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【連載】人形令嬢は悪魔紳士に溺愛される  作者: 茜カナコ


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62/64

62.夕食

 お茶の時間を終えるとアルフレッドは「また、夕食の際にお会いしましょう」と言って、中庭から去って行った。

 残されたフローラとイーディスはお互いに無言で見つめあい、礼儀正しく微笑んだ。


「フローラ様は、アルフレッド様のどのようなところに惹かれたのでしょうか?」

 イーディスが単刀直入に聞いてきたので、フローラは面食らった。

「え、ええと。優しいところでしょうか?」

 フローラの言葉にイーディスは頷いた。

「そうですか。……優しい方は誤解されやすいですからね」

 イーディスが口角を上げる。


「優しさと好意をとりちがえるのもよくあることですから」

 付け足すようにイーディスが言った。

「……え?」

 フローラがイーディスの目を見ようとすると、イーディスは空を見上げて微笑んでいた。


「では、ごきげんよう」

 イーディスが中庭を後にした。

 一人残されたフローラは椅子に腰かけ、ため息をついた。

「私、どうすればいいのかしら……」

 フローラはとりあえず部屋に戻ることにした。

***


 フローラが部屋で本を読んでいると、ドアがノックされた。

「フローラ様、夕食の準備が整いました」

「まあ、もうそんな時間ですか? ありがとうございます、トレヴァー」


 フローラが食堂に着いた時にはアルフレッドとイーディスが、にこやかに話をしていた。

「こんばんは、フローラ」

「ごきげんよう、フローラ様」

「遅くなってしまって申し訳ありません」

 フローラは頭を下げながら、アルフレッドの隣に座った。


「明日、バレエを見に行こうと言われたんですよ」

 イーディスが得意げにフローラに告げる。

「ええ、三人で行きましょう」

 イーディスは右眉をピクリとひきつらせたが、口角はあげたままアルフレッドに言った。

「……私、アルフレッド様と二人で行くのかと思っておりましたわ」

「楽しいことは、みんなで体験したほうが良いと思ったのですが?」

 アルフレッドは不思議そうな表情をした後、イーディスに向かって微笑んだ。


「あの、お二人で行かれてはいかがですか? 私は家にいても良いですし……」

 フローラの言葉が終わる前に、アルフレッドが言った。

「まさか! 婚約者を置いて女性と二人で出かけるはずがないでしょう?」

 そう言って、きょとんとするアルフレッド。アルフレッドから視線を外し、ちらりとフローラを見たイーディスの顔が一瞬だけれども苦々しくゆがんだのをフローラは見なかったことにした。

 

 アルフレッドは肉を一切れ食べてから、また話し始めた。

「バレエを見るのは久しぶりです。イーディス様、バレエはお嫌いではないですよね?」

「時々見に行きますわ」

 イーディスは綺麗な笑みを作ってアルフレッドに答えた。

「よかった。ご婦人の喜ぶことが思いつかなくて」

「フローラ様もご婦人だと思いますが?」

 イーディスは、ほんの少し含みをもった口調で言葉をはさんだ。

「ああ、そうですね!」


 アルフレッドは「今気づいた」と言う様子で目を丸くすると、フローラにウインクをした。

 フローラは口角を上げて首を傾げた後、何も言わずにスープを口に運んだ。


 それを見ていたイーディスは、笑いをこらえるような表情でワインを飲んでいた。


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