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第76話:想いの針先 -完-

「アトリエの一周年を迎えました」


Atelier Traditionの大広間で、千秋と蓮は研究発表会を開いていた。窓から差し込む朝日が、集まった職人たちの表情を照らしている。


「この一年の成果として」千秋が説明を続ける。「伝統技法の新しい可能性を」


作業台には、一年間の研究成果が並べられていた。伝統的な技法を基礎としながら、現代的な解釈を加えた革新的な作品の数々。


「そして」蓮が続ける。「次世代への継承として」


若手デザイナーたちが、一人一人前に出て自身の研究を発表する。彼らの目には、確かな成長が宿っていた。


「素晴らしい」


マリーが感動的に記録を取っている。パリでの評価以来、世界的な注目は更に高まっていた。


「本当に」春樹が微笑む。「理想的な形になりましたね」


アトリエには、特別な空気が満ちていた。それは単なる研究発表以上の、魂の継承とも呼べる時間。


「風間さん」


さくらが、玲奈と共に近づいてくる。二人の手には、特別な包みが。


「これを」さくらが差し出す。「一周年の記念に」


開かれた包みの中には、一本の針。

蓮の祖母が最後に手がけようとしていた作品に使われるはずだった針。


「そして」玲奈も包みを開く。「千秋の祖母からの、最後の贈り物」


もう一本の針。

二つの家に伝わる伝統が、ここで一つになる。


「みなさん」千秋の目に涙が浮かぶ。「ありがとう」


蓮も、深い感動を覚えていた。


「これからも」蓮が千秋の手を取る。「共に、道を歩んでいこう」


アトリエの窓から、夏の風が入ってくる。

カーテンが、新しい季節の訪れを告げるように揺れる。


「さぁ」春樹が声をかける。「次の一年に向けて」


研修生たちも、新しい決意を胸に秘めていた。


「先生方の技法を」彼らが力強く。「必ず、継承していきます」


アトリエ全体が、希望に満ちていく。

それは確かな未来への一歩。


「千秋」蓮が優しく呼びかける。


「はい」


「幸せだよ」蓮の声に、深い愛情が滲む。「君と出会えて」


千秋も、静かに頷いた。

「私も」


作業台の上で、三本の針が光を放っている。

それは過去から未来への架け橋。

そして、永遠の愛の証。


全てが、今、最高の形で実を結んでいた。

それは伝統と革新の調和。

そして、二人が紡ぐ永遠の物語。


アトリエには、新しい風が吹き続けていく。

それは次の世代への風。

そして、愛が紡ぐ希望の風。


(完)

最後までご覧頂きありがとうございました。

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