双子の待遇
「案内するといっても、君たちが入れる場所は限られるからな。問題にならないように、主に俺が住んでいる離れで生活してもらう」
そう言ってスヴェルトが向かったのは、城の端のほうにある少し独立した棟だった。
食堂や図書室、大きな浴場まで、なんでも揃っている。
最後に連れてこられたのは、俺たちが滞在する個室が並んでいるところだった。
「本棟の部屋よりかなり狭いが……君たちには十分だろう?」
狭くない。広いと思う。
確かに、最初に見たお城の大きさに対する衝撃に比べたら……まだ想定内の広さではあるが。
「もちろん十分です。孤児院には個人のスペースなんてなかったし」
「そうなのか。じゃあここでは、他人を気にせずのびのびと生活しなさい」
スヴェルトの気遣いが、少し胸に染みた。
「あの……どうして、他人だし、しかも庶民の私たちに、こんなによくしてくださるんでしょうか?」
城に来てからずっと伏し目がちで、落ち着きのなかったルーシャが問う。
俺も気になっていた。いろいろあって忘れそうになっていたけど、俺はそもそも罪人として連れてこられたはずだ。
「自分でこんなこと言うのもおかしいとは思うんですけど……罪人にこんな、むしろご褒美みたいな環境を整えていただいて良いんですか?」
面食らったような顔をしたスヴェルトが、少し咳払いをした。
「君たちは本当に頭が低いな。まあ、そう考えてしまうのも無理はないだろう」
何か少し考えるようなそぶりを見せ、スヴェルトは話を続ける。
「ユリウスは……まだ、罪人と決まったわけではない。だから、そこまで気にしなくても大丈夫だ」
「でも……」
「あとは、私の気まぐれだと思って構わない。なんとなく、君たちを他人とは思えないだけだ。深い意味はないし、本当に何も気にするな」
まるで、何も考えるなという命令をされているみたいだ。
でも彼はお貴族様だし、ましてや領主の息子で次期領主になるかもしれない人だ。
これ以上何も言えない。
「今日は慣れないことばかりで疲れているだろうから、ゆっくり休むように。昼食と夕食は、後で私の側近に持ってこさせる」
「わかりました。何から何までありがとうございます」
俺たちは与えられた自室に入り、一息ついた。




