第74話:永遠の絆
「お二人の誓いの言葉をどうぞ」
神前での厳かな空気の中、蓮と千秋は向き合っていた。神官の声が静かに響く中、朝の光が社殿を優しく照らしている。
「私は」蓮が力強く口を開く。「風間千秋さんを、生涯のパートナーとして」
その声には、経営者としての威厳と、研究者としての情熱が混ざり合っていた。
「伝統を守り、新しい価値を創造する。その道のりを、共に歩んでいきたい」
千秋の目に、涙が浮かぶ。
「私も」千秋の声が、静かに響く。「篠原蓮さんと共に」
二人の視線が重なる。
そこには、もう迷いはなかった。
「一針一針、想いを紡ぐように。これからの人生を、共に歩んでまいります」
玲奈とさくらは、前列で涙を拭っていた。
春樹は、親友の晴れ姿を温かく見守っている。
「素晴らしい」マリーがノートに記す。「まさに、運命的な物語」
取材のため来日していた彼女の目にも、感動の色が浮かんでいた。
研修生たちも、後方で身を乗り出すように見つめている。
「先生方の」彼らが小さく呟く。「新しい一歩」
三三九度の儀が始まる。
三つの杯を交わす度に、誓いは深まっていく。
「風間さん」さくらが感動的に。「本当に、幸せそう」
「ええ」玲奈も頷く。「長かったけど、これが最高の形」
春樹は、親友の表情を見つめながら、深いため息をついた。
「やっと」彼は小さく呟く。「本当の笑顔を取り戻した」
式の後、アトリエでの披露宴が始まる。
伝統的な和の空間に、現代的な祝宴が調和を見せる。
「これからの」春樹が祝辞を述べる。「お二人の未来に」
その言葉には、長年の友情と、新しい期待が込められていた。
「兄様」さくらも立ち上がる。「風間さ…千秋さん」
彼女の目には、確かな喜びが浮かんでいる。
「本当の家族になれて」さくらの声が震える。「嬉しいです」
若手デザイナーたちも、順に祝福の言葉を。
「先生方の姿を」彼らが力強く。「私たちも、継いでいきます」
アトリエの窓から、夏の風が入ってくる。
カーテンが、祝福するように揺れる。
「ありがとう」千秋が深々と頭を下げる。「みなさん」
蓮は、そんな千秋の横顔を優しく見つめていた。
「これから」蓮が静かに言う。「新しい物語の始まりです」
パリからの祝電も届く。
欧州のファッション界からの祝福。
そして、次世代への期待。
「まさに」マリーが感動的に。「伝統と革新の完璧な形」
アトリエには、特別な空気が満ちていく。
それは新しい家族の誕生を祝う、温かな時間。
「さぁ」春樹が声をかける。「これからも、見守っていきましょう」
玲奈とさくらも、幸せそうに頷く。
「二人らしい、素敵な形に」
披露宴が終わりに近づく頃、蓮と千秋は窓際に立っていた。
夕暮れの空を、共に見つめながら。
「千秋」蓮が優しく呼びかける。「ありがとう」
「蓮さん」千秋も微笑む。「これからも」
アトリエの作業台では、三本の針が静かに輝いていた。
千秋の祖母から、蓮の祖母から、そして今日、新たに加わった一本。
それは過去から未来への架け橋。
そして、永遠の愛の証。
全てが、今、新しい形で結ばれていく。
それは伝統と革新の調和。
そして、永遠に続く愛の物語。
(つづく)




