vol.17
レインボー先生が校長室で僕に言ったこと。僕には、自分の人生をコントロールできる能力があるということ。その力が、このビビディ・バビディ・ブー学園の危機を救う手助けになるということ。この学園が一体どんな危機にさらされているのかを僕は、まだ知らされてはいない。僕の力がどんな役に立つのかも。そして、僕の力が必要だから、僕にこの学園に入学してほしいらしい。・・・こんなへんてこな学校に?この僕が入学?バカいってんじゃないよ。僕は仮にも、東大受験を5回もしたことのある、いわばエリートな頭脳を持っている男なんだよ?こんな意味不明な学校に入学するなんて、絶対に嫌だね。
・・・なんて思っている僕の心とは全く逆の反応を示す、僕の体。今、僕はドレイちゃんに手をひかれて、ある場所に連れて行かれているところだった。ドレイちゃんの手はほんのり温かく、優しいぬくもりにあふれていて、僕は幸せで意識が遠のきそうだった。目的地は、マロンの教室。それは、今のこの学園の現状からいうと、この学園で唯一存続している教室だった。
そこには、生徒は3人しかいない。
こんなにだだっ広い建物に、生徒が3人しかいないって、やっぱり何か異常、だと思う。きっと、僕がまだ知らない、この学園の危機ってやつがあるのだろう。一体、何が起こってるというのだろう。・・・面倒なことではなければよいのだが。
「英司くん、さあ、つきましたよ」
教室に着くと、ドレイちゃんはさりげなく僕の手を放し、教室の後ろのすみに目立たないように控えた。・・・さすがはメイドだ。マロンから聞いたところによると、ドレイちゃんはこの学園の掃除をしたり、給食を作ったり、プリントの用意をしたりと、全ての雑用を任されているのだそうだ。
「英司くん、わたしの席はここだぽん!こっちこっち!!」
一足先に教室に着いていたマロンが、自分の席に僕を呼ぶ。ふらふらと行ってみると、そこには先ほど廊下でマロンと話していたヒカリちゃんとかいう女性と、モヒカン頭の男の子がいた。
「・・・初め・・・まして」
僕が、挨拶すると、2人が小さく会釈する。
「あなたが英司くん?ねぇ、頭いいんでしょぉ??イカスわぁ☆あたしはヒカリ☆よろしくねぇー☆」
「あっ・・・ども」
・・・ヒカリ・・・さん。どう見ても、僕より年上に見える。なんだか、キャバクラに勤めてそうなドレスに身を包んでいる綺麗なおねいさんだ。・・・近寄りがたいイメージ。ちょっと、怖い。
「ヒカリちゃんは、こう見えても、けっこうすごいんだよーだぽん!成績もトップなの!」
「まぁね☆英司くんの頭の良さには勝てないわぁ☆」
「そ・・・そっすか」
マロンは、こんな近づきがたいおねいさんのヒカリさんにも、すごく親しげに話している。なんだか、マロンは妹みたいだ。それにしても・・・この学校には、ビキニ姿の女や、メイド姿の美女、それにキャバクラ風味のおねいさんがいるってことか・・・こりゃ、どんな趣味の男性が入学してきても、大丈夫そうだな。校長はロリだし。
ふと横を見ると、モヒカン頭の男が泣いていた。
「・・・・・あの」
「英司ーーーーどうして俺を無視すんだよーーー俺、存在感ないのかな!?俺さ、周りがみんなメスだらけなのに、久しぶりにオスが来たっていうから、喜んでたのにさーー!無視すんなよーー悲しくなるじゃねぇか!」
・・・なんて、からみづらいやつだろう。てか、いきなり呼び捨て!?この男、モヒカンの部分が虹色で、よっぽどお気に入りなのだろう、丁寧に整えられていた。顔には、至る所にピアスが。そして、服装は、上下の黒ののスウェット。なんだか、田舎の村にいるヤンキーのようだった。
「ピエールくんはいつも寂しがりだぽん!大丈夫、英司くんはピエールくんと仲良くしたがってるって、わたしには分かるぽん!!」
「こ・・・こいつが、ピエールなのか!?」
ピエールって感じじゃないですけど!!・・・そっか、この3人がこの学園の唯一の生徒なんだ・・・。ビキニ姿の不思議少女、マロン(本名は山田花子)。キャバ嬢だろ!とつっこみたくなるほどの魅惑の女性、ヒカリさん。そして・・・虹色のモヒカン頭の寂しがり屋、ピエールの野郎。・・・こいつら、だけ!?こいつらだけで、この学園は成り立っているのか!?それに、校長も『ちょいちょいちょい』とか言い出すし・・・。僕、絶対入学なんて、したくないよ・・・。この学園の救いは、ドレイちゃんだけだった。