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#18 恋愛の話

「みっちゃあああああぁぁぁぁぁん……」


 急に涙で顔をぐしゃぐしゃにしたゆずちーに抱きつかれました。一体何があったのゆずちー!! 誰かに襲われたの!? 虐められたの!?

 ゆずちーは答えてくれません。あたしのほぼぺったんな胸の中で泣き続けるだけ……。一体ゆずちーを襲った悲しみの原因はなんなのですかっ! 魔法少女引退宣言とかそういう話題ではないと思うんです!

 ゆずちーが落ち着くまで待って、増援にくーちゃんを呼んで話を聞くことにしました。


 一言で終わらせるのなら、ゆずちーが山本なんたらに告白して撃沈したというだけのお話です。


「山本康史な。入学早々サッカー部に所属したフツメンで、別にエースでもレギュラーでもなんでもない上にぶっちゃけサッカーうまくないんだよな」

「ゆずちーに追い討ちかけるような行為は止めた方がいいと思うんですよあたしは」

「このファイルを見ろ。ここに山本のデータが纏めてある」

「えっ、ど、どうして? くーちゃん一体この詳細……でもないけれど、そこそこの情報が纏めてある紙はなんですかっ!?」


 ゆずちーがビックリするのも無理はないと思いました。なぜかくーちゃんは山本氏の写真入りデータを持っているのです! どこの探偵ですかくーちゃん! そういう仕事は将来すればいいと思うんですよ!


「こいつはゆずちーが告白しそうな男子を私が勝手にピックアップしたデータファイルだ。ちなみに山本を含めて6人分ある。スペシャルサンクスはポンだ!」

「変なもの作らないでくださいよぉ……」

「ゆずちーの未来のためにも間違った男子とのお付き合いは断固阻止だ!」

「ど、どうしてくーちゃんが……?」

「いや、だってなぁ……小学校の頃のあれを知ってる身としては心配で」

「ああ、あれは、ねえ……」


 ゆずちー始めての告白事件のことです。あれは事件だよね。うん、詳細は語らないけど、とにかくあたし達の間では事件ってことでいいと思う。


「男子はともかく、女子とのお付き合いリストは?」

「やめろ、それ以上余計なことを口にしたら接着剤を唇に塗りたくるぞ!」


 口を開けば血塗れ確定なんじゃないでしょうか!! とんでもない拷問だよっ!! 鬼だねっ!!


「私の恋事情に関してはあんまり絡んでこないでください……もっと泣きますよ」

「ゆずちーっ、この世には男子以外にも女子がいるよっ! 男がだめそうなら女の子と恋愛すればいいんだよっ!」

「こいつ、やめろと言ったのに爆弾発言を……!! そんなことをして喜ぶやつは……あ、1人いる!? それにポンや深海さんも若干アウトじゃないのか!?」

「くーちゃんはあたしの嫁! 異論は認めない!」

「みっちゃんにインターネットを与えた結果がこれか。嫁ならゆずちーでもいいだろう」

「この前キスした仲のくーちゃんこそあたしの嫁だよね! 10年後には結婚して、子どもは2人くらい欲しいな」

「あの時のことを思い出させるなあああああああああああ!!」


 くーちゃんがいきなり襲い掛かって!?!? 超常的システムアシストがかかっているかのスピードでくーちゃんの攻撃を避けれましたけど、足がもつれて後ろに倒れて頭を打ちました! 星がっ、視えるっ!! 今のあたしなら飛べる!!


「あの……みっちゃん。私はどこからつっこめばいいんでしょうか」

「女同士で子どもができるかああああああああ!!」

「科学なめたらダメだよくーちゃん!! だってお姉ちゃんが問題ないって言ってました!」

「あの人はあの人で変な知識をみっちゃんに与えるのをやめてくれっ! 変人はゆずちーママだけで十分だっ! 取り敢えずゆずちーは笑って元気になってくれればいいよ。私はそう思う。後でみっちゃんは殴っておくことにする!!」


 どういうわけかあたしは後で更にサンドバックにされるそうですが、科学が抜群に発展した今の地球をなめてはいけません。最新技術で生み出されたサンドバック「みみ」は実戦を想定しているので反撃してきます。ご注意を!!

 あたしがくーちゃんに黙ってボコボコにされると思ったらそうはいかないっ! あたしが最強であることを思い知るべきだと思う!


「失恋慰めパーティでもしましょうかね?」

「そういうのは本人に問いかけないで企画してください……。でも、ありがとう」

「あたしたちはなにがあってもゆずちーの味方だよっ! 大したことはできないけど、それでも友達だよっ!」

「そうだよな……取り敢えず、山本を呼び出してみっちゃんとポンの3人がかりシメておくか。いくら男子でも3人でかかればイチコロだろ」

「催眠術だよっ、催眠術をかけてゆずちーの彼氏にしてしまいましょう!」

「いや待て、なんとかあの紫光院紫を丸め込んでだな、山本を洗脳すれば……」

「くーちゃんくーちゃん、また熱いベーゼを望んでいるのかな? そうなのかなっ?」


 ゆずちーママに何かを頼むってことは対価を支払うことを認めるってことだよねっ! くーちゃんはもしやツンデレさんなんでしょうか!? ツンデレな彼女っていい響きだと思いました!


