vol.23
・・・ドレイちゃんに親友に対して抱いている不安を相談された後、僕は1人でビビディ・バビディ・ブー学園の食堂に来ていた。
昨日のマロンとの衝撃的な出会いから色々あったけど、もしかして、この出来事は神様が僕に与えた、自分を変えるきっかけなのかもしれない、と思い始めていた。東大5浪で、何もとりえのない、人生負け組の僕を変えるきっかけ。
いや・・・違う。
このきっかけは、僕自身が自分の人生をコントロールして作ったものなのかもしれない。
レインボー先生に、僕が自分の人生をコントロールできる能力があると指摘された。もしかしたら、昨日からの一連の出来事も、僕自身が望んだことなのかもしれない。いや、・・・きっとそうに違いないのだ。そうならば、僕は動かなければならない。自分で作ったきっかけを大切に生かさなければならない。そうするためにはどうしたら。どうしたらいいのか。
「あれ?英司くんだぽん。早いねっ!おっはー」
突然声をかけられて、テーブルに突っ伏していた頭を上げると、ビビディ・バビディ・ブー学園の生徒であるマロン、ひかり姉さん、そしてピエールが僕の前に立っていた。それに、ドレイちゃん、レインボー先生も。
「あ・・・ああ、おはよう。もう、朝の8時なんだな」
「8時はこの学園の朝食の時間なのだぽん。ドレイちゃんが朝ご飯を用意してくれたのこと!」
ドレイちゃんが僕の目の前にご飯と味噌汁を置いてくれる。美味しそうなニオイ・・・一人暮らしの僕には、しばらく忘れていたニオイだ。
「さあ、今日もみなさんがんばりましょうね!いただきます!」
レインボー先生が号令をかけ、皆一斉に食べ始める。しかし、僕は朝食を食べる前にやるべきことがあった。自分で作ったきっかけに素直に従うこと・・・自分の能力をしっかり自覚してから、初めて自分の為に動くこと!!
「あの、皆さん、聞いてください!!」
僕は立ち上がって言った。
「なあに英司くん・・・うんちなら黙って行ってよねーだ、ぽん!」
「マロンはうるせえ」
マロンはいちいちうるさい。そして、昨日からうんちネタが多すぎる。女性は品がないともてないぞ?まあ、年中ビキニで過ごしてる女に品もへったくれもないけどな!
「僕は・・・僕は、決めたんだ!僕自身で作ったきっかけに素直に従って行動することを!今の魔法学校の危機をレインボー先生から昨夜聞いて・・・それで、考えたんだ!僕にできることはなにか・・・僕は一体なんのためにこのきっかけを作ったのか・・・それで、わかったんだ!僕はこの危機を救うために、その諸悪の根源である、ジーニー魔法大学院に向かう!そして、ジーニー長老のやっていることを暴いてみせる!レインボー先生、僕は本気です!やらせてください!!」
僕の、僕の自分の為に生きる第一歩が、今始まった。