2012年、8月。都内の某所。
2012年、8月。都内の某所。公園近く…。
子連れのふたりの女性。突然、
「あ~~、ルルちゃ~ん。」
何かを見つけたのだろう、いきなり母親の右手からリードが離れて、
一匹のフレブルが歩道を飛び出した。
それを追い掛ける少女。その途端、
「ダメ―――――ッ!!!」
と、言う声を女性が発したかと思うと、ひとりの男性がその少女を追い駆けて…。
その後に急ブレーキ。
鈍い音、「バン。」
転がる男性。少女は道路の真ん中で倒れたまま…。
その後、救急車。
キャビネットの上の電話が鳴る。
「はいはいはいはい。お待たせしました、中川ですけど…。」
中川順子。聞き覚えのない声。順子、
「あっ、はい。中川高志はウチの…。…えっ!!!」
いきなり鼓動が高鳴る順子。
「…そ…そんな…。」
いきなり口の中が苦く…。口を塞ぎ、目が潤む。声が出ない。
電話の向こう、
「奥さん、奥さん。」
警察である。
涙を流しながら、
「あっ…。はい。はいはい…。……。」
都内のフラワーショップ、「アティレ」
店内でお客様に贈り物の花のイメージを聞いている中川麻衣子に、
レジの店員奥寺知寿子が、まず客に、
「いらっしゃいませ。すみません。マコ、お母さんから電話。早く、早く。何だか…緊急みたい。後…、私…。だから、早く、早く。」
麻衣子、
「へっ…???あぁ…、はい。」
お客様に、
「申し訳ありません。じゃ。」
知寿子に合図して、
「じゃ、チズ~…お願い。」
「どうしたの~ママ???」
電話口で…。
電話の向こう、順子、
「マコ。良い。落ち着いて聞いて。」
「はぁ~???」
「高志さんが…、高志さんが…。」
「なに…、高志がどうしたのよ???」
順子、また口の中のものを飲みこんで…、
「高志さんが…、交通事故。」
「へっ…???何言って…。」
声を絞るように順子、
「ばか。高志さん、交通事故。救急車で運ばれて、病院に運ばれたけど…。んん…。あぁ…。手遅れで…。」
涙流しながら順子。
麻衣子、
「…なに…、それ…。悪い冗談…。ちょ。ちょっ…、と…、マ…マ。」
すぐに蒼白になる麻衣子。
「病院どこっ!!!!」
そのまま病院へ…。
そして…霊安室。