第十一話 魔法が使えるようになったよ
今日も魔法の特訓、当然のごとく外で走り込みをしている。
「へえ、はあ、はあ、ひい」
「うおー!!」
相変わらずヘロヘロと走るぼくを、軽々と元気に追い越すライブラ21。
その後、魔法の練習のため実験場へ移動した。いつもの流れである。
「フローラ!」
あれだけ走った後なのに、ライブラ21はダッシュしてフローラさんのところへ向かう。体力お化け過ぎる。
「ライブラ21、ライブラ24、待ってたよ。走り込みお疲れ様。少し休む?」
「不要! 平気だ!」
「ぼ、ぼくは、休みたいです」
しばらく休みながら、昨日シェイドさんに教えてもらったことを話をした。
「シェイドさんから、魔法を編むについてヒントをもらいました」
「へー、シェイドが。教えるの苦手ってよく言ってるのに、めずらしい。どんなヒントをもらったの?」
「糸にして、色をつけて、いろんな形に、編み物のように編む」
「なるほど、物に例えたの。もう少し休んだらやってみましょうか」
「はい」
魔法特訓開始。とりあえず壁に向かって魔法を放つことにした。
体をめぐる魔力に秩序を与えて、意味を持たせて、規則的に編む。糸にして、色をつけて、いろんな形に、編み物のように編む。フローラさんとシェイドさんが教えてくれたことを交互に思い出す。
体をめぐる魔力。熱を纏うような感覚。その熱を手の平へ。何か触れている感覚がある。これを、これをどうする。放つ。放つなら勢いが欲しい。ぶるぶると手が震える。壁に向かって投げたい。投げるなら、そうボール。手の平にあるボールを壁に向かって放つ。
出来たと確信した。
「はあ!!」
勢いよく壁へ魔法を放った。実験場に衝撃音が響く。
「やった、出来た! 出来た! ぼく魔法使えた!」
「マジックショック! 上出来なのだ!」
「わー、初めてでここまで出来るなんて、すごいね」
「シェイドの代わりに、なでなでしてあげるのだ!」
ライブラ21に頭を撫でてもらう。二人にほめてもらえて、とってもうれしい。
「よし! 今度は魔法発動までの時間を上げる訓練をするのだ!」
「へ!?」
「何を呆けている! 来期、収集課配属まで数週間しかないのだ! マジックショック使えます、だけじゃ、ぺろっぺろに舐められるのだ」
ぺろっぺろ! 嫌だ!
「ねえ、ライブラ21、そんなに焦らなくてもいいんじゃない? 収集課でしょ? 言ってしまえばお使いみたいなものだし。魔道具使えるなら十分でしょ?」
「ふん! 本部が考えていることなんて、まるっとすっきりお見通しなのだ!」
本部が考えていること? なんだろう? 少し不安に感じる。
「そう暗い顔するな! お姉ちゃんがついているのだ! シェイドが繋いだのだ、無駄にはしない」
ライブラ21の方が暗い顔をしていると思う。これは、あの騒ぎのことか、それともMCC機構が求める必要な力、ライブラの力のことか。ぼくに与えられた情報は少ない。ただ、ただひたすら、嫌な感じがする。
フローラさんが手を叩いた。その場の空気が変わる。
「まあ、魔法がうまく使えるには越したことはないし、頑張りましょうか」
「はい、頑張ります」
……ライブラ21は静かだった。
それからぼくはひたすら魔法を放った。
「マジックショック!」
「十秒!」
「マジックショック!」
「十一秒! 落ちてきているのだ!」
「マジックショック!!」
「九秒!」
ストップウォッチも無しによく正確に秒数が刻めるな。流石にコンマ何秒まではわからないみたいだけど、集中したらできそうなほどに思える。
「どうしたのだ! 手が止まっているのだ!」
「ごめんなさい、集中切れてました」
「続けるのだ! はい!」
「マジックショック!」
「十秒!」
「マジックショック!」
「十秒!」
……どれだけ魔法を使っただろうか。最高で八秒か。
「相手に当たる前に逃げられるのだ!」
「あうっ……」
「まあでも、女の子を狙う悪い変質者をけん制するには使えるのだ!」
「けん制……」
「マジックショック! 確率はそんなに高くないけど、当たれば相手の魔力を乱して一時的なめまいを狙える、ちょっとだけ便利な魔法なのだ!」
めまいか。確かに変質者から逃げるのには使えそう。
フローラさんがぼくに一言伝える。
「当然だけど、相手に敵意があると判断してから使ってね」
「わかりました」
そうだ、何かあたりまえのように変質者対策の魔法の練習をしていたけど、やってみたい魔法があるんだった。
「あの、あったかい風出せるようになりたいです。自分で髪の毛乾かしたいので」
「あったかい風、結構シビアなのだ!」
シビア!? あ、あれ、だいぶ前だけどシェイドさんが義務教育レベルとかなんとか言っていたような? みんなも簡単に使っているし。
「まず、風を出せるようになりましょうか。そうね、口から息を吸って吐くようなイメージで」
「どれくらいの温かさがいいのだ? パニの体温くらいか?」
パニ、パニってごはんに出てくる肉のことだよね。生きてる状態で会ったことがないからイメージがわかない。
「え、えっと自分でイメージしてみます」
口から息を吸って吐くように、温かさは何だろう。熱めのお風呂ぐらい? 実際に息を吸って吐いてみる。体をめぐる魔力。熱を纏うような感覚。これを手へ。手の平に風を受けているのを感じる。違う。これを逆に放出するように……。
「ま、待つのだ! 待つのだ!」
「壁! 壁に向けて!」
「え?」
「ぐえー! アブソープション!」
ぼくは強烈な熱風を巻き起こしたようだった。ライブラ21がそれを吸収する。二人に直撃していたらどうなっていたことか……。
「何をイメージしたらそんなことになる! 流石にびっくりしたのだ!」
「ご、ごめんなさい!」
「うーん、威力の強弱はどうにかなると思うのだが、四属性の掛け合わせはシビアなのだ……。まあでも、すぐにできるようになるのだ! 頑張るのだ!」
四属性の掛け合わせ……。またわからないワードが出て来た。あったかい風、出せるようになるかな……。ライブラ21の言う通り頑張ろう。




