第十二話 チョーカーをもらったよ
今日はお姉さん三人とショッピングに出かけることになった。すごく楽しみ。めいっぱい、おしゃれしていこう。
髪型はポニーテールにしようかな。どれくらいの高さがいいだろうか。真正面から見て髪飾りの白いリボンが見えるといいよね。ブラッシングして、一生懸命髪の毛をまとめて上げていく。
「あっ、腕、ずっと持ち上げるのしんどい」
ツインテールのときも思ったけど、女の子っていつもこれやってるの? 腕ムキムキじゃない? ぼくが下手くそで早く結べないからかな。
さて、何を着ていこうか。このブラウスにワンピースはどうだろうか。姿見で確認してみる。うーんあまりピンと来ない。じゃあ、こっちのスカートは? よさそう。靴はどうしようか。バッグはどうしようか。
いろいろクローゼットを漁っていると、控え目なノックの音が聞こえて来た。
「はーい」
返事をしてドアを開けるとそこには……、これはどっちのお姉さんだろう。
「……今日は、髪、綺麗に結べている」
このたどたどしい話し方は、ライブラ22。二番目のお姉さん。
「えっと、ライブラ22、お出かけまで時間ありますよね?」
「お出かけの前に渡しておきたいものがあるのです」
後ろからもう一人お姉さんがやってきた。この丁寧な話し方はライブラ23。三番目のお姉さん。
「渡したいもの?」
そう言って差し出されたのは白いチョーカーだった。ゴールドのハートの形をしたチャームがついている。
「これは?」
「詳しくは、中で話しましょうか」
「あ、はい。どうぞ」
なんだろう。今日は楽しくなりそうな日なのに。物々しい雰囲気だ。
「本部からの命令です。このチョーカーを毎日四六時中、着けていてください」
「このチョーカーを? 毎日ずっと?」
「ええ」
……このチョーカー、見たことがある。シェイドさんが着けていたのと同じやつだ。ハートのチャームは付いていなかったけど。
「……これを着ける理由は教えてもらえますよね?」
「もちろんです」
端的に言うとこういう話だった。
チョーカーをつける理由は、束縛するため。
MCC機構本部はあの騒ぎを警戒している。これはシェイドさんにも言われたことだ。警戒されるのは仕方のないことだと思っている。
このチョーカーは、着けている本人の魔力を強制的に吸収、体内へ流すことにより気絶させる機能がある。体内に保有する魔力が大きければ大きいほど、絶大な効果を発揮する。何か問題が起きれば作動するように仕掛けてある。
「魔力を大量に放出するより、ぼくに流したほうが周りに影響がなさそうでいいですね」
「嫌じゃないのですか! 怖くないのですか! 私はこんなもの妹に着けさせるだなんて、嫌で嫌でたまりません!」
そう言ってライブラ23は泣き出してしまった。
「……21と、一緒に行動させると進言しても、だめだった。……シェイドも、アルカナクラスが上がった。ウィムジー」
「シェイドさんが、ウィム、何ですか?」
何が起きているんだ? シェイドさんもチョーカーを着けていた。これと全く同じチョーカーを着けているってこと? どうして?
「取り乱してしまい失礼しました。シェイドについては、すぐにステディに引き下がるでしょう」
「私たちは……人造人間。……目的があって、作られた存在……。力は、制御する、制御されなくては、危険な存在」
「制御できなければ、私たちMCC‐062のコピーは廃棄されるだけです」
コピー? またわからないことが増えた。けど。
「ぼくはこの世界のこと、MCC機構の考えていること、何も知りません。ですが、ライブラの、ライブラ24の代わりに生きると決めました。24の意志で、ぼくは呼ばれましたから。必ず生き抜きます」
「そうですか。……初めて会ったときのことを覚えていますか?」
覚えている。一緒にお風呂入ったよね。そしてかわいいを追求した。
「はい、覚えています」
「私たちはそのとき、任務から帰還したばかりで、状況を把握しきれていませんでした。ライブラ24の死、とある少年の魂の定着、その経緯、MCC機構からは廃棄せず引き続き管理すると告げられ、シェイドからは、新しい末の妹と仲良くしてやって欲しいと頼まれ、私は混乱していました」
「……私もそうだった。けど、よくわからないなら、見に行こうよって、21が、引っ張っていった」
ライブラ21、一番上のお姉さんで、元気で強い人。
「私は、あなたのこと、ツバサ君のことを心配しました。元に戻りたいとか、自由に生きたいとか、きっと辛い思いをしているのではないかと、心を痛めていました」
「そう……。でも、初めて会ったとき、ツインテール……してた」
「なんだか、うれしかったんです。自分勝手ですね。妹が生きているって思えて。ライブラ24の代わりに生きる、ですか。その言葉にも救われています」
23はまた涙を流し始めた。――お別れする前の、お父さんとお母さんを思い出した。
「ぼくは、重い病気で死にました。ぼくの人生は終わりましたけど、ライブラ24の人生を繋いでいきます。ライブラ24として人生を始めて生きていきます」
22と23は顔を見合わせた。この考え、変かな。変なんだろうな。
「……その言葉を聞いて、改めて、すっきり……した」
「そうですね。21は勝手にすっきりしていましたが」
ぼくは目の前に置かれたチョーカーを首に飾った。お姉さん二人は心配そうにしている。
「大丈夫です。ぼく大丈夫ですから」
そういって笑って見せる。
「……そのハートのチャーム、私たち、三人からの……プレゼント」
「何の効果もありませんけどね。嫌なものをつけ続けるよりかは、よいと思いまして」
お姉さん三人からのプレゼント。そっか、大切にしよう。
似合ってますか?なんて聞こうとした瞬間、突然ドアがバンっと開かれる音がした。ライブラ21が現れた。
「遅くなった! ショッピングに出かけるのだ!」
「……何してたの」
「本当に何していたのです? もうお昼回る頃ですよ」
「んー? シェイドを連れて来たのだ!」
「えっ、シェイドさん!?」
後ろに嫌そうな顔をしたシェイドさんがいる。
「荷物持ちは必要なのだ!!」
えぇ……、どれくらい買うつもりなんだろう。女の子のショッピングって大変そうだな。




