婚姻のサイン
「じゃあ、それではこの書類にサインをしてくれれば正式にラズリーさんはセリアンとの婚姻が結ばれるけど、いいかな?」
父親のアンドリューと母親のセリーヌは手を繋ぎ、ニコニコしながら対面に座る私とラズリーさんを見ている。
今いる場所は、保護者同伴の婚活が行われていた、広場の奥にある屋敷の個室にいる。
そこには、お洒落なカフェのマスターのようなおじ様が出迎えてくれ、手際よく婚姻に必要な書類を用意し始める。
つまり、お互い気に入ったら即婚姻!ができるように準備されているらしい。
大人の世界は怖い
こうして、私、金髪イケメンのセリアンは、前世では恋人ができたことがなかったが、生まれ変わり齢7歳で婚約者ができてしまった。
しかも、相手は前世の初恋に相手、翔太くんの生まれ変わりのラズリーさんで、よくわからない状況になってる。
「セリアン...これからはラズリーさんと共に支え合っていくんだよ」
「は...はい」
私の横では美しい赤色の髪に、猫のような吊り目のラズリーさん(元翔太くん)がスラスラと書類にサインをしていく。ラズリーさんの両親には私の父親が、すでに了承をもらってきたらしい。
「書き終わりました...セリアン様、これからよろしくお願いしますね」
ラズリーさんは目を細め、可愛らしい笑顔をする。彼女があの翔太くんだったなんて今でも信じがたい。そして、ラズリーさんは小さな手で私の手をぎゅっとする。
「..はい、こちらこそよろしくお願いします」
私は少し頬を赤くして、ラズリーさんの手を握り返す。その様子を見ていた両親は部屋から静かに立ち上がり
「ハメは外しちゃダメよ?」
と言い残し、出ていった
両親が出ていくとラズリーさんはさらに、私の手を強く握る。
(それにしても...翔太くんはどうして、私と婚姻をしようとしたんだろう)
私は一度、ラズリーさんの前世である翔太くんに告白したが、振られており、両思いだったわけではない。宰相家の地位が欲しかったのか、それとも知り合いである私が都合が良かったのか、理由はどちらでもいいが、今はラズリーさんの婚約者として、この人を守ることにしよう。そして、もしラズリーさん(翔太くん)に好きな人ができた場合は笑顔で送り出そう。
「翔太くん...あのさ、婚約する際の書類にも書いてると思うけど、もし、翔太くんがこれから私以外と結婚したい人が出来たら、その時は、私は...君を応援するから」
私は苦笑いをしながらラズリーさんの両手を握り、苦笑いを浮かべる。昔好きだった相手にこんなことを言うのは少し辛いが、ラズリーさんの幸せを願ったらしょうがないことだ
「もちろん...翔太くんと婚姻している間は、セリアンとして君を守らせて欲しいし、大切にすることを誓うから」
私はラズリーさんに向き直り顔を上げると、ラズリーさんは目が開き額には青筋が浮かんでいた。
「えっ?」
「てめぇ...俺との婚姻は義務だって言いてえのか?俺のことを簡単に手放せるのかよ」
ラズリーさんは悲しみと怒りが混ざった顔で私を見つめ、さらに手を握りしめてくる。
「俺への想いはそれぐらいなのかよ?...っち、もう今日は帰る」
ラズリーさん(翔太くん)机を叩き立ち上がると、振り向きもせず扉から出ていった。私はその様子を唖然として見ることしかできなかった。
「しょ、ら、ラズりーさん!!」
ハッとして、慌てて追いかけるがすでにラズリーさんの姿はなかった。
「ど、どうしよう。傷つけてしまったのかな」
目を伏せ、後悔が心臓を握りしめてくる。大切にすると誓った途端、ラズリーさんを傷つけてしまった。
「追いかけないと...」
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