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転移使い魔の俺と無能魔女見習いの異世界探検記  作者: そら・そらら
第5章 いがみ合いの街

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5-24 隠し場所

 伝説の中で否定されてきた俗説こそが正しかった。その可能性を前にしてシュリーは精神的高揚を隠せない様子だ。

 外では大惨事が起こっているが、そっちはあんまり気にならないらしい。そういう人だ知っている。


「もちろん、植物を操るとか死者を蘇らせるなんて魔法自体が後世に名門が考えついて編み出し、後世の捏造として物語に組み込んだということは十分にありえる。そこは調査せねばならぬだろう。…………もし千年前の魔法使いがこの魔法を使えたならば、アーゼスが天候を操る魔法でそれに勝てた理由も解明せねばならないしな」


 それからふと思いついたように、シュリーは言った。


「おそらくは、木を動かしているのがサキナック。リビングデッドを生み出したのがチェバルだろう。公共事業を隠れ蓑に自家の戦力増強とは、なかなか巧いな」


 なんとなく察する。緑化政策でサキナックは街中に街路樹を植えた。それを魔法で急成長させて自立して動くようにさせたのが、さっきの歩く木なんだろう。チェバルは福祉政策で市民から出た死者の埋葬を引き受けているという。それを都市内に点在する共同墓地に埋葬した。墓地を点在させたのはどのエリアに住んでいる住民にも墓参りがしやすいようにという配慮だって表向きはなっているんだろう。実際には戦略的な理由なんだろうけど。必要があるとすればどこにでもすぐにリビングデッドを送り込むことができると。

 たぶん墓地以外にもチェバルの所有してる施設にはある程度の死体の備蓄があるんだろう。だから街中に街路樹のお化けが跋扈するのと同じように、ゾンビがこうやって歩き回って敵対する勢力の怪物を攻撃しているってわけだ。


「さて、あの木とリビングデッドの来歴はわかった。どういうものなのかは結局はよくわからないが。いや見たままの動く木と生きている死体だが、仕組みはわからない。そこら辺は君たちの方が詳しいんじゃないか? あたしと違って魔法の専門家だし、なにより当事者だ」

 シュリーはここで初めてレガルテとターナに目を向けた。あれを動かしたと思われる勢力の人間がここにいるじゃないか。

 このふたりだって外で動く木やゾンビを見て驚いていたし、それが演技には見えなかった。だから知らないといえば知らないのだろうけれど、とりあえず話しを聞く意味はあるだろう。


「サキナックが熱心に街路樹を植えているのは俺も当然知っている。そこにそんな意味があるとまでは…………知らなかった」

「わたしも同じさ。サキナックとの対決の切り札になる武器があるっていうのはなんとなく聞いていたけど」

「そうか。となると、知っているのは一族の中でも一定以上の地位にある人間だけとかかな……」


 レガルテとターナの返答はあまり役に立つものではなかった。それは仕方ないと受け入れる。


「しかし対決のための武器か。たしかに、今まさに対決が起こっていると言えるだろう。両家が戦う理由もきっかけも十分にあったから、それが今夜お互いに我慢のならない状態にまでなったということだ。さて」


 もとから両家は緊張状態だった。この戦い、というよりは戦争が起こったこと自体に驚きはない。問題はここからどう動くかで。禁書の棚をちらりと見るシュリー。

 貴重な資料を千年もの間破棄し続けてきたという事実を城主に報告する。その目的は変わってないようだった。


「街の混乱に乗じて城に乗り込み城主に直訴する。いけるかな…………?」


 こんな状態なら城主に対する守りも硬いだろう。大勢の兵士に守られているだろうに、それを突破するのは可能だろうかという懸念。

 いや、混乱している今の方が平時よりはやりやすいはず。そうシュリーは考えをまとめたのか俺達に指示を出そうと口を開こうとして。



 図書館の正面入口の方から轟音が響いたために言えなかった。全員でそちらに向かう。


 図書館入口の扉が木とゾンビによって破られ、外の様子が見えるようになっていた。


 街路樹が巨大になった奴が図書館に倒れかかった。それが扉のある、ただの壁と比べると少しだけ強度の脆い所に直撃してぶち破ってしまったと。

 この木を引き倒したのはもちろんゾンビ達で、なおも木にとどめを刺すべく攻撃を繰り返す。とはいえ引っ掻いたり噛み付いたりした程度では木を殺すことはできず、木も倒れた状態では満足に動けずゾンビを殺しきれずにいた。

 お互いもがいている状態で、よく見るとさらにもうひとり戦いに参加しているのに気づいた。


「わー! こらっ! やめなさい! ペガサスは繊細なの! 汚い手で触らないで! きゃーっ!」

「マルカ……お前こんなところでなにやってるんだ……」

「シュリー! やっと見つけた! 覚悟しなさいでもその前に助けて!」


 ペガサスにまたがった女性。ワケアの街を出発する前にシュリーに絡んできた、学術院の同僚か。それが何故かここまで飛んできて木々とゾンビの戦いに巻き込まれている。


 とにかく助けようとカイが前に出て、木の枝を剣で切り落としゾンビの首をはねる。マルカはペガサスを操りなんとか図書館の建物の中に。

 ゾンビのうちの一体がマルカを追いかけようと建物の中に入っていく。


「なるほど。リビングデッドも木も、中に魔力を入れて動かされているのか……魔法によってこうなってるなら、当然だな」

 図書館の建物の中に入った途端、ゾンビの動きが止まり力なく崩れるようにして倒れた。同じようにこちらに向かってこようとした木も動きを止める。


 図書館には魔力を封じる結界が張られている。おそらくはその影響により、この建物の中ではゾンビも歩く木も動力としている魔力が使えなくなり機能を停止する。ただの死体と大きな木に変わるだけだ。


「この中にいれば安全ってことだな。もちろんここに引きこもるつもりはないが。さて諸君、これからの動きだが……」

「こらシュリー! わたしのこと無視するな!」

「なんだよマルカ……お前こんなところに何しに来た? ほら、ここは危ないからおうちに帰りなさい」

「断るわ! あなた、アーゼスの印章を手に入れたらしいじゃない! なんでそんな大発見をわたしに黙ってるのよ!」

「お前に伝える義理はないからな」

「ムキーッ!」


 怒っているマルカと軽くあしらうシュリー。マルカってシュリーより年上なんだよな。そうは見えないけど。彼女が何者かを知らないレガルテとターナは

突然の闖入者に唖然としている。

 なおもマルカはわめき続ける。


「どうせその印章が本物かどうか自信がなかったから院に報告しなかったんでしょ! ほら、水晶持ってきたから確かめてみなさい! どうせ偽物だろうけど!」

「なっ……!?」


 その言葉にシュリーがはじめて、マルカに驚いた表情を見せた。

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