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ご主人様は星掬う人 ~碧眼の双子は星を求めて夜空を駆ける~  作者: 綾箏 黎


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謎の男

「しばらく社交界にお見えにならなかったのでどうしていらっしゃるのかと思っていましたが……お元気そうですね、フリードル殿?」

孤児院の扉の前には、身なりの良い、一人の男が立っていた。

歳は二十代前半くらいだろうか。

夜の闇にも輝くような黒髪は襟足まであり、一つに縛られている。

そして、アメジストのように深く鮮やかな瞳。

この人もお貴族様だ、と一目で察する。

「ス、スヴェルト様……お久しぶりでございます。どうしてこちらへ?」

伯爵がたじろぐのがわかった。

「少し暇ができたので領地の見回り、といったところですよ」

スヴェルトという男は、微笑して応えた。

「それで、先程の騒動は何ですか?」

男の見えない圧のようなものが、ぐっと加わるのがわかる。

「いやあ、この子供があまりにも無礼なもので、少し注意したところだったんですよ。まあ、貴方様のお手を煩わせるような大したことではございませんので、お気になさらず……」

何が少し注意だ、バラバラにしようとしたくせに、と心の中で文句をつける。

「そうですか。ここは国営になってからあまり経っていないので、一度来なければと思っていたんですよ。先程のお話は初めから記録していましたので、父には報告しておきます」

「初めから、といいますと……」

「勿論、貴方がその少年に目を付けたところからですよ」

伯爵の顔が、サッと青ざめた。

「そ、それはどうかご勘弁を……! この通り、この通りですから……!!」

目の前で貴族がへこへこ頭を下げているのを初めて見た。

しかし、男の冷ややかな眼差しは変わらない。

「いえ、報告させて頂きます。義務ですから。近頃領内で行われている人身売買は、大抵貴方が関わっている。そうですよね、フリードル殿?」

「いえ、そんなことは、決してっ……」

「裏は既に取れています。こうして実際に確認できたことですし……処分は後程ご連絡致しますので」

「うわああああっっっっ……!」

下品な伯爵は最後まで下品なまま、床を這いずるようにして孤児院を出ていった。

……助かった、このスヴェルトという男のおかげで。

ほっと胸を撫で下ろしたのも束の間。

「さて、こっちは片付いたな。次は……君だ」

「お、俺……ですか?」

「ああ、そうだ」

冷ややかでいて、憐れむようなアメジストの瞳と、目が合った。

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