パパと呼んで…。 vol.066 前を歩いている夫婦連れ。
神戸市街。買い物の帰り道、前を歩いている夫婦連れ。
男性の背中の抱っこ紐の中で眠っている…、2歳くらいの子供だろうか。
隣の女性はベビーカーを押しながら。
そして男性の左手をしっかりと握って歩いている男の子。
そんな前の子連れの夫婦を見ながら、にっこり笑顔で、
けれども少しだけ悲しそうな顔をして侑佳。
自分のお腹に左手を、そしてそんなお腹に顔を…。
そうしながらも、ほんのりと目尻から伝う涙。
それを拭って、少しだけ鼻を啜って…。
「生まれてたら、あんな風に、ベビーカーに、乗ってたかな~。それとも…、抱っこ紐の中かな…。」
前を歩く夫婦を見ながら、そんな風に小さく声にする侑佳。
そして、頭に浮かぶのが、姑の顔と、夫の顔。
そこに着電。
「あ~侑佳。私だ。今何処…???」
夫の汀直道である。
兵庫県にファミリーレストランを経営している。県内に数店舗あり、
そのオーナー、つまりは社長である。
侑佳、
「買い物した帰りよ。今、帰るとこ。歩いてる。」
「じゃ…、迎えに行こうか…???」
「ううん…。大丈夫。」
と、言葉にはしてみたが、次の言葉がない電話の向こうに、
「…あ…、じゃ…、お願いしようかな…。」
「うん。分かった。じゃ…今……???」
「うん。ここは……。」
ある事を機会に今まで以上に優しくなった夫だった。
けれども…。
直道との電話を切って侑佳、
「ふ~~。またお義母さんに…言われるか…。」
こちらも優し過ぎる義母、けれども…。
車は10分後には侑佳が歩いている場所まで到着し、
侑佳を拾い、来た道ではなく別の方向へ。
黙って車の窓から街並みを見ている侑佳。
「丁度良かった、帰ろうかなってときだったから…。」
直道。
侑佳、
「……。」
「どうした…???なんだか…、顔…???」
「…へっ…???…あぁ…、ううん。別に…。何でもないよ。ふふ…。」
「ふふ…、何でも~???ほんとかな~???」
9歳年上の夫。しかも、平々凡々の生活の自分とは掛け離れた事業家家族。
隣で運転する夫に、嘘は付けなかった。
「歩いてたらね…。」
侑佳。
「うん。」
直道。
「前に子供3人連れた夫婦連れがいたの。」
その侑佳の声に直道、
「えっ……。」




