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共に手を取りあおう

 ある日のこと、ゲイルとネデスは口喧嘩を広げていた。

 「何よ!それじゃあ私の知識が間違っているっていうの!?」

 「ああそうだ!お前の知識何ぞケイローンに劣る!」

 「そんなこといったら、あんたの科学知識だってアインシュタインに負けているでしょ!」

 「何を言うかと思えば、そのアインシュタインだって私という基礎があったから稀代の科学者になれたようなもの。」

 「そんなこといったら、基礎を見つけた人が絶対的になっちゃうじゃん!」

 「それくらい、原点を見つけたものの偉業は大切なのだ。少しはその重みを知るんだ。」

 「何よ、医学は専門外のくせに。それに、ケイローンの医学知識なんて、時代錯誤も甚だしいわ!」

 「それはナイチンゲールとてそうだろう。科学のことなんて素人以下のくせに。」

 「そういうネデスなんて、大昔の知識のまんま成長していないくせに。」

 「何を言う。貧乳超人になってからは現代の知識もしっかり理解しておる。その証拠に、我々の時代にはなかった浮力を利用してこの間のおっぱい魔人を倒しただろう。」

 「あっ、そういうこと言っちゃう?だったら言わせてもらうけど、私だって現代医学の知識を網羅させてもらっているわ。ほんと、私の死因がブルセラ病だって解明してくれた未来の後輩達には感謝しているわ。やっぱり、自分の死因はしっかり知っておきたいからね。」

 「なんだ、医者の不養生とかいう奴か?だらしない。」

 「あんたねぇ、人間80過ぎれば内臓機能だってボロボロになるの。それに、当時は家畜の衛生管理だってしっかりしていなかったんだから死んだのは必然みたいなものだったの!当時を生きていないくせに偉そうに言うな!」

 磨那は二人の親睦を深めるために黙っていたが、流石に限界を迎え、堪忍袋の緒が切れる。

 「二人とも、いい加減にして!麗雄君が集中できないでしょ!」

 「磨那、ゴメン…」

 「ところで、その麗雄氏は何故集中しているのだ?」

 ネデスは謝ることなく磨那に質問する。

 「麗雄君は、またおっぱい魔人に変身できるように努力しているの。」

 「ちょっと磨那、どういうつもり!?」

 ゲイルは驚く。

 「あのね、お姉ちゃんだけに大変な思いをさせたくないの。だから僕も戦えるようになりたいの。」

 「子供ながらの無謀な努力だな。」

 「ちょっとネデス、そんな言い方ないんじゃないの!」

 麗雄の言葉に対して冷たく言い放つネデスにゲイルは怒る。

 「二人とも煩い!少しは黙っていて!私は子供の頑張りを応援したいの!」

 「そこまで言うのならば仕方がない。」

 「わかったわ。だけど、無茶しちゃだめだからね。」

 磨那に怒られたネデスとゲイルは黙る。

 「麗雄君、ゆっくりでいいから頑張ってみよう。」

 「うん!」

 麗雄は一生懸命集中しておっぱい魔人の姿になろうとするが、

 「ダメだよ、やっぱりなれない。」

 おっぱい魔人の姿になるどころか、そのエネルギーの気配を感じ取ることすらできなかった。

 「何が原因なんだろう。」

 磨那は悩む。

 〝磨那さん、ここから南東25キロ先におっぱい魔人の反応がある。至急向かってくれないか。〟

 「わかりました。すぐ向かいます。麗雄君、ここで待っていてね。」

 「うん!行ってらっしゃい。」

 磨那に連絡が入り、磨那は出動する。


 「ふっはっはっ!こんな所にまだ始末対象がいたとはな!」

 巨大な棍棒を持つおっぱい魔人は笑いながら人々を襲っていた。

 「そこまでよ!」

 少女を襲おうとしていたおっぱい魔人に対して磨那はウィンドレイダーの体当たりで阻止する。

 「貴様!そうか、貴様が我らムネトピアに対して反逆行為を行っているレジスタンスのまな板女か!俺はムネトピアのアイアンスインガー、貴様を倒してムネトピアの幹部となるのだ!」

 アイアンスインガーは高らかに名乗る。

 「行くよ、ネデスさん。サファイア・スプラッシュ!」

 磨那は青い光に包まれてナイムネデスに変身する。

 「磨那氏、私にはアクアバトンという杖がある。それを使うのだ。」

 「わかった!アクアバトン!」

 ナイムネデスは青い錫杖、アクアバトンを出現させて手に取る。

 「はっはっはっ!女らしくない貧相な体系に見合った細くて小さな棒だな!俺のとっておきの棍棒をくらえ!」

 アイアンスインガーの棍棒から放たれる強烈な一振りをナイムネデスはなんとか避けるが、余力で発生した風圧に怯む。

 「くっ!なんてパワーなの!」

 「あり得ない!科学的にあり得ない!」

 ナイムネデスは立ち上がる。

 「どぉら!くらえ!」

 アイアンスインガーは棍棒を振るう。

 「もう、見ていられない!エメラルド・ラピッド!」

 ゲイルは認識コードを宣言し、ナイムネデスの変身を強制解除し、ナイムネデスは一糸まとわぬ姿となり、緑の光に包まれる。

 「ちょっとゲイル!これ何!?」

 「ゴメン!緊急事態だから手短に言うけど、原初のフラットストーンは使い手を自由なタイミングで私に変身させることができるの。とにかく、目眩ましをしている間に今は民間人の避難を!」

