65.バレエ鑑賞2
劇場に着くとアルフレッド達はロビーで一息ついた。
「バレエ鑑賞なんて、何年ぶりかな。バレエは好きなんだけど、なかなか一人で劇場に行くというのも敷居が高くてね。突然のことで驚いたけど、声をかけてくれて嬉しかったよ。ありがとう、アルフレッド」
礼を言うアビントンに、アルフレッドは肩をすくめて言った。
「アビントンさんがバレエを好きでよかったです」
「クラシックコンサートでなくて良かったよ。寝るかもしれなかったからな」
両手を上げて首をすくめるアビントンを見て、イーディスが目を丸くした。
「アビントン様は冗談がお好きなのですね」
イーディスがそう言った瞬間、『クウウッ』とお腹が鳴る音がした。
「おっと、失礼! どうやら腹ごしらえが必要なようだ」
アビントンは肉付きの良い腹を撫で、照れ笑いを浮かべた。
「イーディス様、よろしかったら軽食にお付き合いいただけますか?」
「え、ええ」
「アビントンさん、私とフローラは先に席に向かいます」
「ああ、また後で」
アビントンはチケットを右手に持ち、アルフレッドにウインクした。
劇場のカフェに入ると、アビントンは出入り口付近の席をとり、イーディスの椅子を引いた。
「……サンドイッチとレモネードがあるようですね。両方頼んでよろしいですか?」
アビントンはメニューを見て、イーディスに尋ねた。
「はい……。あの、先ほどはありがとうございました」
イーディスは机を見ながら、小さな声で言った。
「何のことです?」
アビントンは茶目っ気のある笑みを浮かべて、首を傾げた。
「あの……」
「おなかが空いていたので、付き合っていただけて嬉しいです」
サンドイッチとレモネードが運ばれた。
サンドイッチをつまみながら、イーディスがぽつりと言う。
「神官長と伺って、緊張しておりました」とイーディスは遠慮がちに微笑んだ。
「名前だけです」とアビントンも笑った。
人の好い笑みをうかべるアビントンに、イーディスはそれ以上何も言えなかった。
お互いに無言でサンドイッチとレモネードを口に運ぶ。食べ終わると二人は急いでチケットに書かれた席に向かった。




