63.準備
食後、居間でのんびりしているアルフレッドにトレヴァーが話しかけた。
「アルフレッド様、少しよろしいでしょうか?」
「ん? なんだい? トレヴァー」
トレヴァーは真面目な面持ちでアルフレッドに言った。
「バレエ鑑賞の件ですが、女性が二人いらっしゃるのにエスコートがアルフレッド様だけというのはいかがなものかと。もう一人男性をお呼びしたほうが良いと思うのですが」
「そんなの気にしなくていいよ」
アルフレッドは椅子のひじ掛けに片肘をついて頭を支えながら、あくびをした。
トレヴァーは左眉をピクリと上げて、もう一度口を開いた。
「家の中とは違い、多くの方がいらっしゃる場です。もう少しお考えになったほうがよろしいかと」
アルフレッドは肩をすくめた。
「そうか……。じゃあ、トレヴァーが来てよ」
いたずらっぽい目でアルフレッドがトレヴァーを見た。
「私には家の仕事があります。それに私は使用人です」
トレヴァーはそっけなく答えた。
「そっか。他に誘える人と言ったら……」
アルフレッドは少し考えてから、手紙を書きだした。
手紙を書き終えると、トレヴァーに言った。
「この手紙をアビントンさんに渡してもらえる? 至急」
「……承りました」
アルフレッドは去って行くトレヴァーを見つめ、ため息をついた。
「やっぱり、人が来るとトレヴァー一人じゃ手が回らないなあ。かといって、新しく人を雇うのも面倒なんだよな……」
アルフレッドは頬杖をついて、もう一度ため息をついた。
***
夜遅く、アルフレッドが図書室で本を読んでいるとトレヴァーが戻ってきた。
「アルフレッド様、アビントン様からお返事をいただいております」
トレヴァーは息一つ乱していないが、かかった時間を考えると相当急いで手紙を届けたに違いない。
「ありがとう、トレヴァー」
アルフレッドは椅子に座ったまま手紙を受け取り、封を開けた。
「うん、快く了承してくれたね。アビントンさんもバレエ鑑賞に来てくれるって」
「それでは、明日は教会を経由して劇場に行くということでよろしいでしょうか」
「そうだね。それでお願い」
「かしこまりました」
トレヴァーはお辞儀をして図書室を出て行った。
「明日はみんなで楽しめると良いな」
アルフレッドは伸びをしてから立ち上がると、自分の部屋に向かった。




