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翔太目線:美咲1

俺には好きなヤツがいた。

名前は園田美咲っていう同い年の女子だった。

小さくて弱そうなのに、いつも誰かのために嫌な役目を追うタイプの人間で、

美咲とは小学校から同じだったけど、よく話すようになったのは中学生からだった。


話すようになったきっかけは、俺らの教室で一人の男子が「俺の高いシャーペンがない」と喚いたことだった。

まず、中学生のくせにそんなシャーペンを持ってくるなよって話なんだけど、

その男子が、5時間目の授業が始まる前にそう喚き始めた。


当時、俺は誰かと交流するわけでもなく、授業のグループワークでぐらいでしか話すことはなかった。

つまり、ぼっちだ。



「昼休みまではあったんだよ、どいつだよ俺のペンを盗んだやつ」

男子はイライラした様子で声をあげて、犯人を探し始める。


こんな時、ぼっちの俺は本当に不利だ。

俺はテスト期間以外は昼休みの教室で居眠りしていおり、この日も自分の机で居眠りをしていた。

「そういえば、翔太って教室にいたよな」


誰かがそんな声をあげると、クラスメイトの視線が俺に集まり、一斉に疑われ始めた。

完全なる冤罪だが、庇ってくれる友人もおらずクラスメイトは俺のことを冷ややかな視線で見始める。


「そんなことするわけ...」

俺が犯人じゃないと証明してくれる初がいない俺が、何を言ったとしても誰も信じてくれない。


「やっぱ...翔太くんなんじゃ」

「あいつだけだろ?昼休み教室いたの」

「てか、言い訳とかダサくね?」

非難する声が教室中に広がっていくのを、静観することしかできなかった。唇を噛み、拳を机の下で握りしめて必死に目頭から涙が溢れないように堪える。



「もう一回確認してみなよ?」

その鈴のような声が教室に響くと、俺を非難する声が一瞬静止まった。


「うちも忘れたと思ったノートとかカバンの中に埋まってるよ?」

声をあげた女子が机の上に座り、視線がその女子に集まった。

それが美咲だった。


美咲の近くにいた女子が笑い始める。

「それは美咲がガサツだからでしょ?」

「いやいや、マジで、一回探した時はなかったけど、二回目の時にはあるんだよ。不思議だよねえ」

美咲の周りの人間たちが笑い始めて、クラスの雰囲気が変わっていく。


「てかさ、もう一回筆箱とか鞄とか調べてみようよ、マジで」

美咲は立ち上げり、その男子のカバンを棚から持ってきてドンっと机に置く。


その男子はため息をつき、筆箱をひっくり返し机の上に散らばせる。

「ほら、ねえだろ」

「...ホーン、じゃあ次は鞄だね」

美咲は男子のカバンを、上下に激しく振る。すると、カツンっと一本のシャーペンが床に落ちた。


「あー、あった!」

美咲がそれを拾い上げて、男子の前で2本指で掴んで揺らす。


「ほら...これでしょ?」

「...あっいや、ここにあったのかあ...美咲よくわかったなあ」

さっきまでの不貞腐れていた態度が一変し、部が悪そうに苦笑いをする。



俺に集まっていた視線は一気に霧散して、何もなかったように話し始める。


(疑うだけ疑ってきやがって...)


俺は悔しさなのか、悲しさなのか複雑な心境が胸を締め付ける。

「...っち」

俺の舌打ちに近くの数人は気づくが、振り向かずに気づかないふりをする。



「ほら!翔太くんがこんなことするわけないでしょ」

美咲はいつの間にか俺の後ろにいて、俺の肩に手をのせていた。

「お、おい...急に何だよ」

美咲の手の温度が肩に伝わり、そこに熱が集まっていく感覚がし、美咲が顔を覗き込んでくると、顔が熱くなる。


「...翔太くんは昼休みに、日直が消すのを忘れてた黒板を代わりに綺麗にしてたり、掃除がしやすいように机を動かしてくれてるんだよ」

「はっ?い、いや別に暇だからしてるだけで...てか何で知って」

「だからさ、こんな優しい人が盗むわけないでしょ?」

美咲がやや強引に言い切ると、周囲が再び静まる。


俺を疑っていた生徒たちは、申し訳なさそうに俺から目を逸らし、シャーペンで喚いてた男子は、後頭部を掻きながら苦笑いをする。

「えっと...お前が掃除のために教室にたのを疑って悪かった」

「いや...別に掃除のためでは」


その男子が頭を下げると、俺の周りにいた生徒たち謝罪に似た言葉を言い始める。

「そんな謝られても...逆に困るっていうか」

謝られたぐらいで嫌だった記憶は無くなるわけもないし、自分の罪悪感から謝られてる気がして少し複雑になる。


「...何も知らないくせに、決めつけることはやめようね」

美咲は少し大きめの声を出し、少し冷ややかな瞳で笑う。その声を聞くと、俺の周りにいた生徒たちが苦笑いをして美咲から顔を背けた。

俺はその言葉に胸に熱いものが込み上げてくる。

「ね、翔太くん」

美咲は俺の顔を覗き込み、優しい瞳で微笑んでくる。

俺はその視線に胸が苦しくなる。


顔に熱が集まっていくのを感じ、俺は、俺の肩に添えられた美咲の小さな手をそっと握る。

これが、俺が美咲に惚れた瞬間だった。

読んでくださりありがとうございます。

次もラズリー(翔太)目線です

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