64.バレエ鑑賞
バレエ鑑賞の当日、外は良く晴れていた。
昼食後にアルフレッドが言った。
「アビントンさんのところに寄ってから劇場に行くから、ちょっと早いけど三時過ぎには屋敷を出ようと思っています」
「アビントンさんも一緒に行くんですか?」
フローラが問いかけるとアルフレッドは頷いた。
「アビントン様とは、どのような方ですか?」
イーディスが笑顔でアルフレッドに尋ねる。
「ああ、アビントンさんはこの町の神官長だよ」
「まあ! そんな方が、ご一緒に!?」
イーディスの目がきらめいた。
***
「アルフレッド様、馬車の用意ができました」
「ありがとうトレヴァー」
トレヴァーが用意したのは、二頭立てでボディには四人乗れる箱型の豪華な馬車だった。馬車ではフローラとイーディスが隣り合わせで座り、向かい側にアルフレッドが腰かけた。
馬車が走り出す。
「アビントン様にお会いするのが楽しみですわ」
「彼は面白い人ですから、きっとイーディス様との話も弾むでしょう」
「楽しみですわ」
「……」
目を輝かせているイーディスの隣で、フローラは何も言わずに微笑んでいた。
神殿に着くと、神官がアルフレッド達を出迎えてくれた。
「アルフレッド様、ようこそおいでくださいました。神官長が来るまでもう少々お待ちいただけますか?」
「ああ、馬車の中で待っていよう」
アルフレッドは出迎えてくれた神官に言うと、両手を組んでお腹の上に乗せた。
しばらくするとグレーのジャケットを着たアビントンが現れた。
「待たせたな。バレエ鑑賞なんて行ったことがないが……この格好で大丈夫そうか?」
「大丈夫だよ。ありがとう、アビントンさん」
アビントンを見て、イーディスは目を丸くした。
「……気さくな方ですのね、神官長は」
イーディスがアルフレッドにそう言うと、アルフレッドは「ええ」と頷いた。
「アビントンさん、どうぞ馬車にのってください」
「ああ。失礼します」
アビントンは馬車に乗り込むとアルフレッドの隣に座った。
「途中で寝てしまわないか心配だよ」
アビントンが苦笑いをしながら言うと、イーディスが微笑んで言った。
「まあ、アビントン様は冗談がお好きですのね」
「アビントンさん、こちらがイーディス嬢です。伯母の知り合いです。」
「はじめまして。イーディス・ライトフットです」
「初めまして。アビントン・モーリスです。こんなにお美しい方と一緒だなんて、聞いていませんでした」
アビントンは、イーディスのオレンジがかった金髪と、茶色い瞳に目を奪われていた。




