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ご主人様は星掬う人 ~碧眼の双子は星を求めて夜空を駆ける~  作者: 綾箏 黎


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碧眼の双子

孤児院の朝は早い。

起きて顔を洗ったら、すぐに院内の清掃を始める。

隅々まで綺麗にして院長に合格を貰えば、やっと朝食の時間だ。

「おはよう、ルーシャ」

先に食堂へ来ていた、世界でたった一人の家族である妹に声を掛ける。

「やっと来た、今日はユリウスより私が速かったね」

「今日からの担当区域、ちょっと大変なんだよ」

「そっかー、前回は楽なとこだったから仕方ないね」

「うん。でももう少しで、この朝の掃除ともお別れだな」

俺たち双子は、物心ついたときには既にこの孤児院にいた。

しかし再来月には二人とも16歳になり成人とみなされるため、この孤児院を出ていく準備を始めている。

生まれ育ったこの場所を離れるということにまだまだ実感を持てないけれど、大切な妹と二人で始める自由な新生活を、ずっと心待ちにしていた。

「今日は午後から街に出る許可をもらったから、家を探しに行こうか」

「本当!? すっごく楽しみ」

孤児院から出る際には、今まで街の依頼を受けて手工業などを行ってきた分の給料をもらうことができる。

俺たちは今まで周りよりたくさん努力して手伝いをしてきたので、二人で新生活を始めるのに十分な資金を得ることができた。

「午前は、お貴族様の訪問があるらしい。薬と化粧、忘れるなよ」

「わかってるよ、もう何回も修羅場をくぐり抜けてきたんだから」

「そんなに軽く済ませられることじゃない。頼むからちゃんとしてくれよ」

「うん、大丈夫だよ! ユリウスもいるしね」

お貴族様の訪問は滅多に無いが、あれば最大限の注意をしなくてはならない。

訪問の目的は、概ね孤児の引き抜きだからだ。

引き抜かれたら、今後どうなるか分からない。良くてお城の召使い、悪くて人身売買もあり得る。

ルーシャは俺の贔屓目なしにしても優れた見目をしているので、何度かお貴族様の目に止まりそうになったことがある。

その度に俺はあの手この手を使ってお貴族様の意識を逸らし、ルーシャとこの孤児院で生き残ってきたのだ。

今は化粧でそばかすやクマを描き、顔の印象をあえて悪く見せている。

そして最も大切なのは、瞳の色を変える薬だ。

俺たちは、この国では珍しい碧眼を持っている。

多分生まれは外国なんだろう、と多くの人から言われてきた。

幼い頃、ルーシャが花壇の花びらをふざけて食べたとき、高熱を出して瞳の色がだんだん黒く変わったことがある。

生死を彷徨うほどの高熱で、泣き叫んで大人たちに助けを求めたことを今でも夢に見るほどだ。

ルーシャは一命を取り留めたが、それと同時に俺の命懸けの研究は始まった。

花びらを加工し、身体に害が出ないように改良を重ね、一時的に瞳の色だけを変える薬を開発したのだ。

お貴族様の引き抜きが行われるのは、6歳以上だ。俺は7歳のときに、何とかこの薬を完成させた。

珍しいもの好きのお貴族様は少なくない。

碧眼を見られたら、高確率で引き抜かれてしまう。

あと少しで手に入れることができる自由を、こんなところで無くす訳にはいかなかった。

「じゃあ、早く準備しないとな」

「そうだね、また後で!」

俺たちは軽い変装の準備をするため、それぞれの自室に戻った。

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