*作戦会議
「ベリルさんっ」
月刃は慌てて駆け寄り、突き刺さったままの突起を見つめる。まるで、動物の角に似た形状と肌触りに眉を寄せた。
「引き抜くか?」
狩夢の言葉に少年は少し驚いたが、ベリルは薄く笑って発する。
「このままで構わん」
「えっ!?」
「奴が求めている不死と関係があるのか」
それには応えず、じっと何かを待つように動かなかった。
数十秒後──突き刺さっていた角が、おもむろに体から突き出た部分からそれぞれに音を立てて床に落ちる。
狩夢はそれを拾い上げ、まじまじと眺めた。
「これは……」
解放された事に小さく溜息を吐くベリルを、説明を求めるように見やる。
「全ての物質は私の細胞やエネルギーに変換される」
「! 無くした部分が生えてくるとかじゃないのか」
「周囲に存在する物質から変換され、構築される」
穴の空いた服に溜息を漏らし、周りを見回した。
「あの……じゃあ、中に入ってたこれは?」
「傷の修復に使われたのだろう。ついでに服も修復して欲しいがね」
「もしかして……頭を吹っ飛ばされても生きてるのか」
狩夢の問いかけに、ベリルはニヤリと笑う。
「皮肉なものだ、平行世界の私は不死ではないらしい」
エメラルドの瞳に憂いが映し出された。
それがどんな意味を持つのか──このときの2人には窺い知りようも無い。
「とりあえず、話をまとめようじゃないか」
複雑な表情を浮かべていた狩夢が軽く手を挙げて提案し、月刃もそれに続くように頷いた。ベリルは同意したのか、近くの木箱に腰を落とした。
「奴が言っていたのはつまりどういう意味だ」と狩夢。
「平行世界にそれぞれお前たちが存在する」
「はい、俺が別の世界にもいるということですね」
「全ての世界に存在するという訳ではないだろうが、奴はお前たちを1人ずつ呼び出しその能力を奪っている」
1人の能力では足りず、平行世界から何人も呼び出しては奪っているのだろう。
「奪われた別の世界の私はどうなっているんだ」
「さあ、そこまでは私も解らん」
「じゃあ、あいつが見せているこの空間も……」
「お前たちの奪った能力で形成されているのだろうな」
薄笑いで応え、片膝を立てる。
「私を呼び寄せたという事は、これで完了するという事かもしれん」
「! 私たちで終わりか」
「この世界が完全になる?」
複雑な心境に、辺りの空気は重くなった。
「阻止する他に提案はあるかね」
「無い」
「ありませんね」
自分の都合だけで能力を奪われてたまるものか。
「月刃」
「! はい」
ベリルに呼ばれ、無意識に体が強ばった。
「刃物を形成するのは解った。消去する時はどうするのだ」
「あ、えと……俺がそれに恐怖を感じると壊れますし、忘れたら消えます」
「なるほど」
発して立ち上がり、月刃に向き直る。
「形成してくれないか」
「! はい」
少年は同じく立ち上がり、意識を集中して先ほどのコンバットナイフをベリルの前に形成した。
ベリルはそれを流れるように手にして、そのまま──
「!?」
「ふむ、よく解った」
淡々と口を開くベリルに、月刃はゴクリと生唾を飲み込んだ。
ナイフを手に体を反転させたかと思うと、逆手に持ったその切っ先を少年の腹部に突きつけたからだ。しかし、そのナイフは壊れず不思議に思っていると、反対の手にあったナイフが砕けて床に落ちる前に消えていく。
「ひ、人が悪いです」
「確認したかったのでね」
再び少年に向き直り、本題に入る。
「別世界のお前たちの能力が奪われているなら、多少なりともつながりがあるかもしれん」
「操作出来るかもしれないと?」
聞き返した狩夢に頷く。
「うむ。とにかく奴に近づけるだけの要素は1つでも多く得たい」
「近づける……?」
狩夢はベリルの言葉にピクリと反応した。
「奴の居場所がわかるのか?」
「方向くらいならね」
「えっ!?」
ベリルは驚いている2人に視線を合わせる。
「気配が掴めなかったのだがね、先ほどの攻撃でようやく掴めるようになった」
どんなものでも己の利とする──が、そんな芸当の出来る者はそうそういない。
「はっはっはっ」
2人は生ぬるく唇の端を吊り上げ、乾いた笑みを発した。





