プロローグ
なろう初投稿です
プロローグです。次から本筋の話に入っていきます。
園田美咲
享年十六年
塾からの帰り、一つ上の兄さんと歩いてた雨の日だった。
私の家は家業をしていて、兄さんはその跡取りだった。
だから、私にとって兄は家族として大事な存在だし、何より家を守るために重要な人だった。
その考えが、私を咄嗟に動かした。
雨でスリップしたトラックが、コンクリートを削りながら私たちの方に迫ってくる。私は隣にいた兄さんの腹を思いっきり蹴り飛ばした。兄さんは少し離れた場所に飛び腹を抱えてうずくまり、私を見あげた。
…空手やっておいてよかったな
死ぬ前は意外と呑気なことを考えていた。多分、実感がないからだと思う。
「………みさ!!」
兄の絶望した顔が一瞬見えた。その瞬間少し後悔した。兄を傷つけてしまったと
「…ごめんね」
最後にその言葉を言えたのは私の生前の行いが良かったからだろう。
そして私は死んだ。即死だった。
気づいたら、私は私を見てた。兄が泣き叫び、手が血だらけになりながら必死にトラックをどかそうとしてる。
「みさ!みさ!今にいちゃんが助けるから!!今、にい・・ちゃんが・・・うわあああ」
兄は叫びながら、周りの大人に抑え込まれて安全な場所に連れて行かれる。膝をつき掠れた声で私の名前を呼ぶ兄の姿に胸がいたむ。兄は寡黙だったが、その分私を行動で愛してくれた人だ。私は半分透けた姿で兄に近づき、抱きしめる真似をする。
次も生まれ変わったら、兄弟になろうね
愛してるよ
ごめんね傷てけて…お願い、泣かないで
兄には聞こえない声で何度も声をかける。徐々に体が光に囲まれて意識が薄れていく。きっとこれが死なんだろうな。私はきっとたくさんの人を傷つけてしまった、そう思い私は目を閉じた。
事故だからしょうがないけど…親とか兄さんには本当に申し訳ないことをした。高校二年生になったばっかりでもっとやりたいことがあったし、もう一度会ってもう一度だけ、あの人の声が聞きたい人もいた。
そんな思いを抱えて私は生まれ変わった。そう…
男として
…俺の名前はセリアン・ディ・シード
宰相家であるシード族の息子となった。俺は運が良かった。優しい母に厳格だが尊敬できる父のもとに生まれた。そして、使用人も皆んな良い人だ。
私は目を開けた瞬間、広い天井を見渡し遠くの窓を見て察した。
恐らく、今流行りの異世界転生をしたんだ、と
景色は中世のような風景だが、なぜか発展してる技術。
そして何より、めっちゃ金髪碧眼の美人なお母さん。そして、黒髪に綺麗なべっ甲色の瞳をした仏頂面な父さん。美女イケメンが勢揃いのこの世界。
まあ、下手に同じ世界に生まれ変わるよりもこっちの方がマシだしイケメンが多いのは目の保養だから簡単に受け入れることができた。
しかも、私の新しい両親は
「おい、あんまり動くなよ」
「体は大丈夫なのか」
「この子はお前に似て美人だな」
とソワソワと父親が母さんの周りを忙しなく動き
「少し黙りなさい…」
と母さんに睨まれてシュンとしていた様子を見て、私はまた家族に恵まれたんだと確信した。
そして、今度こそ家族を最後まで大切にしようと心に決めた。
兄についてはまた後々、出てきます。
人物紹介
主人公:セリアン(元園田美咲)
パパ :アンドリュー
ママ :セリーナ