネットだったとしても、六法全書を完全記憶なんてしてませんから判断不能な件はいっぱいあると思います。ですが今の例えがダメなのは明らかですよみっちゃん」

「ロッポウ……!? 何それ!? 紫光院家に代々伝わる魔導書ですかっ!?」

「法律について書かれている難しい本です! ちゃんと本屋さんに売っています!」

「私でもそれくらい知っているというのにみっちゃんは……!」

「あたしがスーパーコンピュータ並の頭脳を持っていたとしても誰も教えてくれないことまでは知らないんだよねっ!」

「大丈夫だ、みっちゃん。君が持ってるのはノーマルブレインがさらに劣化したやつだと思うから」


 それはどうかな? と不適な笑みを浮かべるみっちゃん。個人的には宿題を演算できない人間にスーパーなブレインなんて搭載されていないと思うんだ。4ビットコンピュータとかじゃないだろうか。


「あたしは知ってるんですよ。今日のおやつはポテチ! あたしのスーパーブレイン、略してスパブレの演算に間違いはありません!」

「語呂悪いなそれ。それと出てくるのは私が買ってきたクッキーだ! 所詮は4ビットだったなみっちゃん!」


 このクッキーでゆずちーを太らせて……とか変なことを考えながら私がジュースと一緒に買ってきたものだ。そのはずだったんだが……。


「みっちゃんの言った通りになりましたね」

「おかしいな……ポテチなんて買ってきてないんだが」


 本当にスパブレ演算だったとでも言うのか? みっちゃんなのに? メモリ128メガも搭載されてなさそうなみっちゃんなのにか!?

 うちの母親が持ってきたのはオレンジジュースとポテチだったんだよな。どこから出てきたんだよポテチ。みっちゃんがこっそり持ち込んでいたのか? マッチポンプだとでも言うのか? くっそ、分からん。まったくの謎だ!


「ふっふっふ、これがあたしの人徳ってやつだよ。くーちゃんはカルマが足りないからクッキーは出てこなかったんだね!」

「人徳? どこの言語だ? 日本語で頼む」

「あたし日本語喋ってますからね!? 間違えても英語は喋ってませんからね!?」

「まあまあ、お2人とも。ジュースでも飲んで落ち着きましょう。頂きます」


 ゆずちーが正常に機能しているとバランスが偏らなくていいな。

 それからはポテチをつまみながらの雑談さ。


「そのポテチ、明日のゆずちーのお肉」

「変なこと言わないでくださいっ!」

「しかしポテチは1/3が油だって聞いたことあるぞ」


 ゆずちーは、ポテチを、静かにお皿に戻した。


「中学生は成長期なんだから極度に太ってない限り体重なんて気にしなくてもいいと思うんだがな」

「気になるものは仕方ないじゃないですかぁ……」


 ゆずちー弄り以外は、ドラマのこととかアニメのこととかが今回はメインだったかな。


「探偵が犯人とか推理小説だとやっちゃいけないルールじゃなかったか?」

「それはあくまでも方針みたいなものであって、そういうルールが存在しているわけではありません」

「面白ければそれでいいんです! どうせ自分で推理なんてできないんですからねっ!」


 残念なまとめ方はやめよう、みっちゃん。一応作り的には推理可能だったはずなんだから。


「そうっ! 今まで隠してたけど、あたしは呪術師だからゆずちーに呪いをかけて進ぜよう! むむむむむー! はー!!」

「……で、何か呪いかかったのか?」

「いえ、……なんともありませんけど」

「ふっふっふ、あたしのグレートパワーが効力を発揮するのはもうちょっと後だよ! 虫に蹂躙される闇の呪術なんだよ!」

「むしっ!?」

「みっちゃん、正直に答えるんだ。どんなアニメをみたんだ?」


 なぜ目をそらすのか、かりんさんに教えるといいよ。虫を操るような呪術師が出てくるアニメなんだな? そうなんだな?


「ゆずちー、該当しそうなアニメは?」

「『はこにわ』でしょうか? そういうキャラが出てきましたけどもう塵になりました」

「そうそう石化してこっぱみじ、……じゃなくて」

「もう遅いぞみっちゃん!」

「ぐぬぬ……誘導尋問なんて卑怯だよ! 友達同士なんだから正々堂々と戦うことを求めます!」

「何を馬鹿な。アンデッドに聖水使って一撃死させるみたいに勝てればそれでいいんだよ! 所詮は勝ったものが正義だよ! 過程よりも結果なのが大人の社会ってやつだ!」

「確かに大人の社会では失敗できないことは多々ありますけど、それは言いすぎなのでは……」

「大人ってずるいと思います! だからあたしは子ども代表としてずっと子どもでいることを宣言します!」

「とんでもなく迷惑なやつがこんなところに!!」


 みっちゃんは社会に適応できるのか凄く将来が心配だ……。できればアホでもなんとかなる職が見つかることを祈ろう。

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