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転移使い魔の俺と無能魔女見習いの異世界探検記  作者: そら・そらら
第6章 ファンタジー・オブ・ザ・デッド

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6-9 死体を見張る

 ゾンビを作り出す魔法がチェバルの家に代々伝わる秘術というならば、それは当然外に漏らすわけにはいかない。魔法に関する資料は、外部の手が及ばない場所に置かれるだろう。

 例えばこの屋敷だ。チェバルの所有物だから部外者が自由に立ち寄ることはない。


 他にそういう場所はあるだろうか?


 この街の公共施設の半分はチェバルの人間が支配していた。例えば図書館も。

 しかしあそこは頻繁に支配者が変わっている。そしてその度に中の図書はチェックされて、問題があれば自家に都合のいいものに差し替えられてきたう。たとえ禁書棚の中身でさえも。


 となれば、永遠に自分の家が支配している建物は他にあるだろうか。



「この街にはふたつの学校がある。そのことは覚えてるか?」

「え? うん。それぞれの家が持ってるんだよね……」


 俺達がこの街に来たとき、情報収集のために酒場で飲んでいたおっさんから聞いた話だ。

 ふたつの家が昔から運営している学校は、それぞれで優秀な人材を育てつつ、自分の家の派閥に組み込むために存在している。

 そしてチェバルの学校は、永遠にチェバルの人間が管理する仕組みになっている。学校であれば図書室だってあるだろう。あるいは、秘密の隠し場所なんかも存在するかもしれない。


「よし、ターナさんに話してみよう。学校の中を探す許可ももらわないとな」



――――――――――――――――――――



 その頃、リゼ以外の三人もまた独自に調査を続けていた。とはいえできることは限られている。


「今のところ、リビングデッドが復活した事件は三件起こっている」


 宿の部屋で、カイがフィアナとユーリにこれまでの状況を説明、整理する。まずは現状の把握から。



「そのうちひとつは、あの夜に復活したリビングデッドの一体だ。チェバルの屋敷が落ちて動きが止まったリビングデッドがその二日後の夜に動いた」


 まだ死体の片付けが始まったばかりで、路上に放置されていた死体である。それが一体だけ、ゆっくりと起き上がった。夜間の巡回をしていた二人組の兵士がこれを目撃、すぐさま槍で頭部を刺して無力化した後、部隊長に報告。やがて城主の一族までそれが伝わる。


「後の二体はそれぞれ、あの夜の後に亡くなったこの街の住民だな。老衰で亡くなったおじいさんと、病気で亡くなった女性」

 おじいさんは大往生だったし、女性は前から重い病に苦しんでいた。亡くなったことは悲しいこととはいえ、それぞれ事件性は特にない。生前はどちらも一般的な市民で、近所の知り合いからも評判は良かった。


 両人の亡くなった日はそれぞれ異なっている。しかし、チェバル家の埋葬手続きが使えなくなってからの死者であるから、市民の遺体をどうするかについて判断が保留される期間が数日あった。

 その間の死者であることは共通している。


 そしてそれぞれ亡くなった夜、遺体が安置されたそれぞれの家でゆっくりと起き上がったのを家人が目撃した。兵隊の駐屯所に助けを求めに行き、巡回中の兵士に鉢合わせして駆けつけた彼らが無力化した。同じように槍で頭部を貫く形である。


「復活した三人に特に共通点はない。生前に関わりがあったってわけじゃないし……最初に復活したというリビングデッドの元の人間は、亡くなったのは十年前って話だし」

「十年も前に死んだのなら、死体は腐って朽ちてるはずじゃないでしょうか」

 フィアナが当然の疑問を投げかける。


「そうなんだよな。どうやらチェバルの人間が埋葬する時に、なにか手を加えたらしい。だから死体は長い間が経っても腐りにくく、自分の足で立って歩くことができる。何をしたかはわからない」


 それも調べる必要があるけれど、魔法的なものであればカイ達にはお手上げだ。リゼ達の調査を待つしかない。


「ねえカイ。見つけた人は、どちらもすぐに兵士に会えたんだよね?」


 ユーリの指摘。見つけた人というのは、リビングデッドとして蘇った市民の家人だ。どちらのケースも、外を巡回していた兵士を見つけてすぐに助けを求められた。

 ユーリの言いたいことはわかる。巡回している兵士とはつまり、城や両名門の屋敷近くで不穏な動きがないかどうかの警戒に当たっていた人員だ。夜間に魔法使いの残党がなにかしないか。あるいは片付けの完全に終わってない死体や街路樹の残骸に何か起こらないか。


「三件とも狭い範囲で起こってるんだよな。城の中心地付近。ということは……」


 リビングデッドの復活が自然発生したものならば、その狭い範囲の中心に何かがあるはず。あるいは人為的なものであった場合、犯人はあまり行動範囲の広くない人間と考えられる。

 たとえば組織的には動いていない単独犯。あるいはその範囲から動くことが難しい人間。

 行動範囲を広く取る必要がない人物という可能性も、一応はある。


「とりあえず、これまで復活が目撃された範囲を中心に調べよう。それから、この付近で新しく亡くなった人が出たら、その人の警戒をする…………あとは、チェバルがやってたという埋葬政策についても調べないとな。やることは多いが、頑張ろう」




 そして、さっそく新しい死人がこの近くで出た。

 これまでリビングデッドの復活が目撃された範囲からは微妙に外れているけど、近い場所だ。警戒する意味はあると思う。


 今回の死者は小さな女の子。病気なんかには縁がなかったけど、突如として興奮して暴れだした馬にはねられて、幼い生涯を唐突に終わらせた。

 そんな突然の悲劇に見舞われた家を、外からフィアナとユーリが見守っている。


 カイはチェバルがやってきた埋葬の方法について探るということで別行動をしていた。



「なんというか、申し訳ない気持ちになりますね…………」

 いたたまれない気持ちになって、フィアナは隣のユーリに話しかけた。


 悲しみに包まれているその家には、先程からひっきりなしに弔問客が訪れている。

 死んだ女の子は明るく友達の多い子で、近所でも彼女のことが好きだった者は多かったらしい。なんであの子が、と悲しみに暮れる人々を見ているのは辛いし、その子が怪物として蘇るかもしれないから見張っている、自分達の立場が悪いように思えてきた。


「そうだね。でも、怪物騒ぎが続いたら、もっと悲しむ人が出る」

「それもそうですね……これ以上リビングデッドが現れないようにしなきゃですね。わたし達がしっかりしないと! 頑張りましょう、ユーリくん!」

「う、うん……」

 ユーリの言葉に元気づけられた気がした。というよりは、なんでもいいから自分を肯定する言葉が欲しかったのかもしれない。

 フィアナは、ユーリが引くぐらいに張り切った様子を見せた。


 しばらくすると女の子の遺体が入れられた棺が、大勢の人と共に家から運び出される。これから墓地に埋葬されるということだ。

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