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転移使い魔の俺と無能魔女見習いの異世界探検記  作者: そら・そらら
第6章 ファンタジー・オブ・ザ・デッド

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6-3 名門の屋敷

 仕事は仕事だ。引き受けよう。あのゾンビが街を歩き回る光景をもう一回見る気にはなれないし、出来事としても相当気になることではある。原因を突き止めたい。



 賄賂ではあっても非常に美味だった朝食の席から去って、俺達は馬車に揺られて宿に戻る。

 とりあえずは寝たい気分である。なにしろ、泥棒を捕まえるために夜通し起きて待ち構えていたのだから。なにかやるにしても一旦寝てから。とにかく眠い。

 それはレガルテ達も了承してくれた。早く解決しないといけないってことは重々わかっているが、睡眠不足で倒れてしまってはなんの意味もない。作戦会議はみんな起きてからだ。




「とりあえずは原因の追求だけど、その原因が魔法的なものだったら俺達にはよくわからない。だから、チェバルの家の捜索と調査はリゼがやるしかないと思う」

「えー? なんでわたしー?」


 目覚めた時には昼過ぎ。というよりは晩秋で短くなった日はすでに傾きだしている時間帯だった。このままでは昼夜逆転生活に入ってしまう。

 今の依頼はちゃんと普通の生活リズムでこなしていきたいから、どこかで直していかないとな。


 それはそうとして作戦会議。進行役はもちろんカイで、いきなりリゼに大役が任されることになりそうだ。リゼは不満っぽいけれど、これはこうなるしかないだろう。仕方ない俺が説明しよう。


「チェバルがどんな方法でゾンビを作っているのかは魔法使いにしかわからない。魔法でやってることは確実だからな。でも今この街にまともな、そして信頼できる魔法使いはあんまりいない。……レガルテやターナにとってという意味だけど、そこまではわかるな?」

「うん。レガさんも説明してたもんね」

「そしてレガルテとターナは、お前のことは信頼できる魔法使いだと思っている。先日のことでふたりの味方になったし、対立ばかりのふたつの家を潰すのに大いに活躍したからな……。要するにあのふたりは、リゼにこの仕事をしてほしいってお願いしてきたわけだ。お前にしかできない仕事だ」


 お前にしかできないって所を特に強調して言っておいた。


 レガルテ達が言っていた頼れない魔法使いというのは、政治中枢に食い込もうとしてできていなかったという人間のことなんだろう。

 けれど魔法使いはそれ以外にもいる。そう、冒険者達だ。冒険者は政治とは距離を置いている人間だから、こういう仕事は頼みにくいかもしれない。基本的に無頼漢だから信頼できるかどうかは微妙だし。

 しかし、リゼならなんとかなる。そういう考えなんだろう。


「わたしが信頼できる魔女……わたしにしかできない仕事……優秀ですごくて、将来は偉大な魔女になることが決まっているわたしの仕事……」

「いやそこまでは言ってない」

「そっかー。わたし、頼られちゃいましたかー。仕方ないなー。じゃあやってあげるしかないかな!」

「うん、お前が乗せられやすいバカで助かった」


 実際のところ、この無能に務まる仕事なのかは甚だ疑問だ。それでもリゼにしかできない仕事だろうから、こうやっておだててやらせるしかなかった。


 うまくいくかどうかは知らない。





 翌朝、なんとか普通の生活リズムに戻した俺達は、早速調査を開始する。他の三人は、別ルートで犯人を探すということになったから別行動。俺とリゼだけでチェバルの屋敷に向かった。


 屋敷の正面の大きな扉には城の兵士が立っていて、誰も入ってこられないように番をしている。レガルテ達から話は通っているようで、兵士達は快く通してくれた。そのついでに少し話を聞く。



 屋敷の中は現在無人である。調査はリゼに一任するようにと、城主一家から命令があったらしい。チェバルの人間だった者が侵入して証拠の隠滅などを図らないように、屋敷の出入り口にはすべて兵士が配置されている。今の所侵入を試みようとした人間はいない。


「秘密の隠し通路とかはないのかな? 一族の人間しか知らないような出入り口」

「あるかもしれないけど、あったとしても教えてくれないだろうな」


 広い屋敷の中には誰もいない。その中を歩き回りながら、ふたりきりで話す。

 チェバルの人間にも取り調べは行われているけれど、なかなか口を割ろうとはしないようだ。未だに自分たちは権力者であり、魔法も使えないような下賤の者と話すことはないということだ。まったくもう。


 この屋敷についてもそうで、権力者が持っている古い建物だし、隠し通路やその他の仕掛けがあるだろうと思われている。しかしまったくわかっていない。

 誰かが忍び込んでくる可能性は常にある。だから警戒は怠らないようにしなければ。

 俺は探査魔法を使って屋敷内をさぐる。ところが、うまく魔法を使えなかった。屋敷の中を見ることができない。リゼと俺の存在が見えなかった。確実に存在してるはずなのに。一方で、屋敷の外は普通に見えるけど。


「もしかしたら、妨害の魔法が屋敷にかけられてるのかもね。それ用の魔法道具とか、結界が張られてるのかもしれないし。ほら、魔法使いの名門って秘密にしたいことも多そうだし」

「なるほど」

 プライバシーの問題とかはあるのか。そりゃそうだよな。覗き見る魔法があれば、覗き見させない魔法だって存在するだろう。ならばしかたないか。


 それでは調査を始めるとするか。



「あの夜、城主様はチェバルの屋敷に降伏を呼びかけた。でも応じなかったらしいな。当主を拘束してるって言っても、無視してゾンビを動かし続けた。兵士や冒険者が強引に屋敷に押し入って、強制的に儀式を止めたらしい」

「屋敷の中の人も抵抗しただろうに。がんばったんだねー」

「城主自ら指揮してたから、兵士たちの士気は高かったらしいな」


 あるいは兵士や冒険者達も、権力を振りかざしていた魔法家に対する鬱憤が溜まってたのかもしれない。

 実際、屋敷の中はかなり荒らされていた。戦闘の結果と言えばそうかもしれないが、屋敷の中を荒らし回ったと言ったほうが納得できる気がする。城主に率いられている手前あからさまな略奪行為はできなかっただろう。けれど、ちょっと派手に暴れるぐらいのことはやったはずだ。


 抵抗したのはサキナックも同様で、向こうも屋敷の荒れ具合は似たようなものらしい。


「できればもう少しスマートに制圧をしてほしかったところだけどな。その方が調べやすかった」

「まあ、そうだよねー」


 そんな会話をしながら、俺達は屋敷の地下に降りる。

 そこには広大な空間が用意されていた。地下室といえばもっと狭いものを想像していたけれど、これはそうではなかった。広大な空間。床には巨大な魔法陣がインクで描かれていた。


 城主の軍勢が突入して、ゾンビを止めさせるためにこの魔方陣を汚した。インクをぶちまけて、その意味をなさないようにしたってことだ。

 またそこで、儀式の途中であった魔法使いとの戦闘もあったらしく、この地下室の荒らされ方が一番ひどいように見受けられた。


 儀式をやめさせてゾンビを止めるためだ。仕方がない。けれど調査を進めるのは難しくなってしまったな。

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