vol.19
・・・ビキニ姿の美少女(性格はかなり変人)が、僕を見つめてくる。キャバクラ嬢のようなドレスを身にまとったおねいさんが、僕を見つめてくる。教室の後ろの方で、絶妙な美人のメイドが、僕を見つめてくる。僕の隣で、どう見ても小学生の女の子な175歳の校長先生が、僕を見つめてくる。モヒカンでピアスだらけの顔をしたヤンキーが、僕を見つめてくる。・・・時が、止まったかのように。一瞬、世界が停止したかのように。
「あの・・・見つめるの、止めてもらえません?特にピエール!!お前は気持ち悪い!」
「え!!なんでだよーー!女ばっかりひいきして!英司くんはさては、女好きだな?」
「違うよ!男に見つめられて嬉しい男じゃないんだよ、僕は!」
・・・それにしても、僕が「このへんな学園に入学するって言った覚えは一度もない」って言ったとたん、教室中が、水を打ったようにしーんとなるとは。これじゃあ、僕が悪者みたいじゃないか・・・。どうやら僕には、自分の人生を自分でコントロールできるって力があるみたいだけど、その力がこの学校を助けられるっていう意味がいまいち、よくわかんないんだよな・・・。
すると、レインボー先生が、こほんと小さく咳払いをして、僕に話しかけた。
「英司くんには、まだこの学園に起こっている非常事態のことを、きちんとお話していませんでしたね。それに、マロンやヒカリ、ピエールにも詳しいことは、話していないのです。この話を詳しく知っているのは、私とラブマシーン教授、それにドレイちゃんだけなのです。だから、このホームルームを使って、あなたたちに、この学園の現状を、ありのまま話そうと思いますわ。そのため、今日は、授業は行いません。予定していた「物を空中に浮かす魔法」講座は、明日に延期しますわ」
レインボー先生のこの言葉に、3人の生徒達は一瞬絶句したが(頭の回転が遅くて理解に時間がかかったのだろう)、次の瞬間、こう叫んだ。
「わあいだぽーーん、授業、中止だぽーーん!」
「やったわー!今日は脇毛の処理、万全じゃないから、あまり『物を空中に浮かす魔法』講座、やりたくなかったのよねー!ほら、あの魔法、手を上に上げて唱えるじゃない??よかったわー」
「やったぜ!!英司くん、今日はオス同士、語り明かそうぜ!」
「お前ら、危機感なさすぎだろ!!」
どうやら、僕一人がツッコミ役のようだった。
てか、ラブマシーン教授って誰だよ!また新たに変な奴が登場するのか・・・??冗談じゃないよ。この学園は、本当にドレイちゃんだけが救いだな・・・。それに、今ってもう夜の8時過ぎだぞ??こんな時間からホームルームって、おかしくないか?
僕がそのことをマロンに尋ねると、マロンは、あーそんなことーという感じで、適当に答えてくれた(マロンは、最初会ったときよりも可愛くなくなってきている)。
「ビビディ・バビディ・ブー学園は、夜間制の学校なのだぽん。それに、生徒はみんな寮に住んでるのだぽん!それに、生徒のお世話は、ドレイちゃんが全部してくれるから、洗濯も掃除も料理もしなくっていいから、快適なのだぽーーーん」
「少しはドレイちゃんを手伝えよ!・・・ん?ってことは、ドレイちゃんも、寮に住んでるのか?も、もしや!この学校に入学したら、ドレイちゃんと一つ屋根の下ってことか!?うは、入学したくなってきたじゃねえか!」
「男子は別の建物だぽーん」
「そうだと思ったぜ!」
夢が破れるのは一瞬だった。きっと、僕が入学したら、ピエールと一つ屋根の下なんだろうな・・・。ピエール、慣れ慣れしくてウザイから嫌だな。よし、入学しないことにしよう。
そんなことを考えていると、レインボー先生が厳しい声で命令した。
「英司くん、空いている席に座って。今から、この学園についての重大な話をします」