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転移使い魔の俺と無能魔女見習いの異世界探検記  作者: そら・そらら
第5章 いがみ合いの街

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5-27 地上と空中

 狼になったユーリに乗っているカイは、襲いかかってくる木やゾンビに対して剣を振るいながら城を目指す。

 後ろに乗っているフィアナも弓でゾンビ達を次々に射殺していく。弓矢では木に有効な損傷を与えられないのが辛いがゾンビ相手なら問題ない。どうやら頭を破壊すれば今度こそ完全に死ぬらしく、不安定に揺れるユーリの上でありながら見事にゾンビの頭部を射抜いていった。


 武装した兵士や冒険者達も街を襲う怪物と戦いを始めたから、その中でカイ達が特段目立つというわけではない。これが自分達だけなら明らかに意図があると思われて敵からの集中攻撃を受けているところだろう。

 敵とは木とゾンビだけではない。


「カイさんあそこ! 魔法使いの集団です!」

「わかった!」

 フィアナの指さした方を見れば確かに、ローブを着て杖を持った魔法使いが五人固まって戦っていた。

 冒険者のようにも見えるが、よく見ると攻撃する対象をゾンビにだけ絞っているようだ。つまり歩く木の戦いを援護するサキナック側の人間と見ることもできる。

 そして奴らは上空を指さして少し騒がしくなった。空を飛んでいるのはシュリー達ぐらいしかいなくて、して奴らはそこに杖を向けて攻撃の体勢をとる。


 その頃にはカイ達も魔法使い集団に向かっていたが間に合わない。ユーリの進路上に巨大な木が横入りして立ちふさがる。ユーリに枝を伸ばしていき捕らえようとする。


「ガウッ!」

 その木にユーリは容赦なく体当たりして押し倒し、枝に噛みつき引きちぎる。カイもユーリの体に絡みついてくる枝を剣で何度も切り裂くが、この木はなかなかの生命力を持っているようだ。

 その間に魔法使いの集団は上空のペガサスに向けてファイヤーボールを発射。幸いなことにシュリー達はそれを回避して反撃をして、巨大な火球によってふっ飛ばされた。


 だがこれで終わりではない。向こうから別の魔法使いの集団が走ってくる。やはり空を見上げているからシュリー達が目的なんだろう。


「俺達に任せてくれ!」

 ユーリの背中には乗らず自分の足で走りながら戦っていたレガルテが声を上げた。主に炎魔法で歩く木を圧倒していたレガルテとターナだが、魔法使いの相手もやるつもりらしい。


 ふたりは並びながら魔法使いの新手の方へ走っていく。

 レガルテは杖、ターナは杖の代わりに使ってるらしいナイフを構えながら魔法使いの集団の前に踊り出て声を張り上げる。


「我が名はレガルテ・サキナック! サキナック家現当主ガノルテ・サキナックの直系の孫である!」

「そしてわたしはターナ・チェバル! チェバル家現当主コモズビカ・チェバルの直系の孫だよ! そして!」


 ターナは一旦言葉を区切り、より強調するように言った。


「隣にいる男、レガルテ・サキナックの生涯の伴侶だよ!」

「そのとおり! 俺達の未来のために! 共に参る!」


 そう言ってからレガルテは魔法使い集団に向けてファイヤーボールを撃つ。


 さっきの名乗りは魔法使い達にそれなりの衝撃を与えたらしい。サキナックの姓の者とチェバルの姓の者が並び立ち伴侶と宣言して共に攻撃してくる。

 この街の権力構造を少しでも知っている者にとっては信じられない光景だろう。あの魔法使いだってどちらかの家の一族の人間かあるいはその手先のはず。だからより一層、レガルテとターナの事が信じられないだろう。


 それでもふたりの魔法使いは容赦なく攻撃してくる。自分の一族かもしれない相手でも容赦はない。ふたりの愛の前にはそんな倫理観は無力。

 レガルテのファイヤーボールをなんとか回避したらしい集団に、ナイフを持ったターナが切り込んでいく。俊敏さを強化する魔法でも使っているのかその動きは速い。敵のただ中に突っ込んで不幸なひとりの首を切り裂いた。

 敵集団は同士討ちを避けるために魔法の使用が制限され、とりあえず距離をとって体勢を立て直そうとしたところでレガルテの遠距離魔法が炸裂していく。


 息のあったふたりの戦いには危なげがない。ここは任せていいだろう。ユーリを絡め取ろうとしていた木も、枝をほとんど切り落とされるか引きちぎられるかして力尽きた。

 もちろんそれで終わりではない。空を見ればシュリー達が新しい敵と戦闘していた。

 同じようにペガサスに乗った魔法使い。しかも相手は三体。


 フィアナが弓を引いて矢を放つ。それは敵のペガサスのうち一体の腹部に真っ直ぐ命中した。


「うまいな」

「ありがとうございます。でもなんだか複雑な気分です。ペガサスってお金持ちしか乗れない高い生き物なんですよね? それを矢で射殺すなんて」

「それが戦いってやつだ。よし行くぞ」

 敵の数は多い。悠長に感慨にふけっている暇はない。それはフィアナもよくわかっていて、敵のペガサスに向けて次の矢を放つ。それを待ってからユーリはまた駆ける。目指すは城というのは変わらない。



――――――――――――――――――――



 三体ものペガサスに一斉に襲いかかられた時はまずいと思ったが、地上からの援護により敵の数が減った。フィアナのおかげだ。

 ペガサスに乗った敵は俺達にしか注意を向けてなかったらしく下から不意に飛んできた矢には気づかなかった。ペガサスの一体の腹の側面に矢が刺さり、ペガサスは悲鳴をあげながら落下していった。乗っている魔法使いがどうなるかは知らない。たぶん地面に叩きつけられて死ぬだろう。

 敵の頭数が減ったのを機に、シュリーはハタハタを駆り残るペガサスに突っ込んでいく。


 俺達もそれに合わせてファイヤーボールを撃ち込み攻撃。敵はこちらの体当たりを回避しながら風魔法で火球を吹き消した。なるほどそんなやり方があるとは。オークや狼とは違うんだな。


 次はファイヤーアローを数百本一斉に撃つ。それでも風魔法で吹き消されるがその隙にフィアナの二本目の矢が敵に刺さる。それはペガサスの片方の羽を貫き機動力を一気に失わせ、そこに俺のウインドカッターが炸裂。ペガサスの首と騎手の胴をまとめて両断した。


 血と臓物の雨が下に降るだろうがそれを確認する暇もなく最後の敵。地上にいるフィアナ達にも注意を向けなければならなくなったペガサスの騎手は明らかに動きが鈍くなって、そこに俺達が急接近。

 体当たりを回避しようとした敵だがその動きはギリギリで。ほぼ接触しながらのすれ違いの際に俺は至近距離からのファイヤーアローを食らわせる。今度は回避も打ち消しもできず、炎の矢がペガサスと魔法使いまとめて貫き殺す。


 ペガサスの増援は今のところ見当たらず、俺達は地上のカイ達と足並みを揃えながら再び城へと向かっていった。

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