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第10話『翌日の病院でのことです』

エ「フルッフー!お前さんの友人達はまだかのぉ?」

谷「…くっ…せめて柳垣さんだけは…!!」

矢&隆「…おい。」

「フルッフー!ときに少年よ、」

エボンが何か言いたそうだったので、谷津冶は聞こえないふりをすることにした。

「…」

目を瞑って寝たふり。

「フルッ…フフフフルルルルーゥッ!!」

エボンがいつにもまして壊れている気がするが寝たふり寝たふり。

…変な臭いがする。

「…はぐりみゃー!」

谷津冶は急に飛び上がってベッドの上に立ち上がって、謎の戦いの構えに似たポーズをとった。

「ぴぷぷぷりみみみなにやときゃー!きゅらとみゃりゅりゃるににゃぁーっ!くーっ、りゃくみぃゃあああぁゃゃぁあゃや!!」

谷津冶はただひたすらに拳を、足を振り回した。

たとえ掛け布団にその足を取られ、仰向けにすっ転ぼうとも、その後に体をばたつかせている様が駄々っ子に見えようとも。

「フルッフー!あの魔女とかいうイタい女もやるではないか」

エボンは顔をにやつかせながら満足気に言った。

10分後。

「フルッフー!ときに少年よ、」

「…なんだ?」

凄く喉が痛い谷津冶は、渋々尋ねた。

「今日からここに新しい看護師が来ることはご存知かな?」

「へぇ、そうか」

「はい皆さん今日もこんにちはー!」

元気な声で病室の扉を開けたのは看護師の朝倉だ。

「なんと、今日はねー、新しい人が来るんですよ。入ってきてー!」

朝倉が最後に扉の方を向いてそう呼ぶと、1人の男が扉を開けて堂々とした歩き方で入ってきた。

「…黒紐(クロジュウ) 偉置(イチ)だ。宜しく」

偉置は頭を下げた。



「フルッフー!ときに少年よ、」

「お前どんなけ同じこと言ってんだよ。ボキャ貧かよ。今これ書いてる作者かよ」

「メタ発言とは、悪い子じゃのう」

「知ったことか!」

「ときに少年よ、俺の新作の吸うと何もかもがすうっと頭から出てくるガスの予定の気体の実験台になって欲しいぞい」

「ガスと気体は同じ意味だぇっくしゅ!」

谷津冶は途中で、大きなくしゃみをした。

「フルッフー!夏風邪は馬鹿が…」

「それ以上言うなぁ!」

谷津冶はティッシュを探したが、どうも偉置の近くにあるようだ。

「あ、黒紐さん。そこのティッシュ取ってくれませんか?」

谷津冶が偉置を呼ぶと、偉置は谷津冶の方を見て、ゆっくりと口を開いた。

「1000万だ」

「…は?」

「1000万で、お前のその汚い見た目を少しだけましにしてやる」

「フルッフー!顔については、諦めた方が得策だと思うぞい」

「いやちょなんで金取られるんですか?」

「勘違いしないでもらおうか。私は慈善活動をやってるんじゃないんだ」

「ティッシュ取るくらいいいじゃないですか」

「しかしそのティッシュを取る時間の代わりにより多くの患者を見るようにすれば、病気の人を救える確率がそれだけ高くなる」

「どんだけ低い確率ですか」

「だが、0じゃないだろう?」

偉置は口元に微笑をたたえた。

「…」

谷津冶は諦めることにして、ベッドから降りて自分でティッシュを取ることにした。

「やれやれ、」

偉置は肩を竦めた。

「看護師に頼らないとはな、強情なやつだ」

「誰が1000万払ってまでティッシュを取ってきてもらうんですか!」

「大層なことを言っているが、取り返しがつかなくなるまで体を壊さないようにな」

「いやなんでこれで体を壊すんすか!」

「フッ…病気が態々自分が病気ですと名乗り出ながらやって来ると思っているのか?」

「なんでティッシュを取ろうとした位で病気が態々自分から病気ですと名乗り出たりはせずにやって来るんすか!」

「…」

偉置は踵を返した。その時に羽織っていたコートを翻すのは癖だろうか。

「一応、俺達は仕事をしている…」

偉置はそう言って病室を出た。

「いやあの人一体何なんだよ!」

「フルッフー!君は彼をカレーにつけて食べる気かの?」

「は?」

「分からないなら別にいいぞい」

「…」

谷津冶は時計を見た。もうそろそろ、昼ご飯の時間だ。

看護師がその内に昼食を持ってくるが、谷津冶は気が重かった。

病室の扉が元気よく開いた。

こんな開け方をするのは私的なことで気分がいい時の朝倉以外に、1人しか思いつかない。

「本仕込みっ、焼けたわよー!」

満面の笑みで朝倉の先輩看護師が入ってきた。

「いい加減食パン以外のもん食わせてくれよぉ…」

先輩は上機嫌に歌いながらバターを塗った食パンを配っていった。

カロリー的には確かに少し多すぎるかもしれない位にはあるのだが、何せこの病院に来てから殆ど食パンしか食べてない。ついでに谷津冶が家で食べる食パンの銘柄は、母に任せっきりだ。その時に安い物を買ってきてもらえればそれでいい。

