表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/32

#12 宇宙の話

「そうだっ、宇宙に行こう!!」


 いつものお昼休み、あたしは椅子を引いて立ち上がると同時にそう宣言した。


「お土産期待してる。太陽で売ってるケータイストラップ買ってきてくれ」


 適当にあしらうかのようなその反応にみっちゃんのミスリルハートは傷一つつかなかったんだよね、これが! あたしの精神に傷をつけたければもっと頑丈な武器をもってこーい!


「くーちゃん! いくらなんでも太陽にお店はないとあたしは思うんだよ!」

「これだから宇宙旅行に行ったことのないやつは……。反応が海外旅行に行ったことないやつに似てるぞ」

「むむむ……でも、海外と宇宙だと結構差があるんじゃないでしょうか! スケールとか安全性とか法律とか!!」

「あの、みっちゃん……もしかして昨日テレビでやっていた宇宙開発計画の番組見てたんですか?」


 恐る恐るといった感じにゆずちーが口を挟む。


「見てましたっ! すごいね宇宙って! あたしは海みたいなものだと思ってたんだけど、真っ黒で全然違うんだってね!」

「やっぱりテレビからの影響か。そうだと思ってたよ。私もちょろっと見たしな」


 未来における月への移住計画とか、スペースコロニー計画とか。凄いSFだったよ! あたしが生きている間に是非ともコロニー落としテロとか起こって欲しいものです。地球の重力に魂を惹かれたとか、人がゴミのようだとか言いつつ大規模テロ。まさにユニバース規模。


「あたしが宇宙に進出した暁には宇宙人のお友達5人くらいは余裕だと思うんです」

「1人すら奇跡レベルだと私は思うんだが、まあ……みっちゃんであることを考えると意外と余裕かもしれん。みっちゃんは地球の異端児だから宇宙の方が馴染みそうだ」

「くーちゃんなんてアブダクションされればいいと思います!」

「テレポーターなめんな! 一瞬で逃げだしてやる!」

「あたしならアブダクションされても、翌日には朋友ぽんゆーだよっ!」

「でも、あの、異星人とコミュニケーションは本当に成立するんでしょうか?」

「ゆずちーは宇宙人の存在を信じるのか?」


 いわゆるグレイとかタコみたいな形状の火星人? いるのかなぁ。でも火星に虫みたいな生物はいるって聞いたよ! だとしたらそれ以上の動物的生物が隠れ住んでいる可能性はまだまだあると思うんです!


「それは、……はい。人間がこの世界に存在している以上、どこかに類似の進化を遂げた知的生命体がいる確率は高いと思います。人間の存在は決して、奇跡ではありません」

「人間が神様を気取った宇宙人にあれこれされて生まれたって説もあるしな」

「太陽の真ん中とかにいるかもしれないよくーちゃん!」

「そこが太陽の売店だ。ちょっと行ってきてくれ。太陽饅頭よろしく」

「宇宙的なお金は持ってません、どうすればっ!」

「銀行で両替できるんじゃないのか? 太陽の通貨1で日本円で1500とかで」

「高いよっ! 太陽通貨高だよっ! 円安だよっ!」

「み、みっちゃんが……円安の意味を正しく理解してるなんて。もしかしてこれは夢なんでしょうか!?」


 あまりのゆずちーの驚きっぷりにあたしのミスリルハートがガリガリと削れていく!!


「くーちゃんが言うのならまだしも酷いよゆずちーっ!!」

「円安ってどういう意味なんだよぉ……みっちゃんに私が負けるとかそんな馬鹿な、ありえない。死なないといけないのか私は……」

「あたしの評価おかしいよねっ!? 明らかに人間として見られてないんじゃないでしょうか!?」

「この在日宇宙人めっ!!」

「超能力なんて使えるようになったくーちゃんこそ宇宙人だよっ!」

「なんだと! 私は地球人だ!」

「あたしだって地球人だよっ! 地球人だからこそ漆黒に輝く無限の星に憧れるんですっ!!」

「みっちゃん、宇宙に行っても地球から見るようなきれいな星空は見えないそうですよ」

「あ、あたしの宇宙的な楽しみがまた一つなくなってしまったよっ!! なにかないの!? 宇宙に行って楽しめることって何もないの!? 宇宙人との接触とか宇宙的スーパーイベントの開催はっ!?」

「ないから無重力で遊んでろ」

「あのですね……いくら宇宙が無重力でも人間の感覚的には浮いてる感じはしないみたいです。上下反転していても自分では分かりません」

「むーん……」

「力の関係で移動も難しいのでただ歩くような動作ではまったく進みませんし……」

「う、宇宙には専用の食事が……」

「最近は宇宙食にも地上で見かけるものが増えてきてますよ。某カップラーメンとか」

「みっちゃん、どうやらゆずちーはすでに宇宙旅行を経験済みのようだぞ。先を越されたな」


 宇宙にちょっとだけ行って、戻ってくるだけのプチ旅行だよね。あたしも聞いたことあるよ! 大した時間じゃないのに物凄く高いあれ。歩いていけない場所だからってぼったくるなんて酷いよっ!! 中学校の卒業記念旅行でいけるお値段設定にすべきです!! 日帰りで15,000円なんてどうでしょう?


