領主への相談
「父上、スヴェルトです」
「来たか。入りなさい」
「失礼します」
スヴェルトは、領主である父の書斎を訪ねた。
「人身売買の件、片がついたそうだな」
「はい、なんとか。まだいくつか問題が残っていますが、主犯格のフリードル伯爵には父上から処分について連絡する旨を伝えてあります」
「問題とは……お前がかくまっている例の不敬罪の双子の件だな」
「不敬罪は兄だけですが……その通りですね」
側近どうしの連携がうまく取れているおかげで、説明の手間は省けた。
しかし双子については全て私の独断で動いているので、誰から見ても不審に思われていることだろう。
「相談もせず、申し訳ございません」
「まあ、お前のことだから何か考えがあるんだろうが……次期領主として、他の貴族に示しがつかなくなるような真似はするなよ」
「はい、心得ております」
想像より寛容な父の態度に驚いた。今まで努力を積み上げ、信頼を築いてきた甲斐があったと安堵する。
「まだお話できることは多くありません。しかし……あの双子は自力で開発した魔草の薬で、瞳の色を変えていました」
父が、少し前のめりになった。
「それは……早急に調べる必要があるな。元の瞳の色は?」
今、ここまで言ってしまってもいいものか戸惑う。しかし、すぐに父上の耳には入るだろう。
「……碧眼、でした」
わずかではあるが、父が目を見開いた。
「そこで……アークレイド様にお会いしたいのです。どうか、許可をください」
「随分大層なことを……お前の中で、既にある程度の見当はついているということだな」
「はい、ほぼ間違いはないかと」
父が溜息をつく。予想外の事態に混乱しているのかもしれない。
「上に話は通しておくが……難しいと思う。この話は内密に行うべきだが、どこまで情報を隠せるかもわからない」
「そうでしょうね……いっそ何もなかったことにしても良いかもしれないと思ったのですが、そういうわけにもいきませんし」
私がことを進めてしまっているのは重々承知だが、この調査は私にとって気が重いのも事実である。
「それはそうだ。私が許可を出すから、不敬罪は不問にしなさい。また何かあれば、側近を通して連絡するように」
お手数をおかけします、とその場を後にすると、私はすぐに双子のもとへ向かった。




