第XXⅣ話『懐石料理ってメニューが決まってないので分かりづらいです。』
隆「お母様、って随分尊敬してるんだな…」
影「?両親は尊敬せよって子供の頃教わりませんでしたの?」
隆「………意外と真面目なんだな…お前。」
2日目の午後、日が沈みかけた頃、THE STEGOの面々は別荘に戻っていた。
「ふ…夕陽が目に染みるぜ…」
「リュージ…柄にも無い事はする物ではありませんわよ?」
「…」
「葉子先輩、木刀はやっぱり修学旅行土産だと思います…」
「修学旅行で買うのが馬鹿馬鹿しいから今買った。」
「……いや、どっちもどっちだと思うぞ…」
帰ってくるや否や広間で話に耽る者もいれば
「Zzz…」
「…も、もう動けないお…」
疲れ果てて眠る者もいれば
「美毅ちゃん酷いです…置いて行くなんて…」
「ごめんね!明日は一緒に回ろ?ね?」
「…うん。」
いちゃつく者もいれば
「むー…梨田君すっかり寝ちゃってるし…」
いちゃつけない事に不満を抱く者もいた。
「シャドー。晩飯は何だ?」
空腹の隆次が尋ねた。
「今日はお母様が作ってくださる様ですわ。メニューは内緒らしいですが…」
「「「何ぃ!?」」」
隆次と蒲生と小鷹が驚いて声を上げた。
「ですから、お母様曰くメニューはその時までのお楽しみと…」
「いやその前…」
「確か…お母様と、言ったな?」
「…え、ええ。」
「シルヴィーの母さんが態々ここまで来てくれたのか…」
「シルヴィー家の母君か…どんな方なのか少なからず気になるな…」
「…きっとシャドーに似て厄介な人なんだろな…」
「どういう事ですの?リュージ?」
「いえ、何でも…。」
こうして一同は夕食の時間まで暇を潰すなり勉学に励むなりした。
一同お待ちかねの夕食。
皆テキトーな場所に座り、料理が運ばれるのを待っていた。
「シルヴィー母。どんな方だろうか…」
一部はシャドーの母親が現れるのも待っていた。
「お待たせしましたですわ!」
不自然な口調と共にシャドーが料理を持って来た。
「……なぁ。シャドー。」
「何ですの?」
「……別に俺は構わないんだ。構わないんだが……何で懐石料理なんだ?しかも純和風…」
隆次はシャドーが手に持っている物を見た途端に疑問をぶつけた。
「だよな…シルヴィーの母さんだからフランス料理じゃないかって思ったんだけど…」
谷津冶もそれに続いた。
「お母様が作ると言っただけで誰もフランス料理とは言ってませんわよ?」
シャドーは至極最もな答えで返した。
「まぁ懐石料理でも十分過ぎるけどな。」
「むしろこの上を求めるのは贅沢ですよね。」
一同はそれでも満足な様子。
「因みにソレ、材料費だけでも一人当たり8〜9000円くらいするヨ〜」
「マジで!?メチャ高級やん!」
谷津冶が分かりやすく驚いた。
「!お母様!?」
シャドーも分かりやすく驚いた。
「何!?箸が無いだと!?」
蒲生も分かりやすく(以下省略)
「驚く所違ぇだろ!?」
隆次も(以下略)
「…。」
名似何は分かりにくく驚いた。
「という事で、お母様ですわ。」
「どモ〜。」
集団行動恒例の『THE・いただきます』の前にシャドー母の紹介が行われた。
「一応本名も言っておくと、ジャンヌ・シャードゥーです。そこのエボ爺は叔父に当たります。そんなわけでよろしくネ~。」
ジャンヌは気さくに挨拶した。
「はい質問。」
隆次が勢いよく手を上げた。
「ほいほい何だね少年、好奇心旺盛な子は嫌いじゃないヨ?」
「語尾が『です・ます』以外はカタカナになるのは何故っすか?」
「仕様です。インチキ中国人って訳じゃないヨ。」
「仕様なら仕方が無いよ隆次。」
名似何がそっと言い聞かせるように伝えた。
「だから語尾が『ほ』で終わる時はジャック弟みたいになるんだホー。」
「得意技はブフ系っすね。分かります。」
「お母様、早くしないとお料理が冷めてしまいますわ。」
「おぉーっとそうだったネ。んじゃ、いっただっきまーす!」
こうして一同は夕食を堪能した。
材料費に見合った味だった為、皆大満足だったとのこと。
「君達、名前は何て言うんだい?」
「梨田谷津冶っす。」
「矢手弓名似何です。」
「雷堂隆次っす。」
