第十話 一緒にごはんを食べたよ
魔法の特訓を終え、ライブラ21と一緒にシェイドさんのところに来た。
「シェイド! なでなでお願い!」
「はいはい」
なでなでだと!? ライブラ21がシェイドさんに、なでなでを要望している。ぼ、ぼくもやって欲しいけど、男がこんなのねだるものじゃないよね。床に目を向ける。
「ん」
声を聞いて見上げる。シェイドさんが手を伸ばしてきた。そっと近づいて頭を撫でてもらう。思わず目をつぶる。手があたたかい。これは……。
「シェイドさんの魔力だ」
「お、特訓頑張っているみたいだな。よく冷たくて気持ちいいと言われたよ」
「それが違うのだ! 今のライブラ24は魔力に熱さを感じるらしいのだ」
「ほう、魂の違いが関係しているのか……。まあ、感じ方の違いだけなら特に問題はないだろう」
何か、ふと思い出した。かすかに思い出せるライブラの記憶。誰かの魔力を感じるとき、いつもあたたかさを感じていた。あたたかさ……。ライブラは魔力を冷たく感じるのに、あたたかさを感じるのはなんでだろう。
「それと相談事がある! ……なんだっけ?」
ライブラ21が振り返ってこちらを見る。満面の笑み。いつもこんな感じなのかな。シェイドさんの話を聞く限り、頭よさそうなイメージがあるんだけど。
「えっと、魔力を編むっていうのがよくわかりません。フローラさんの説明を聞きましたが、イメージ出来なくて」
「うーん、魔力を編むね。ツバサ君の世界に毛糸というのは存在するか?」
「あ、はい。あります」
「糸にして、色をつけて、いろんな形に編む。どうだろうか?」
編み物か。マフラーとか、セーターとかね。編み物はやったことないけど……。
「なんとなくですがイメージできました。次の特訓でやってみます」
「ああ。応援しているよ」
頭をぽんぽんされた。あーこれは、これは癖になる、癖になっちゃう。
そのとき、シェイドさんの魔力に若干の違和感があることに気がついた。何だろう、何か、今日は違う。何か。
「シェイドさん、そのチョーカーは何ですか?」
「ああ、これか? おしゃれだよ」
おしゃれ? らしくない。……ライブラ21は静かだ。何かコメントしそうなのに。
「そろそろ戻るのだ! ライブラ24! 一緒にごはん食べよ!」
「あ、わ、わかりました」
手を引っ張られ、部屋から出ようとする。
「今日の献立は、メウラが入っているらしいぞ。残すなよ、ライブラ21」
「うえー!」
すごい顔をしている。メウラってなんだろう。それよりも、あからさまに話をそらされちゃったな。また刺激がどうの警戒がどうのってやつかな……。
* * *
今日はなんと、いつもぼくが生活している部屋じゃなくて、社員食堂で食べることになった。ここ社員食堂あったんだ。
今日の献立は、ソーヌム、プタッロ、デザートはラン、飲み物は安定のヨラ。ソーヌムはシチューみたいで美味しい。プッタロはパンだね。何パンかって聞かれるとよくわからないけど。えっと、どれがメウラだろう。
「ライブラ24は、いつもあの部屋にいたのだ?」
「はい、ずっとあの部屋です。ごはんも誰かに持ってきてもらって、そこで食べてました」
「よく飽きないのだ! そうだ、部署替えが決まったわけだし、クローズド・サークル000からの引っ越し、というか、ライブラ24が暮らしていた部屋にそろそろ戻れると思うぞ!」
クローズド・サークル000、ちょくちょく聞くから、この建物の名前かと思ったらどうも違うようだ。ここは魔法研究センター。クローズド・サークル000は部屋の名前だろうか。
「ぐえー、メウラ!」
そういって、スッとぼくの皿に入れて来た。
「わあ! 何するんです!? というか、メウラってなんですか!?」
「なんか変に甘いやつだ!」
あのシチュー、ソーヌムに入っている、ニンジンみたいなやつか。
「だめですよ、シェイドさんが残すなって言ってましたよね」
「ライブラ24が食べたら、残したことにならないのだ!」
「ぼくが食べたって、残したと同じ意味にしかなりません! 食べてください!」
メウラをライブラ21の皿に戻す。
「わー! このこの!」
メウラがふわふわ浮いて、全部ぼくの皿の中に入る。魔法を使ったんだ!
「あ! ずるいです!!」
「ふん! 悔しかったら魔法を早く覚えるのだ!」
わー! 自分は魔法が得意だからって横暴だ!
「なら、デザートのランもらいますよ」
取ろうとしたら阻止された。早い。
「全く! ライブラ24は油断も隙もないのだ!」
そういってすごい勢いでランを食べ始めてしまった。ほっぺたがパンパンに膨らむ。
「あっ、食事全部食べ終えてないのにデザート食べるだなんて!」
「ふぉなかのなふぁにはひったえふぁふぉなぎなのふぁ!」
おそらく、お腹の中に入っちゃえば同じなのだ、と言いたいのだろうが……。
「食べながらしゃべらないでください!」
* * *
次の日。また魔法の特訓をすることになったが、当然のごとく、外で走り込みをすることになった。
「へえ、はあ、はあ、ひい」
「うおー!!」
後ろから声が聞こえて来た。振り返るとライブラ21が猛ダッシュで走って来た。
「うえ!?」
すごい速い。もうすごいとしか言えない。シェイドさんの体をベースに作った子って聞いたけど、シェイドさんも走るの速いのだろうか。
そのままライブラ21は走り去っていった。
「ふひ、ひい、ふい」
「うおー!!」
後ろから声が聞こえて来た。う、うそでしょ……? まさかもう一周してきたの?
「ライブラ24、遅すぎるのだ! 記憶云々のせいではなく、単純に引きこもっていたから体力が落ちているのでは!?」
そうかな、そうかも……。何も言えないというか、息が切れてしゃべれない。
「はあ、はっ、はひっ」
「なっさけない! いざとなれば魔法があるから大丈夫と思わないこと! これは魔術師の基本なのだ! みんなライブラ24より体力あるのだ! これだと舐められるのだ! ぺろっぺろなのだ!」
「ひーっ」
ぺろっぺろ! 嫌だっ! ぼく収集課で働けるかな、不安しかないよ……。




