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理解した者が正気を失う特級呪物のうわさ

作者: しるべ雅キ

「自分の住んでいる国の繁栄と滅亡のどちらを願う?」と聞かれたらどう答える?


 普通の人間ならば繁栄を選ぶだろうが、呪物はどうだろうか?


 それも特級呪物と呼べる者だった場合なら……


 今から、理解したら正気を失う特級呪物のうわさを語ろうと思う。


「特級呪物」は少年漫画に登場した用語から派生したスラング。


 意味は場面によってそれぞれだろうが、呪術と無関係な場合が多い。


 それとは別に我が国では、蠱毒(こどく)厭魅(えんみ)と言った呪術が存在する。


 蠱毒(こどく)は毒虫を集めてひとつにする呪術。


 厭魅(えんみ)人形(ヒトガタ)に呪詛を取り込ませる呪術。


 呪いとしてはスタンダードだから、対策も確立している。


 だがもし、これら2つの呪術を生身の人間に施していたとしたら?


「そんな事ありえない」と思うだろうが、事態は既に発生している。


 方法は簡単、無数の邪念を毒虫のように集めて人間に押し付けるだけ。


 学校や職場でよく見る光景だと思わないかい?


 ネットが発達したこの時代、社会の縮図はどこまでも可視化される。


 可視化された縮図は、やがて全体像として浮き彫りになって行く。


 最終的には、ひとつの(かめ)に収まらない邪念が互いに互いを食い合う訳だ。


 次は、邪念を精錬した呪詛を人形(ヒトガタ)に移す段階になる。


「この役割を()に押し付けるのか?」が重要な鍵だ。


 と言っても、術の心得の無い者が多数集まっているのがネットの世界。


 人形(ヒトガタ)になる者は、自ずと決まってしまう。


 そう……誰かが庇うようなハンデを一切持たない人間……


 いかなる不幸も躓きも、すべて自己責任で片付けられる者達だ。


 ネット上で何度も熟成を重ねた呪詛は、全てそういう人間に集まって行く。


 生身の人間ほど完璧な人形(ヒトガタ)は無いから、取り込む呪詛も桁外れになる訳だ。


 こうして特級呪物が生まれる訳だが、別の疑問が浮かんで来る。


「他にもっと不幸な人がいるのでは?」という問題だ。


 世の中にはネットが使えないどころか、明日の命すら危うい者は多数いる。


 そういう国に住む者の方が、取り込む呪詛も多くなるように見えるのは当然だ。


 だが呪詛とは単純な不幸ではなく、多くの人間が持つ負の思念。


 故に不幸なだけの者は呪詛より同情が集まり、呪いは先進国の方が強大になる。


「では、特級呪物と化した者は自分の住む国の滅亡を望むのか?」


 事はそう単純な話ではない。


 確かに彼等が破滅を願えば、国内に溢れた呪詛は多くの不幸をもたらすだろう。


 だが彼等は特級呪物と化した自覚は無く、普通の人間として生活している。


 その上、氾濫した情報を分析すれば自分の住む国の状況くらいは把握出来る。


 彼等が繁栄を願えば呪詛は国外へと流れ、より多くの犠牲者を生むだろう。


 我々の命は既に大きな天秤に掛けられてしまい、逃げ出す事など出来ない。


 今まで長々と語って来たけど、全くの噂に過ぎないよ。


 だが、これだけは覚えておいてほしい……


 呪詛を祓おうと考えてはいけない、代わりはいくらでもいるのだから……

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