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転移使い魔の俺と無能魔女見習いの異世界探検記  作者: そら・そらら
第5章 いがみ合いの街

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5-6 探査の魔法

 探査魔法。また新しい種類の魔法が出てきた。よくわからないからリゼに続きの説明を促す。


「つまり、今の自分の周りにいる人間やそれ以外の動物。たとえばオークなんかの怪物でもいいけど、それらの位置が遠くまでわかるっていう魔法」

 なるほど。レーダーみたいなことができるというイメージかな。


「応用すれば、悪意をもっている存在とか、術者に敵意を持っている人間を見つけたりもできるよ。森を探索中にオークがこっちに接近してないか確認するのにも使える」

 そしてこの力を使えば暗殺者が近くにいればわかる、というわけか。


「心を研ぎ澄まして、目を閉じる。詠唱は"我の周囲を余さず見せよ。サーチ"やってみて」


 リゼに言われたとおり、目を閉じて心の中で詠唱。ボタンが目になっているぬいぐるみが目を閉じるとはどういうことかと気になるが、なんとかなった。


 途端に、目を閉じているのにも関わらず視界が開けた。



「なんだこれは……」

 俺は目を閉じたまま周囲を見回す。目で見ている世界とはかなり見え方が違うが、確かに俺は世界を見ているのだとは思う。

 俺の視界には生物だけが見えていて、建物や地面といった物体はすべて真っ黒な背景と化していた。見えている生物も普段見ている姿とは違って、白い影のような姿をしている。

 けれど、誰が誰なのかははっきりとわかるという不思議な感覚。俺を手に乗せてるのはリゼだし、前を歩いているのはカイとシュリー。その他の大勢の通行人や、庭園の植物なんかも見える。


 少し遠くに意識を飛ばせば、この城に伸びている街の大通りを行き交う多くの人々も見えた。建物の二階にいる人間は浮いて見える。

 そう、意識を飛ばせば遠くにいる人間さえも観察できる。もちろん人だけではなく、荷物を引く馬や街路樹やその上に留まる鳥なんかも見えた。


「すごいなこれ……周りのありとあらゆる生物が見えるんだな。人間だけじゃなくて、動物も植物も」

 でも、オークなんかの怪物の探索にも使えるのだから当然と言えば当然かもしれない。けれど俺の言葉にリゼは驚いた様子を見せて。


「え? 植物も見えるの? 探索魔法だと動物は見えても植物は見えないって聞いたことがあるけど……」

「そうなのか? でもこの庭園の花も、通りの街路樹も普通に見えてるぞ」

「そっかー。…………つまり、わたしの教え方がうまくてコータが普通よりもすごい魔法を使えたってことかな! だってわたしすごい魔女だし!」


 そう言って得意げに無い胸をはる仕草も、目を閉じている俺にははっきり見えた。


「そんなわけあるか。単純に俺がすごいって考えた方がよっぽど正しいと思う」

「えー? なになにコータってば、自分で自分が優秀って言っちゃうんだー」

「お前も同じだろ!」

 確かに自惚れ気味な言い方をしてしまったがリゼにだけは言われたくない。自分のことは棚に上げて、俺の頬をつんつん突いてからかうリゼの姿もちゃんと見えてるぞ。ていうか、いつものことだがウザい。


 気を取り直して魔法の効果の続きだ。


「意識を飛ばして遠くを見るのと同じような感覚で、自分達に敵意を持ってる相手とか単純に悪いことしてるって考えてる人間とかを探すって思ってみてよ。見つかるらしいよ」

 リゼに言われた通りにイメージをしてみる。この周辺で悪事をしている人間はいるか。


 すると、俺の視界からリゼが消える。その他さっきまで白い影として見えていた人たちや、動植物まで消えてしまう。全てではなかった。視界に残った数少ない人間は、さっきまでとは違って赤い色の影となっている。

 例えば、俺達の後方を歩いている若いカップルとか。見た目で言えば別に不審なところはなく、普通に目にしていればまったく気にも留めないような相手だ。しかしこうやって注目してみると、ちょくちょく俺達に注意を向けているようだった。


「さっきの家の奴らかな。さっそく俺達を尾行してる」

「え? どこどこ? 見当たらない」

「慌てたように探すな。後ろにいる若い男と女だ。見るなよ。尾行してると気付かれたら面倒だ」

「わかった。前しか見ません。大丈夫わたしは後ろは見ない」

 まったくもう。シュリーの提案通りにいくならば、このまま監視を続けられながらチェバルの屋敷まで入ってその姿をあのカップルに見せるって方針でいいかな。


「よし、だいたいは使い方がわかった」

「そっか。この魔法は使い続けてれば疲れるだろうけど、コツを掴んで範囲を絞っておけばある程度は長い時間探査魔法を使ってる状態にも出来なくはないって本には書いてあったよ。特に警戒したい間は使っておくのもありかもね」

「そうか。じゃあ今のうちに使うのに慣れておこうか」


 今のところ、都市全体は無理でもそれに近い範囲をカバーして見ることはできそうだ。それに、普通なら目の届かない範囲にいる人間を見るのはちょっと楽しい。見えるのは白い影なんだけど、俺がよく知っている相手はそれが誰なのかはわかる。例えばフィアナやユーリも見えるぞ。今ふたりは宿の部屋にいる。それから揃って部屋を出て、そのまま外に出て並んで通りを歩き始めた。


「フィアナとユーリが、宿から出ていくぞ。どこに行くかはわからないけど」

「退屈だし外に遊びに行ったんじゃない? え、ていうか宿のあたりまで見えるの? ちょっと範囲広くない?」

 ちびっこふたりの自由行動は寛大に許したリゼは別のところに驚いた。


「宿の場所とか余裕で見えるんだが…………なんなら、もっと遠くまでいける。さすがに一番外の城壁とかは無理だけど、そのひとつ内側の城壁辺りまでなら見える」

「おおう……コータは本当にすごい魔法使いなのね…………」

 すごいものを見てしまったという様子のリゼ。彼女によれば、探査魔法で見れる範囲はもっと狭いものらしい。


 なんでなんだろうなと考える前に、前を歩くカイに声をかけられた。

「おーい。そろそろ着くぞ。チェバルの屋敷だ」

 その声に反応して俺は目を開ける。さっきの屋敷と似たような立派な屋敷が目に入った。あれが、この都市を支配するもう一つの名門の本拠地か。


 再び探査魔法。サキナックによる監視者は間違いなくついてきていて、俺達の様子を伺っている。ここまで相手の屋敷に近づけば完全に怪しまれているだろうし、もう後戻りはできない。

 よし、では行きましょうか。

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