53.準備
「ただいま。ああ、疲れた」
「ありがとうございました。アルフレッド様。あんなにたくさんのドレスを……」
「まだ足りないくらいだよ」
買い物を済ませたアルフレッドとフローラはぐったりとした表情で居間に向かった。
「アルフレッド様、フローラ様、お茶はいかがでしょうか?」
「ああ、ここにいるから用意してくれるかい?」
アルフレッドは今のソファにどっかりと腰を下ろして、トレヴァーに言った。
「承りました」
トレヴァーが立ち去ろうとすると、フローラが後を追った。
「私も手伝います」
「フローラ様もこちらでお待ちください」
「急に『フローラ様』なんて、どうしたんですか? トレヴァー様?」
「トレヴァーとお呼びください、フローラ様。伯爵の婚約者なのですから」
「え、でも……」
戸惑うフローラに、トレヴァーは愛想のない表情で説明した。
「明日からはお客様がいらっしゃいますよ? 今から慣れておいた方が良いと思いますが」
「そうだな。さすがトレヴァー」
アルフレッドが笑顔で拍手している。
アルフレッドがソファの隣をぽんぽんとたたき、フローラに隣に座るよう促した。
落ち着かないフローラと微笑むアルフレッドに、トレヴァーはお辞儀をして言った。
「それでは、少々お待ちください」
トレヴァーはいつものように静かに立ち去ったが、馬車と荷物の片づけ、紅茶の準備と大忙しだ。
フローラは申し訳ないような気持でソファに座り、両手を膝の上で重ねた。
しばらくすると、トレヴァーがクッキーと紅茶持って来た。
「大変お待たせいたしました。申し訳ありません」
「ありがとうトレヴァー。そこにおいてくれる?」
アルフレッドは目の前のテーブルを示し、少し首を傾げた。
「かしこまりました」
ココアとバニラ、バターのクッキーがアルフレッドとフローラの間に置かれたあと、ティーカップがアルフレッドとフローラの前に置かれ、紅茶が注がれた。
「ありがとうございます」
フローラがクッキーと紅茶を見つめていると、アルフレッドが先にクッキーに手を伸ばし、一枚かじった。
「うん、おいしい。フローラも食べないかい?」
「えっと……いただきます」
フローラもクッキーを一枚手に取り、口に運んだ。
二人がクッキーと紅茶を楽しんでいると、トレヴァーがアルフレッドに話しかけた。
「フローラ様のお部屋はいかがいたしましょうか? 今のメイド部屋のままでは不都合が生じるかと」
「ああ、失念してたよ! そうだね……どうしようかな? そうだ、僕の部屋の隣が空いていただろう? そこを使ってもらおう!」
「え? それは……」
「だって、君は僕の婚約者なんだから、ちゃんとした部屋をつかわなきゃ」
「……はい」
「それでは荷物を移動しましょう。フローラ様、手伝いますのでご指示を」
「えっと……はい。それでは、お願いします」
フローラは飲みかけの紅茶を置いて、メイド部屋に向かった。
「紅茶くらい、ゆっくり飲めばいいのに」
アルフレッドはフローラの後姿を見送って、苦笑した。




