パパと呼んで…。 vol.085 「私…。…どうしたんだろ…???」
既にベッドに横になっている侑佳。
その隣に静かに横になる直道。
数分後、体を直道に向ける侑佳。
けれども、それと同時に、侑佳に背中を見せる直道。
「ごめん…、疲れてる。」
もう既に慣れた言葉ではあった。慣れた言葉ではあったけれども、
いつも聞くその言葉に、侑佳はいつも、心が空虚になるのであった。
けれども、それも仕方ないと侑佳自身は認識していた。
流産をしてその後、中々侑佳は立ち直れずにいた。
けれども直道は侑佳を何とか励まし続け、折を見ては、
「また…作れば良い。」
と…。
2週間、そして3週間経ち、そして1ヶ月。
ある日、義母と義父が義父の仕事上、東京でパーティがあると言う事で2日間、
留守をした時があった。
その夜、いつになく侑佳はテレビで今までになく可笑しく笑っていた。
映画を観ていたのだ。今までに観た事のない映画だった。
男女の恋愛をテーマにした物語、コメディもあり、そして涙を流す場面でもあった。
隣で静かに同じ映画を観ている直道。
ふと涙が零れ、直道の肩に凭れ掛かる侑佳、
その時、直道も優しく侑佳の頭を撫でて、そのまま侑佳の右肩に腕を回し、
顔を直道の顔に向けて唇を重ねた。
そして直道は侑佳を抱えながらも、左手で侑佳の右の胸を…。
その瞬間、何故かしらいきなり侑佳は直道のその手を自分の胸から拒絶した。
そして直道に背を向けて、事もあろうか、
その場を立ち寝室に足早に駈け込んでしまったのだった。
何がどうしたのかさっぱり分からない直道、
「侑佳…。」
寝室に入った直道は、侑佳に、
「侑佳…、おまえ…、どうした…???」
ベッドサイドに腰掛けたまま、両膝の上、スカートを両手でギッシリと握り締めて…。
顔を下向きに、困惑したような声で、
「…ご…、ごめん…なさい。う…、う…。私…。…分からない。」
そんな侑佳の右肩に手を置く直道、侑佳の肩は…振るえていた。
「ゆ…う…か…。」
そのままベッドの布団を捲り、優しく直道、
「先に…、休んでなさい。」
そのままの格好でベッドに潜り込む侑佳。直道に背中を向けて…。
そして、涙を流しながら…、
「私…。…どうしたんだろ…???」