 「うん!」

 ナイムネデスはナイチチゲイルに変身し、更にアイアンスインガーに対して砂嵐を発生させて目眩ましをし、襲われていた人々を避難させる。

 「くっ、逃げられたか!まあいい、それより次の場所だ!」

 アイアンスインガーは黒服兵を連れながら次の場所に移動する。

 「皆さん、ここならもう安全ですよ。」

 磨那は変身を解除し、襲われていた人々をウォールストリートに案内する。

 「磨那さん、この人達がおっぱい魔人に襲われていた人々ですか?」

 「はい、どうやらあのおっぱい魔人、アイアンスインガーはこの子達を狙っていたみたいです。」

 魔人は10人程度の小学生くらいの女子達を紹介する。

 「年齢は見たところ、私の娘くらいの年齢か。ムネトピアの奴らめ、よくもこんな子供達に対して酷いことを…」

 奏は珍しく怒りを見せる。

 「助けていただきありがとうございます。僕達はあの場所でずっと隠れていましたが、まさか見つかってしまうとは。」

 「そうですか。私はこのレジスタンスのリーダー、真盾奏と申します。もし不都合がなければこの要塞、ウォールストリートの中で暮らしませんか?最低限安全は保障いたします。」 

 「本当ですか!?ありがとうございます。」

 子供達を守っていた大人達は奏に感謝する。

 「それから、彼女は私達ウォールストリートの希望、板野磨那さん。ムネトピアに唯一対抗できる力、貧乳超人に選ばれた方です。」

 「磨那さん、先程は救っていただきありがとうございます!」

 大人達は磨那に礼を言う。

 「では奏さん、私は麗雄君の所に戻ります。」

 「その方がいい。麗雄君もきっと心配している。」

 「ありがとうございます。失礼します。」

 磨那は司令室から出て自室に戻る。

 「麗雄君、ただいま。」

 「お姉ちゃん、大丈夫だった?」

 「なんとかね。それより、麗雄君の方はどう?」

 「ごめんなさい、まだ変身出来なそう。」

 「謝らなくていいんだよ。平和なのが一番なんだから。」

 「うん。」

 磨那と麗雄は和やかに会話をする。すると、

 「ナイチンゲール、何故勝手に変身を変えた!その後所為で逃げられただろう!」

 「何よ!あの時は人命救助が優先でしょ!それに、何が非科学的よ!そもそも貧乳超人になっている時点で科学もへったくれもないでしょ!」

 「何を言う!私の力の源は科学!あんな棍棒一つで私の力を否定させるわけにはいかないのだ!」

 「もういい加減にして!何時まで喧嘩していれば気が済むの!」

 「それは、私の科学を否定する奴らが悪い。」

 「特にネデスさん。あなたはあまりにも身勝手過ぎ。もっと人との協調性を持って。」

 「それはなんだ?つまり科学を否定する愚か者に付き従えと言うのか?」

 「もういい、次の戦いではネデスさんは連れていかない。私とゲイルでどうにかする。」

 「まったく、何をムキになっているのやら。」

 ネデスは磨那の言葉を聞いて呆れる。すると、

 〝磨那さん、先程のおっぱい魔人の反応がどんどん近づいてきています!〟

 「わかりました。行こう、ゲイル。」

 「あっ、うん…」

 磨那はオペレーターからの連絡を受け、ネデスサファイアを机に置いたまま、ゲイルエメラルドを持って出る。

 「おい、こら。」

 ネデスの言葉は磨那には届かなかった。

 「オジさん、寂しい?」

 「麗雄氏、私が寂しいと?」

 「だって、僕達と一緒にお留守番でしょ?」

 「ふん、あいつらが理解力が不足しているのが悪い。」

 「オジさんって、すっごい頭がいいんでしょ?」

 「ああ、数学者でもあり、物理学者でもあるからな。」

 「じゃあさ、僕がどうして怪物になっちゃったのか、今は怪物になれないのか、わかる?」

 麗雄は純粋に質問する。

 「それはムネトピアによって内部の遺伝子ごと変異されたからだろう。血液検査の結果は私も見せてもらった。」

 「じゃあなんで今は怪物になれないの?」

 「それは、何らかの力が働いていて…」

 「ねえ、それって科学とか関係あるの?」

 「んな!?いきなり何を!」

 「だって、お姉ちゃん言っていたよ。僕は呪術で怪物にされたって。それに、僕があの姿になれないのは、僕の中であの姿になることを嫌がっているからだって。だから、科学は関係ないんだって。」

