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【連載】人形令嬢は悪魔紳士に溺愛される  作者: 茜カナコ


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57.昼食

 書斎でアルフレッドが仕事をしていると、ドアをノックする音に続き、トレヴァーの声がした。

「アルフレッド様、昼食の準備ができました」

「分かった。ありがとうトレヴァー」

 アルフレッドは書類仕事を切り上げて、椅子に座ったまま伸びをした。


「さあ。イーディス様に声をかけるか」

 アルフレッドは立ち上がり、書斎を出るとイーディスのいる客間に向かった。


 客間のドアの前でアルフレッドは姿勢を正し、空咳をしてからドアを軽くたたいた。

 アルフレッドは、よそいきの声でドアの向こうに話しかける。

「イーディス様、アルフレッドです。昼食の準備が出来ました」

 少し待った後、イーディスがドアを開けてアルフレッドに微笑みかけた。

「まあ、アルフレッド様! わざわざいらっしゃらなくても……」

「まだ食堂をご案内しておりませんから」

「……そうですわね」

 イーディスは口元を手で隠し、目を細めた。


 アルフレッドも愛想の良い笑みを浮かべて、イーディスに話しかける。

「午後になりましたら屋敷のご案内をしてもよろしいでしょうか?」


「是非お願いいたしますわ」

「承りました。ですが、まずは昼食を」

「ええ」

 アルフレッドはイーディスをエスコートして食堂に向かった。


 アルフレッドとイーディスが食堂に着くと、すでにフローラが席についていた。

 アルフレッドはフローラに微笑みかけた後で、イーディスを席まで案内した。

 イーディスが席に着くと、フローラはイーディスに声をかけた。

「お疲れではありませんか? お食事が終わられたら、もう少し休まれますか?」


「いいえ。食後にはアルフレッド様が屋敷内を案内してくださる予定ですから。ねえ」

 イーディスが親密そうな笑みを浮かべアルフレッドを見る。アルフレッドは口角を上げて「ええ」と答えた。


 トレヴァーがサンドイッチやスープ、サラダと言った軽い食事をそれぞれの席の前に並べた。


「フローラと一緒に、屋敷の中をご案内しようと思っています」

 イーディスの顔から、一瞬笑みが消えたのにフローラは気付いた。イーディスは冷たい目でフローラを一瞥し、アルフレッドに視線を移し優しい笑みを浮かべた。

「まあ、なんてお優しい婚約者さまでしょう。よろしくお願いしますね、フローラ様」

 フローラは笑みを浮かべるイーディスを見て、さっきの表情は気のせいだったのだろうか、と戸惑った。


「フローラ、スープが冷めてしまいますよ?」

 アルフレッドの言葉を聞き、フローラはハッとして、口角を上げ頷いた。

 フローラが横目でアルフレッドを見ると、アルフレッドはイーディスの表情の変化に何も気づいていない様子でスープを飲んでいる。


「午後が楽しみですわ」

 イーディスはそう言って、サラダを口に運んだ。


「馬車での移動は大変だったでしょう?」

 アルフレッドがイーディスを気遣うように優しい口調で尋ねた。

「近くはありませんでしたけど、遠いというほどでもないですから。問題ありませんでしたわ」

 イーディスは口元に手を当てて微笑んだ。


「それは良かった」

 アルフレッドはそれ以上何も言わず、サンドイッチをつまんだ。


 少しの静けさの後、イーディスがさりげない風を装ってアルフレッドに尋ねた。

「アルフレッド様とフローラ様は、婚約をしてどれくらいたつのですか?」

「ええと……半年、かな?」

「そうですか。それですぐに一緒に暮らし始めたのですか?」

 イーディスが探るような眼でアルフレッドをちらりと見た。


 アルフレッドは首を傾げたまま口角を上げ、イーディスに説明した。

「ええ。私が、フローラと離れているのは寂しくてたまらないとわがままを言ったんです」

 アルフレッドはフローラにウインクをして笑った。

「ね、フローラ」

「……はい」

 フローラは赤くなってうつむいた。(アルフレッド様は、なんて嘘つきなんだろう)とフローラは内心あきれていた。


「まあ、それなのにジェリー様にご報告もしなかったのですか?」

 イーディスは目を丸くしてアルフレッドとフローラを交互に見た。

「……静かに暮らしたかったんですよ」

 アルフレッドはイーディスから目をそらして言った。


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