「みっちゃんを海深さんに売り払ういい作戦をポンと一緒に練ってやるから覚悟しておけ」

「くーちゃん、いくら姉とはいえ人身売買はやっちゃだめなんだよっ! いっそ綺麗な体のまま殺して!」

「海深さんの評価が随分と酷いな。あの人あんまり酷いことはしないだろ」

「そんなことよりも今はゆずちーだよっ! あたしのことは30年後くらいでいいよっ!」

「あの……取り敢えず、山本君に酷いことしないでください」

「ゆずちぃぃぃぃっ! あたしが酷い目に合うのは良いってこと!? あたしがギャーって叫んでいる間にゆずちーは嬉しそうにキャーって叫びたいってこと!?」

「えっ、あ、……その、ごめんなさい」


 ゆずちーがしゅんとしてしまい、それと同時に会話も消え去りました。あらま……。


「君が追い討ちかけてどうするんだ。ゆずちー黙り込んじゃったぞ」

「ごめんねゆずちー、あたしとくーちゃんバカだから」

「こら、何食わぬ顔で私をバカグループにくくるんじゃない」

「またまた~」

「私、最近になって思ったんだけどさ、みっちゃんってもしかして女子と男子の区別がついてないんじゃないのか? だから恋愛対象に女子が平然と混ざってる気がするんだ」

「いくらなんでもそのくらい分かります!」

「いや、だが……小学生の低学年的な認識力だろ」


 女の子と男の子の差。子どもを産めるか否か。胸が大きくなるか否か。ついてるか否か。アレがくるか否か。むむむ……身体的特徴以外だともしかしてよく分かってない!? ど、どうしましょう? 追求されたら回避不能ですよあたし!!


「5年後には恋愛マスターとして100組のカップルを誕生させている恋愛神みっちゃん」

「バカなことを言ってるんじゃないぞみっちゃん。君にゆずちーみたいな恋愛は不可能だ」

「あたしはゆずちーみたいに失敗する恋愛はしません! あたしがするからには成功率100%だよねっ!」

「ゆずちー国語辞典とかでみっちゃんを殴っても許されると思うんだが、やらないか? 貸すぞ」

「……みっちゃん、もうそういう話題やめてください。そうじゃないと私……みっちゃんのことを燃やします」

「もやっ……!?」


 くーちゃん共々絶句。


 ゆずちがー魔法の杖を掲げ「グレートインフェルーノ!!」なる魔法をあたしに放つ。そして一瞬で1000度の炎に包まれる。周囲の酸素が一気に燃え上がり、呼吸不可。回避できない息苦しさと同時に喉を焼かれた苦しみでのた打ち回りながらも、順調に体も炭と化していくあたし。


 ……や、ヤバイ。いやな汗がどばどば出て、恐怖からか涙腺も崩壊。結果、失恋したゆずちー以上に酷い泣き顔を晒すことになりました。


「……どうしてこうなった。なんでゆずちーがみっちゃんを慰めているんだ? あたしには何が起こったのかさっぱり分からない」


 数分後にくーちゃんはこう語りました。


「あたし、復活」

「ごめんなさい、みっちゃん。もう言いませんから」

「……? 何のこと?」

「よくわかりませんけどショックでさっきのこと忘れてしまったんですかみっちゃん!?」

「みっちゃんとはあたしのことですかね?」

「待て待て!? 名前も吹っ飛んでるぞ!?」

「大丈夫大丈夫。名前なんてなくても愛さえあれば人は生きていけます」

「……愛、ですか。そうですね……欲しいですね、愛」

「正義と違って、愛に絶対のお約束はないからなぁ」

「正義だって現実だと結構敗北してるよね。迷宮入りした殺人事件とか」

「それは言わないお約束だ」

「それに愛も行き過ぎると狂気なんだよっ!!」

「狂気だかなんだか知らないが愛をいっぱい貰えてるくせに贅沢なやつめ。うちの兄貴と交換しろ」

「愛が欲しいのならレッツトライ! くーちゃんは男子に告白だよっ! ゆずちーは新しい恋を探しましょう!」

「恋愛のれの字も書けないくせに偉そうだな」

「書けるよっ!」

「おっと噛んでしまったようだ。書けないんじゃなくて、知らないの間違いだった」

「そこまで言うのならあたしも恋愛とは何かを学んできましょう! それでいいよねゆずちー!」

「えっ? あっ? はい……?」


 その日、あたしは廊下でポンちゃんに愛を叫んで殴られました。

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