 「ならば、何故わかっていながらそんな質問をした?」

 ネデスは疑問に思っていた。

 「アイアンスインガー、そこまでよ!」

 その頃、磨那はアイアンスインガーの所にたどり着いていた。

 「のこのこと現れたか。俺のこの鉄の棍棒一つ挟めない胸のくせに。」

 アイアンスインガーはゲラゲラと笑う。

 「行くよ、ゲイル。エメラルド・ラピッド!」

 磨那はナイチチゲイルに変身する。

 「お前の首はグラメニア様への贈り物にしてやる!やれ、黒服兵!」

 アイアンスインガーは黒服兵をけしかける。

 「これでもくらえ!」

 黒服兵はレールガンを放つが、ナイチチゲイルは華麗に避け、レールガンによる砲撃は他の黒服兵を消し炭にする。

 「ちくしょう、なんであんなにすばしっこいんだ!」

 ダガーナイフを振るう黒服兵は攻撃を軒並み避けられて苛つく。

 「そうか!胸が無いから空気抵抗が無くて素早く動けるんだ!」

 黒服兵は納得するが、

 「さっきから好き勝手言ってくれたわね!来て、ウィンドレイダー!」

 ナイチチゲイルは黒服兵に明確な怒りを見せてウィンドレイダーで轢き倒す。

 「ちっ、所詮は胸に対する執念の低い奴らか。だが、このアイアンスインガーはあいつらと同じだと思うな!」

 アイアンスインガーは棍棒を振るい、風圧でナイチチゲイルを攻撃する。

 「オジさんは、本当はどうしたいの?」

 「どうしたいと言われても、貧乳超人などと大層なことを言っても所詮はただのAI、正義と平和に対する思いとて、ただのプログラミングかもしれない。」

 「たとえそうだったとしても、オジさんの中にある何かをしたいって気持ちは、オジさん自身が自分で考えたことなんだよ。」

 「自分で考え、思ったこと…麗雄氏よ、お前は脚の速さに自身があるのだろう?」

 「うん。」

 「一つ頼まれてくれないか?」

 「うん、わかった。」

 麗雄はネデスからある頼まれ事を受ける。

 「さっきまでの威勢はどうした!」

 アイアンスインガーの攻撃にナイチチゲイルは近づくことすら出来ずに防戦を強いられていた。

 「くっ、あいつがいなくたって…」

 「ゲイルだって、本当は気づいているんでしょう、ネデスさんと仲直りして協力しなくちゃいけないって。」

 「それは…」

 「だったら素直になろうよ!」

 ゲイルはナイチチゲイルに諭される。その時、

 「ナイチンゲールよ、お前を愚弄したこと、この場をもって謝りたい!済まなかった!だから、共に手を取りあおう!」

 「ネデス…うん。私も、老害みたいな態度をとってごめんなさい!」

 ゲイルとネデスは互いに謝る。

 「お姉ちゃん、僕ちゃんとお姉ちゃんの役にたったよね!」

 麗雄は走りながら近づく。

 「麗雄氏よ!今のお前なら、真の力を発揮できるはずだ!頑張れ!」

 ネデスは叫ぶ。

 「やってみる!もう一度、初めてお姉ちゃんに遭った時の、あの感覚を!…今だ!走哮覚醒!」

 麗雄は叫び、おっぱい魔人に姿を変える。

 「これが僕のおっぱい魔人としての力、レオパルタクスだ!」

 「ふむ、やはり変身出来たか。ほれ磨那氏よ、麗雄氏との二人でのコンビネーションを見せるのだ。」

 ネデスはナイチチゲイルに指示を出す。

 「麗雄君、一緒に戦おう!ウィンドレイダー!」

 ナイチチゲイルはウィンドレイダーに乗り、レオパルタクスと交差するように走り続け、アイアンスインガーは翻弄される。

 「速い!まるで追い着けない!」

 「麗雄君、最後は私に任せて!平和を願う貧乳超人が、お前を悪意を消し去って見せる!ラピッド・インパルス!」

 ナイチチゲイルの必殺の刺突攻撃をアイアンスインガーは真っ正面から受ける。

 「馬鹿な!俺のこの鉄棍棒を挟める胸に出逢えぬまま、俺は死ぬのか!グラメニア様~!」

 アイアンスインガーはラピッドスティンガーで貫かれた身体から光を放ち、爆散する。

 「お姉ちゃん、僕頑張ったよ!」

 磨那と麗雄は変身を解除し、麗雄は磨那の胸に飛びつく。

 「さ、一緒に帰ろう。」

 磨那と麗雄は手を繋いでウォールストリートに戻る。

 「麗雄君、変身出来るようになったんだね。」

 「うん。オジさんが教えてくれたんだ。」

 「オジさん?」

 「私のことだ。」

 「ネデスさん、一体どんなアドバイスをしたのですか?」

 「何、簡単なことだよ。おっぱい魔人にはそれぞれ胸への特別な執念がその姿になるトリガーとなる。麗雄氏の場合は、磨那氏の胸に対して発生する欲情が、変身のトリガーだったというわけだ。」

 「なんだろう、麗雄君が変身出来たのは喜ぶべきなのに、なんか複雑な気分…」

 ネデスから言われた説明を聞き、磨那はしょぼくれていた。

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