表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/15

*うねる巨体

 ソレは、長い体をくねらせて3人の前に素早く立ちはだかった──朱い瞳をギラつかせ、長く太い巨体はとぐろを巻いて頭をもたげる。

 てらてらと、わずかな明かりを照り返す表皮は滑らかでいて艶を持ち、割れた舌がジッパーのような口元からチロチロと出たり入ったりを繰り返した。

 暗い茶色の体の背には、2列に並んだ黒い楕円の斑点が見える。

「アナコンダか」

「ベリルさん、冷静に言わないでもらえますか……」

「これはまたデカイ」

 威嚇するように短い声を発する巨大な蛇を、どうしたものかと一同は眺める。

「およそ10mといった処だな。しかし実寸での等倍ではなさそうだ。実際のアナコンダの平均的な体長から考えるに長さが足りん」

「だから冷静に分析しないでください……」

 月刃は蛇から目を離さずに応えて身構えた。

 デカイ……かなりデカイ。3人まとめて丸呑み出来そうなほどの胴回りだ。テレビだと、見えるか見えないかの舌の動きは、もはや風を切る音がしそうなくらいに赤がよく見える。

「あれは実体かね」

「実体に色々とくっついて膨らんでる状態かな」

 狩夢の言葉にベリルはしばらく思案した。そんな状況ではないんだけど……と月刃は心中でハラハラする。

「ふむ、ボア科アナコンダ属のオオアナコンダの鼻は3枚の遮蔽盾しゃへいじゅんで覆われている」

「つまり?」

「目は良い方とは言えんがまともに攻撃させてはくれんな」

 それを聞いた狩夢は小さく唸った。

「という訳で散ってくれ」

「おう」

「えっ!? えっ?」

 闇に紛れた狩夢の影と、蛇を見据えているベリルを交互に見やる。そんな少年に視線を合わせずに問いかけた。

「複数での戦闘は?」

「え……えと、無いです」

「そうか」

 ベリルは発して、腰の後ろに手を回しバックサイドホルスターから拳銃ハンドガンを1丁、手にして抜いた。

「今回は狩夢だけで問題ないだろう」

 アナコンダから視線を外さずにハンドガンの確認を行い、銃口を眼前の敵に向ける。

「実体で無ければと願ったが……」

 ほぞりとつぶやいた言葉に、少年は眉を寄せた。

「あなたは……あの人のことを知っているのですか?」

「いいや、何も」

 何も知らないのに任せただって!? 月刃の目は驚きにベリルを凝視した。彼はそれを察してか、目を細めて喉の奥から小さく笑みを絞り出す。

「この状況で狙われているのは私だけだとは思ってはいない」

「!」

「そうでなくてはお前たちまで召喚した理由が思いつかん」

 照準を合わせて引鉄ひきがねを絞り、話を続ける。

「自分も狙われた事は解っていよう」

「そう、ですね……」

「奴やお前がフェイクだったとしても、今の状況で私に不利は無い」

「!」

 信じる事と警戒しない事は違う。そう言いたいのだろうか。

「状況は常に変化している。予測と予測出来ない想定はした方が良い」

 言い終わると、アナコンダの背後からガサリ……と音が鳴って、大きな頭が条件反射のように動いた。

 それとほぼ同時に、破裂音が暗い森に響き渡る──

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