vol.14
「・・・英司くん。どうやら、あなたはまだ、自分の本当の力に気がついてないみたいですわね。私は今までたくさんの生徒を見てきましたが、ここまで鈍感な生徒は、初めてです。・・・いえ・・・マロンも、自分の能力に気がついてなかったですわね。この学園に来るまで・・・」
「ぼ、僕に、どんな力があるっていうんですか!!僕は、今まで何一つよいことなんてなかった!僕に何か力があるのなら、とっくに使ってますよ!東大にだって合格するように、力、使いますよ!こんなに辛い思いまでして、5浪もしてません!僕は、魔法なんて信じない!レインボー先生の言うことなんて、信じません!」
土下座したまま動かないレインボー先生を睨みつけながら、僕はこう叫んだ。僕は、母さんの期待答えるために、今まで何事も頑張ってきたつもりだった。それなのに、いつも思うような結果が出ない。今までの人生、負け犬、だった。僕に魔法が使えたら、もっと楽しい人生にしているはずだ!
すると、レインボー先生は少しほほえんで立ち上がり、僕の横に座った。そして、僕の頭に手を置いて、語りかけてきた。・・・まわりから見たら、小学生になだめられている成人男性ってことになるだろうが、今の僕は、そんなことなど気にしている余裕はなかった。
「英司くん。本当は、自分の力に気づいているんじゃないですか?確かに私は、マロンに指示して、去年と今年のあなたの東大受験を邪魔しましたわ。臭い人を隣に座らせたり、あなたにくしゃみがとまらないような呪文をかけたりして・・・。でも、でもね、英司くん。それは、去年と今年の話です。それより前は、あなた、自分で不合格の人生を歩んでいたのですよ?おかしくないですか?・・・私、極秘の魔法で、あなたの過去の模試のデータや、東大受験の結果を入手させていただきましたわ。あなた・・・2年前の模試で、東大合格可能性A判定をもらっていますわね。3年前は、模試で全国1位に輝いています。それに、4年前には、東大合格者の補欠に、選ばれていますわ。それなのに、どうして、合格していないのでしょう?」
「・・・そ、それは、そんなに簡単な大学じゃないからです!いくら、模試で良い成績をおさめても、本番で失敗することくらいよくありますよ!」
「・・・本当に、失敗、しただけなのですか?」
レインボー先生は、真剣な表情で僕を見つめたままだ。
「あなた・・・本当に、東大に受かりたかったのですか?私、超極秘の魔法で、あなたの過去の東大受験の答案用紙を入手させていただきました。あなた・・・
5年前の東大初受験のとき、見事に合格点をとっていますよ?それに、その次の年も、その次の年も、合格点を大きく上回る結果をおさめています。
それなのに、どうして、不合格の通知が届くのでしょう?あなた・・・自分で、その人生を選択しているから、じゃないのですか?あなたが、合格したくないと願っているから、そのような結果になっているんじゃない、ですか?私は、そう確信しています。これでも、伝統あるこの学園の校長なのです。以前、あなたを町で見かけて以来、あなたが何か特殊な力をもっていることに気づいていました。それで、調べさせていただいたのです。あなた・・・自分の人生を自由に操る力を持っています。心当たり、あります、よね?」
・・・僕は、答えられなかった。いや・・・答えなかった。レインボー先生が言ったこと、僕はとうの昔に気づいていたのだ。