「おぉ君達が例の3人組だネ?シルヴィーから聞いてるヨ~」
「あ、そすか。」
「さぞかし賑やかなんだネ〜」
「…ええ。」
アイツ(シルヴィー)は何を吹き込んだのだろうと思う谷津冶であった。
「君は野菜が大好きなんだってネ?」
「ぇ…えーと…」
「今度特製の青汁でも飲ませてあげるヨ~」
「あ、ありがとうございます。」
そんなに野菜好きと思われていたのかと思う名似何であった。
「さてさて…君がリュージ君…」
「…はい。」
呼び方に多少の違和感を感じながら隆次は答えた。
「ふむふむ…今何が食べたい?」
「ボンゴレ」
隆次は即答した。
「ふむ。嫌いじゃない答えだネ」
嫌いな答えって何だ、と3人が思ったのは言うまでもない。
「まぁ、今後次第だネ…そんじゃゆっくりしていってネ~。」
ジャンヌは去って行った。
「…何だったんだ?あの人。」
「さぁ…」
「青汁か…体に良さそうだな。」
3人は食事に戻った。
「今日もいい湯だったぜ!」
相も変わらず3時間もの長湯を堪能した谷津冶が部屋に戻ると、そこには誰もいなかった。
「…あれ?誰もいない…。皆どっか出かけたんかな?」
そう言って座布団に腰掛けると
ガタガタ
「!?」
何かの物音がした。
「…何だ?」
谷津冶は明らかな意志を持って立てられた音だと察した。
普通の人は猫でもいるのだろうで済ますくらいなのだが。
「お…おい、隆次か?それか名似何だろ…?おい…」
傍から見れば情けなさで幻滅しそうな程の弱腰だが、残念ながらそこには彼以外誰もいない。
「おいって…返事しろよ?なぁ?」
谷津冶が不安で押しつぶされそうになった時
ガタガタガタ!!
「ひっ…!!」
情けないを通り越して谷津冶は最早男では無い声を出した。
「ななななななんだよ…何なんだよよよよ…」
寒さで震えているような声を出しながら谷津冶は近づく。
「しょ、しょしょしょ正体さえ暴けば…大丈夫…大丈夫…」
自分に言い聞かせるように言葉を呟きながら近づいて行く。しかし速度は毎秒2センチ程度だ。
「よし…これさえ捲れば…」
そして谷津冶がカーテンに手をかけ、一気に捲った。
「………ほっ。何もなかったか…良かった良かった。」
ガラガラガラガラガラ!!!
ぎぃやぁぁぁぁぁああああああああああああああああああ!!
「よし!作戦成功だな。」
「彼が単純で何よりだったね。」
その頃広間で隆次と名似何達は谷津冶の悲鳴が上がるのを喜んでいた。
「しかしまぁ…お前もエゲツないトラップ考えるよな。」
「驚かせるなら本気でやらなきゃ。」
初めは隆次の提案だったが、名似何も乗り気だった為、多少規模が大きくなってしまった。
仕組みは簡単な物で、カーテンを開けた数秒後に時間差で人体模型(エボンが借りたと言う名目で病院から持って来た物)を天井から降らせるという子供騙しである。
ガタガタと言う音は窓に向かって石を隆次が投げてぶつけて立てた音である。(この時にシャドーにこっぴどく怒られたのは言うまでもない。)
…と、仕掛けの説明をしている内に隆次と名似何が部屋に着いた様だ。
「うわー…伸びてるなー…」
「泡吐いてるね。」
隆次と名似何の目の前には泡を吐き、目を渦巻き状にして漫画みたいに伸びている谷津冶の姿があった。
「いやいや愉快痛快。」
「後でシルヴィーとお母さんに誤っておこうか。」
「…そだな。」
「きっとこってり絞られるんとちゃうか?」
「せやなー…さっきも『リュージィイイイ!?』って廊下の奥から聞こえて…って、あれ?俺と谷津冶以外に関西弁が混じる奴って…」
「そう言えばいないよね…」
そこで隆次と名似何は初めて後ろを振り向いた。
「ども〜」
「「……」」
ギィィイイイイイイイイイイヤァァァアアアアアアアアアアアアア!!!!
…半透明な少女が浮かんでいた。
どうも伊崎です。
今回は私の執筆になります。
新キャラ2人も登場しましたが、キャラ紹介の更新はもう少し後でお願いします…本当にお願いします…本当に(ry
さてさてもう十月です。あれだけ暑かった夏から一変、急に寒くなって来ましたが皆様どうか御身体をお大事になさってください。
それでは皆様ご機嫌よろしゅう…