パパと呼んで…。 vol.004 いつも通りの麻衣子。
毎晩枕を濡らし…、いつの間にか寝入っているという有り様。
日中もぼんやりしている事が多く、家族も神経を疲弊させていた。
出来るだけ麻衣子に声を掛け、親友の知寿子にも電話してもらうなりした。
もちろん、高志の一番の友人からの電話も、父の敏光が頼み込み、
心良く引き受けてくれていた。
そんな周囲の助けもあってかようやく3週間後には、
何とかいつも通りの麻衣子の顔に戻って来ていた。
仕事もその頃から再スタートして体を慣らし始めていた。
「マコちゃん。何とかいつも通りのマコちゃんに戻ってくれたようだな。」
店長の石嶺和也。
「は~い。ご心配お掛けしました。もう大丈夫ですよ~。ほら。」
そう言いながらガッツポーズをして見せる麻衣子。
「はは…はは。こりゃ頼もしい。その調子で頼むよ。」
笑顔で麻衣子。
「はい。はははは。」
「マコ~。そちらのお客様、お願い~。」
レジの方から桑名捷子の声。
「は~い。」
そして、40代風の男女のカップルを見て、
「いらっしゃいませ。」
そして夕方6時過ぎに帰宅。
「ふぁ~。疲れた~~。さすがに3週間以上のブランクはきついね~~。」
両脚をパンパン叩きながら、仏壇の中の高志の写真に両手を合わせて、
「ただいま。」
「ねぇ、マコ。こんな事、言うのも変だけど、アパート…、引き払っても良いんじゃない~???」
台所から麦茶を入れたグラスをテーブルの上に置きながら順子。
「高志さん…いなくなって、ひとりで生活するより…。」
そんな順子の言葉に麻衣子、
「だ~いじょうぶよ、ママ。…って、言うか、私…、これからもアパートで生活して行くよ。高志の匂いと、離れたくない。今は…。」
「そう…お。麻美もいるから、心細くはないと思うんだけど…。」
「だ~いじょうぶだって。それに…、甘やかされると…、逆に、その気になっちゃうよ。」
「ん~~。ママは、あんたの言う事だから、あんたの好きにすれば良いと思うけど…。…多分…。」
「多分…???あ~、パパね。」
「…うん。パパからも言われると思うけど…。」
「はは…。パパも…心配性だから…。」
麦茶を飲みながら麻衣子。