パパと呼んで…。 vol.086 敬遠。
リビングに戻り、茫然とする直道。
グラスのブランデーを一口。そして両手でグラスを持ちながら、
「何があった…、侑佳…。」
それからである。何かしら侑佳の言葉が少なくなっていった。
夫婦片方の、どちらかの心境が変わってしまうだけで、
夫婦の関係はぎくしゃくとするもの。それが数週間続いた。
最初は直道も侑佳の初めての流産のせいで、侑佳が頑なに、
恐いと言う意識を持ってしまったのかもしれないと感じてはいた。
しかし、これが実際には直道にとっては、
ある種のトラウマになってしまったのである。
侑佳がようやく、その流産からの妊娠に対しての恐怖から立ち直ろうと仕掛けた頃には、
今度は逆に、直道の方が、侑佳を敬遠し始めたのだった。
「わはっ、いらっしゃ~い。」
お店の玄関で捷子。
「こんちは。またお願いしたくってね~。」
浩一。
「どうぞ、どうぞ、中の方へ~。マコ~、チズ~~。モッちゃん来たよ~。」
その捷子の声に、
「わぁ~、いらっしゃい。」
知寿子。
「こんにちは、モッちゃん。」
麻衣子。
「うん、こんちはマコちゃん。チズ。」
3ヶ月が経とうとしていた。
以前にみんなで集まって食事会をして以来、
何度かリビングに飾ってあった花が枯れては、小枝子から、
「浩~、また花お願~い。」と、頼まれていたのだった。
その度にアティレに足を運んでいた。
今やすっかり顔見知りになった麻衣子と知寿子、そして捷子だった。
それにお互いに愛称で呼び合うようになっていた。
「寿ちゃんも、絢ちゃんも元気…???」
浩一。
「う~ん、相変わらず~。いつでも良いよ~、ウチにも遊びにお出で~。絢だってモッちゃんの顔、見たいんじゃないか~~ってね~。かかか…。」
笑いながら知寿子。
「あははは。嬉しい事言ってくれるね~チズ~。マコちゃんが困ってる~。な~。」
その浩一の声に麻衣子、
「そんな、そんな。うんうん、ウチにも是非~。狭いアパートだけど~。おっきくなってきたよ~絢~。ふふふ。」
「へぇ~。そうなんだ~。あれから3ヶ月近く、絢ちゃんの顔…、見てないもんな~。ますます可愛くなったかな~。ははは。」
にこにこと麻衣子、
「う~ん。是非どうぞ~。」