「フルッフー!ステーキの香りのガスでも作ってやろうか?」

エボンはにやにやしながら谷津冶を見た。

「それ、ギャグ漫画で使い古されてるネタじゃねぇか…」

「でもご飯じゃなくてバタートーストかっこトーストには本仕込みを使用かっこ閉じるな辺り斬新だと思わんか?」

「思わんな」

先輩の方を見るとバタートーストを嬉しそうに囓っていた。

「もっちりぃーーー!!」

病院では静かにするよう以前言っていた筈の人が、上を向きながら感極まった様子で叫んだ。

「もっちりーー!」

誰かがそれに呼応した。

「…」

谷津冶は仕方無く本仕込みを食べ始めた。おいしいのは事実。

「あっ、梨田君!ここにいたんだ!」

真夕が病室の扉を開けて谷津冶に近寄った。

「そりゃ普通はここにいるからな」

「ねぇ梨田君、」

真夕はしゃがんで谷津冶と目線を合わせた。

「なんでいっつも食パンを最後に食べてるの?好きなの?嫌いなの?」

「食パンしか無いからだよ」

「へぇぇ、そうなんだ」

真夕はそう言いながらクスクスと笑っている。どうも面白い冗談か何かと勘違いされているようだ。

「…それで、梨田君は好きな物は先に食べる方?気になるな」

「…あ、後かな?」

「あ、じゃあ食パン好きなんだ」

「いやだから…」

「そういやあなた毎日ここに来るけど、」

先輩が真夕の元に近づいてきた。

「もしかして2人って、付き…」

「ぁあん!?」

先程までにこにこしていた真夕が、ガンを飛ばすという表現がぴったりな程顔を歪ませた。

「るせぇようぜぇよ臭ぇよ!てめーみたいなマジヤバイの付く極悪人の脳天にしねしねこうせんぶちまけてやることがたった1つの勲章だってこの胸に信じて生きてきたわどるゃあ!」

「あああ、えっと、ごごめんなさい!」

先輩は真夕の態度の急変に頭が追いついていないようだ。

「おおおおい柳垣、おおおおおちゅちゃっ、じゃなくて落ち着けって」

谷津冶が慌てて言うと、真夕はピタリと動きを止めた。

「…梨田君の言うことなら聞こっかな」

真夕はそう言うと谷津冶の方を向いた。

「…お前、どうしたんだよ?」

「…それがね、」

真夕は落ち込むように俯いた。

「…思ってることと、逆のことをしちゃうの」

「…は?」

「だ、だからぁっ、」

真夕は恥ずかしそうにしながらも顔を上げた。

「例えば嫌いな人には優しくしちゃうけど、好きな人のことは酷く扱っちゃうのっ!」

「えっと、つまり…」

「…最近私、みんなを大好きになりたい、世界中の人々を好きになろうと思ってるの。それで、なんとなくそんな自分になれた気がするの」

「あぁ、成る程…」

「だけど…」

真夕はまた、顔を俯かせた。

「こんな性格じゃあ、みんなから、嫌われちゃうよね…」

「ま、まぁ、最初はあれかもしれないが、その内に仲良くなれるんじゃないかな…?」

「ホント!?」

真夕は顔を輝かせた。

「あ、あぁ…」

「有り難う!斬新だね!なんか元気出たよ!やっぱり梨田君に相談しようって思って正解だったよ!」

「…あ、あのさ、」

テンションが高そうに見える真夕とは裏腹に谷津冶の心は沈んでいた。

「はぇ?」

「俺のこと…、嫌いなのか?」

「へ?…ううん」

真夕はきょとんとした顔をすると、当然のように首を横に振った。



その日の深夜。

羅富華弟葦佩陂闇(仮名)は、トイレに行く為に深夜の病室を飛び出した。

彼女以外に他の足音は無い。それが彼女を少し怖がらせていた。

こ(仮名)は小走りでトイレに着いた。

「…ん?」

そこで彼女は、隣の倉庫から何か音がすることに気がついた。しかも、人の声のようだ。

「ここから出して…」

幼稚園に入っているかいないか位の、小さな女の子の声だった。

(もしかして、誰かいるのかナポリタンにタバスコイタリアン…?)

い(仮名)は気になったがそれより自分のことをしようとトイレに入った。

「…」

ず(仮名)は目的を果たしてトイレから出た。

そして隣の倉庫を見る。

そこは老朽化等で所々裂け目が入っていたのを昨日の深夜にやっと取り替えた所だ。

倉庫はこの病院が建ってから修繕されてない唯一の所だったので、一部の人間が情を感じて修繕に反対していたが、やっと修繕の方向で押し切ることにしたらしい。情報ソースは朝倉の愚痴。

み(仮名)は耳を澄まして倉庫の音を拾おうと思ったが、先程のような声は聞こえなかった。

彼女は倉庫の扉を静かに押した。誰かいるのか最初に確認したかったが、深夜だとそうはいかない。

中に入る。真っ暗だ。

や(仮名)は電気のスイッチを入れた。もしかしたら動けなくなっている女の子がいるかもしれないから…


パチッ

明かりが点く。

「誰かいまスタフルミラクルクルクルマジック?」

く(仮名)は辺りを見回すが、誰も見つからない。

その時、彼女は目の前に何か変な物を見つけた。

白くて小さい。ピンポン玉より小さく、重そう。

彼女はもっと顔を近づけることにした。

何か細い線が入っているようだ。

もしかしてこれは…

眼…

「!!」

も(仮名)は尻餅をつくと慌てて立ち上がり電気のスイッチを切ると、脇目も振らずに倉庫を走り去った。

…どうも、伊崎です。


後半に関しては私はスルーの方向で。


あと看護師に関してはモデルがあるそうです。

もし分かった方は……内緒にしておいてください。



ではではごきげんよろしゅう。






原題:何か叫ばないもの



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