パパと呼んで…。 vol.070 「お疲れのようですね。」
「さっきから…、良く…食べてるけど…。」
隣でビールを飲みながらの恒夫。
「だって、マスターの作るカレーはピカイチ。」
パクパク食べる藍子。
「それは、それは。いつもありがとうございます。嬉しい食べっぷりで…。」
洋風レストラン「モンブラン」のマスター、大野泰三。
銀行の近くの割とこぢんまりとしているレストランではあるが、
味の良さには評判のあるレストラン。
さっきから余りメニューに手を付けてない恒夫の顔を見て、
「彼氏は…、中々進まないようで…。」
ニッコリと笑顔で、グラスを磨く。
そんなマスターの声に、「ドキッ」と恒夫。
そんな恒夫を横目で見ながら、
「ツ~~。」
藍子。
そんな藍子をチラリと見て、
「あっ、いや。食べてますよ、はい。食べてます。」
そう言いながら、スプーン、一口、二口。
「う…、うん。うんうん。マスター。旨い、旨い。」
バンダナをして、少し灰色がかったヴァンダイクの髭の中で口をにっこりとさせて、
「お褒めに与り恐縮です。千葉様。ははは。」
そう言いながら一旦席を外す泰三。
そのまま沈黙する藍子と恒夫。
恒夫、
「あ…、あ…の…。藍…ちゃん…???あ…の…、メ…。」
その部分で声を止めて…。
黙ってカレーをパクパク食べて、水を、
「あ~~。美味しかった~。ご馳走様でし…た。」
そして、恒夫の皿の横にあるビールグラスに右手を差出し、半分ほど一気に。
「ふ~。美味し。はいはい。早く食べて、次、行くよ。」
そんな藍子の言葉に、
「はい。はいはい。…って…、えっ。えっ…???」
そして2時間後…。
カウンターの上に、両腕、その上に目を閉じて顔を置いている藍子。
そのまま顔は恒夫の方を…。
ニコニコ笑いながらマスター。
「お疲れのようですね。」
そんなマスターの声に、
「やれやれ。食うわ、飲むわ。何だったんだよ、あのメールは…。話しがあるって…。殆ど、若い子の結婚に、ぶつぶつ言って終わり。」
頭を傾げながら恒夫。
そんな恒夫の声にマスター、
「ん~~???彼氏殿~~。彼女の言わんとしている事。はてさて…。」
「さてさて。藍ちゃん。帰るよ。」
椅子から藍子を抱えながら…。
マスター、
「お願いします。お優しく。行ってらっしゃいませ。」