「あたしも昔は真面目に宇宙に行きたいと思っていたことがありました。宇宙に行くアニメとかあったし……」

「私は宇宙よりも空だな。鳥みたいに空を飛んでみたいと思ってた。アンパンヒーローが空飛びまわってるからな」

「私は特にそういうことはありませんでした。高いところは苦手、ですし……」

「でもねっ、宇宙飛行士になるには凄いいっぱい辛い訓練をしないといけないと知って、あたしはそれは無理だ、やめようと思いました!」

「そんなことだろうとは思ったよ。どうせプールで泳ぐみたいな感じだと思ってたんだろう?」

「その通りですが何か!? 悪いの!? 子どものころは専門的な知識なんてもってなかったんですよーだ!!」

「宇宙は重力がないのでちゃんとトレーニングしないと筋力が低下したり骨がもろくなったりするんです。まともに働くのは内臓くらいでしょうし」

「耐えられません……。でもあれやってみたい。呼吸をとめて宇宙服着ないで宇宙に飛び出して、ほかの乗り物に乗り移るやつ!」

「やめておくんだ死ぬぞ!」

「なんでー?」

「血液が沸騰して爆発するぞ!」


 ばっ、爆発!? あたしが風船のように膨らんで爆発する様を想像。ぶくぶくと膨れ上がり、お歳暮とかで贈るハムみたいになった挙句に破裂。真っ赤に散ってぶくぶくと沸騰して消えていくあたし……。


「ええっ!? なんで沸騰するの? 温めてないよ! 太陽のチカラですかっ!?」

「あれだよ、なんだっけ……そう、気圧の変化。気圧がないと液体は沸騰するんだよ!!」

「くーちゃんそれは迷信……」

「じゃああれだ。宇宙は温度がないから生身で飛び出したら液体窒素を浴びた金魚みたいに凍り付く」

「なんだってー!?」


 宇宙は温度が……ない!? ないって何? 0度って意味? でも温度にはマイナスだってあるし……。


「補足するのならほぼ絶対零度と言われています」

「アブソリュートゼロってやつだね!? 意味不明だけど!!」


 ゆずちー先生の解説によると、絶対零度とはこの世の最低温度であってそれ以上低くなることは絶対にないんだとか。宇宙はその絶対零度に近いそうです。


「でも……宇宙はものの温度変化が地球上とは違うので一気に凍結することはありません」

「くーちゃん違うってゆずちーが言ってますよ!」

「ちっ……どうやら私の出番はここまでのようだ。……宇宙は私の想像以上に広大で強大だったよ……。あとは任せたゆずちー……」

「ええっと、ですね……。目を瞑っているのなら死因はおそらく窒息死です」

「やっぱり宇宙だって想像通りに普通なんだよ、くーちゃん。爆発とか変な死に方はしないんだよっ!」


 きっとNASAとかJAXAとかISSとかFBIとかMI6は生身の生物を宇宙に放り出す実験してると思うんです! その結果があたし達にリターンされていないのは余程ヤバイことになったか、実は人間を放り出しちゃって結果を公開できないかとかそんなのだと思います!


 つまり情報公開法を盾に情報公開を迫ったら暗殺されてしまうのです!!


「じゃあなんだ……? あの生身で宇宙に飛び出して、宇宙船に飛び乗るみたいのってできるのか?」

「理論上はできると思います。でも、日焼けなり被爆なりはするので完全無事とは言えません」

「被爆……だと。宇宙ヤバイぞみっちゃん。原爆だ!」

「宇宙はやめて、広島旅行に行こう」

「そうしておけ。その方がみっちゃん的に安全だ」


 あたしみっちゃんは、夏休みに広島に行きます!!


「頭からすっぽり抜け落ちてるみたいだから行っておくけど、旅行に行くとお金がかかるぞ」


 今から毎月1000円を貯金しても無理すぎる気がしました。夏休みに間に合わないよっ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