2/15
1
「賭けをしない?」
不意に彼女が言ったのは、そんな一言だった。
ーーーーー
「じゃあな!」
「また明日〜」
そんな声に返事もせずに背を向け、足早に家へと向かう。
いつもなら友達とだべってから、ふらりと街を歩いて家に帰るのだが。
生憎と、今日はそんな余裕はなかった。
__残念だけど、お前らにはもう「明日」はないから。
頭に浮かんだそんな台詞を口に出す程は気障な人間ではないつもり。
と、誰にともなく言い訳をしながらただ歩く。
まあそもそも、「明日」がないのは僕とて同じこと。
家の扉を開けながら、そう呟いた。
_____何故って?それは、後でのお楽しみ。
手早く着替えやら何やらを済ませ、小さめのリュックサックにスマホとノートPC、それから財布を突っ込んで、
「ちょっと出かけてくる」
と母さんに声をかける。
__もうこの家に入ることも、母さんの顔を見ることもない。
途端に、昨日までに固めたはずの決心が大きく揺らいだ。
……揺らぐ?
あまりの自分の弱さに、思わずフ、と笑いが零れる。
__こんな世界いらないって、消えてしまえって、あれだけ願ったじゃないか。
グッと拳を握りしめ、玄関の扉を開ける。
「じゃあね」
呟いた別れの言葉は、誰にも届かずに風に消えた。




