ユリウスの処遇
ご馳走をとことん味わったあと、俺とルーシャはケルトスと雑談を楽しんでいた。
正直なところお貴族様と話すのは緊張するから二人が良かったんだけど……ケルトスは俺たちの見張りでも言いつけられているのかもしれない。この場を動くことはなかった。
それを無視するのも気が引けるので、おしゃべりに巻き込むことにしたのだ。
「ケルトスは、どうしてスヴェルトの側近になったんですか?」
「そうですね……私は七歳の頃、初めてスヴェルト様にお会いしました。そこで彼の素晴らしさを目の当たりにし、側近になりたいと志願したのです」
「そんなに小さい頃から⁈」
「ええ、もう十七年ほど前になりますか」
ケルトスは嬉しそうに微笑んだ。
スヴェルトのこと大好きなんだなー、ということがほんの少しの雑談でも感じられる。
食事を終えてしばらくすると談話室の扉が開き、スヴェルトが姿を現した。
「すまない、遅くなったな。父との話が少し長引いてしまった」
「いえ、さっき食べ終わったばかりなのでお気になさらないでください」
ルーシャが少し背筋を伸ばして答えた。少し、スヴェルトに対して緊張が和らいできたように見える。
「早速、本題に入ろう。ユリウスの不敬罪の件についてだが……」
固唾を飲んで次の言葉を待った。
「不問となった。詳しいことは教えられないが、ひとまず心配事はなくなったな」
「は、はあ……」
思ったよりあっけなく終わってしまった。これで良かったんだけど、モヤモヤしたものが心の中に残る。
……こんなに早く解決する事だったのなら、何のためにここに連れてこられたんだろう?
「あの……俺たちはこれからどうなるんですか?」
純粋な疑問をぶつける。
スヴェルトは孤児院の人たちとはもう会えなくなると言っていたから、孤児院に戻ることはできないだろう。
じゃあ、このままお城を追い出されて二人で生活するのか? まだ準備も終わっていないのに?
「それは……これから考える。段取りがなっていなくてすまない。何しろ急に事が運ぶものだから、こちらも対応に追われているんだ。君たちのことは私が責任を持って面倒を見る」
急に事が運ぶ……? それは例のクソみたいな伯爵が絡んでいる人身売買のことだろうか。
とりあえず、このまま追い出されるようなことはなさそうだ。
「じゃあ、しばらくスヴェルトのお世話になります……」
「ああ、この離宮は自分の家だと思ってくれて構わない。あと、せっかく呼び捨てできるようになったんなら、今度は敬語を外してくれ」
そう言ってスヴェルトは俺たちの頭をくしゃりと撫で、談話室を出ていった。




