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転移使い魔の俺と無能魔女見習いの異世界探検記  作者: そら・そらら
最終章 俺のいる世界

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14-47 怪物の群れ

 ミーナが報告した通り、しばらく走るとオークの雄叫びが聞こえてきた。やがて、進路の正面に太い棍棒を握った緑色の巨体が登場。


「ファイヤーボール!」


 俺は詠唱と共に火球を放つ。かなり意識して威力を抑えたつもりだったけど、やっぱり出てきたのは巨大な火球。それがオークの上半身をふっとばした。

 リゼと出会った時の、初めての魔法と同じ。俺の魔法は威力が強い。強すぎる。


「ルファ!」

「ええ! わかってますよ!」


 ルファが袋から、輝きを失った魔法石を取り出しては捨ててく。たかが火球の一発なのに、かなりの量の魔法石がただの石になった。


 ファイヤーボールだと十発。昨夜のリナーシャの推測が思い出される。乱発すると、今度は俺の存在自体が危うくなるんだよな。

 サキナとオロゾが、新手のオークに火球での攻撃を行う。二発同時に当てて殺した。上半身をふっ飛ばしはしなかったけど、それで十分殺せる。


「基本的にはわたし達で攻撃するわ」

「コータ殿は、危なくなれば援護する程度で良いですぞ」

「お、おう。わかった」


 捨てられた石の量を見て、ふたりも悟ったのだろう。任せてほしいと言ってきた。

 そうだな。それが正しいやり方だ。俺は、リゼがいないとなんの役にも立たない。


「ごめん。迷惑かける」

「気にすることはないさ。今まで、コータ達に助けられて来たんだから。そうだろう、ミーナ?」

「うん。そうだよね。コータにも、悔しいけどあのリゼにも助けられて、わたしはここにいるから」


 突進してくるオークに、トニは尻尾を振ってそれのバランスを崩させた。そのオークの上に乗って動きを封じて。


「ファイヤーアロー!」


 上のミーナが至近距離からオークの頭部に矢を放つ。


「まあそういうわけだから、コータが活躍するのはリゼと合流してから! それまではわたし達に任せて!」

「はっは。ミーナは威勢がいいな。なんだかんだで、リゼのこと好きなんだね」

「当たり前でしょ! 友達なんだから! ほら、右の方からオオカミの群れが来る!」


 僅かな隙で探査魔法まで使って状況把握。役割を理解している。


 すぐさまサキナが右を見つめながら詠唱。風の刃が木々ごと迫ってくるオオカミを切り殺した。

 首都の近くで大量発生してた狼の正体がこれなのかもな。ゼトルが計画を成功させてから、力の誇示に使うつもりだったのだろう。その戦力も今、投入しなきゃいけなくなった。


「ほっほ。一応、この木も街の資源。勝手に切れば怒られるかもしれませんぞ」

「まあね。だけどほら。師匠もこの森爆発させて回ってるじゃない? 弟子のわたし達が続かないでどうするの?」

「ほっほ。道理ですぞ。ウインドカッター!」


 サキナとオロゾで、更に何発もの風の刃が放たれ、木々が倒壊していく。環境保護って発想自体がない。


「道理って言うのか、それは」

「諦めろ、カイ。お前が悪い顔して、森を無茶苦茶にしようって言ったのが発端だ」

「そうだな。うん、そうだ」


 今になって人の良さが出てきたらしいけど、理屈の上ではサキナ達の方が正しい……のだと思う。どっちにしろ、今更止めても意味はない。


 右側から来るというオオカミはすべて討ち取った。俺達はまた、リゼに向かって前進する。


「あー。報告。リゼがゼトルに連れてかれた。何されるかはわからない。あと、ロライザさんの所にドラゴンが大勢向かってるね。そのうち二頭に、人間が乗ってる」

「レオナリアと、例の傷の男か?」


 ミーナがこくりと頷いた。


「ロライザさんが心配だけど……」

「ほっほ。あの師匠が、ドラゴン程度に遅れを取るなどありえませんぞ」

「そうそう。わたし達は自分の仕事をするわよ」

「そうだな。前進。ええっと、魔法使い達は周囲を警戒しながら前方にウインドカッターを放って視界の確保だ」

「お、吹っ切れたか? ヤケになったか?」

「どっちもだ。ていうか、そのふたつあんまり意味変わらないだろ」

「まあな」


 前方から新たなオークが一体。両側面からはゴブリンが数体。

 ゴブリンは魔法使い三人に任せよう。カイはオークの方へ走っていく。


「こっちだデカブツ!」


 棍棒を持ったオークに接近しながら、振り下ろされるそれを回避。同時にオークの手首を斬りつける。

 切断なんかする必要はない。腱を傷つけるだけでいい。それだけで、オークは悲鳴を上げながら棍棒を取り落とした。

 さらにオークの後ろに回って膝の腱も切る。オークはたまらず崩れ落ちた。死にはしてないけど、この先どうあってもまともには動けない。死んだも同然だ。


 一息つく暇もなく、進行方向から大量のゴブリンが現れた。


「カイ、戻ってこい。あれは俺が焼き払う」

「いいのか?」

「魔力の温存は大事だな。だけど使いどころはある」


 数十体まとめて焼き払えるなら、有効活用と言えるだろう。

 こっちに駆け寄り火球の軌道からカイが外れるのを確認してから詠唱。迫りくる大量のゴブリンが、俺の魔法で消し炭になった。

 それでもまだ後続が数匹走ってくる。そっちはカイに任せよう。


「思ったより消費激しいですよ」

「同じファイヤーボールを、後何回打てそうだ?」

「うーん。石のそれぞれの魔力蓄積量にもよりますけど、重さ的にあと五、六回って感じでしょうか」


 リナーシャに言われた回数より少ない。さっきの火球は気合を入れすぎたからかな。

 節約しなきゃいけないのはわかってる。けど、向こうから新手のゴブリンの群れ。


 周りを見れば、破壊された檻が目についた。破壊されてないけど開いてる檻も。

 ロライザに爆破されたやつと、生物商人が俺達の迎撃のために開けたやつだろう。


 ここはすでに敵の拠点。それも中心へ近付くにつれて檻の数は多くなるだろう。そしてリゼはそこにいるはず。


「リゼの様子は?」

「見当たらない。ゼトルも。たぶん、探査魔法が効かない建物の中に入れられたとか……あ、出てきた。なんか慌ててる。逃げてるのかな?」

「ゼトルからか?」

「たぶんそう」


 建物の中に入れられて、隙を見て逃げたのか。うん、黙って捕まったままでいる奴だとは思ってなかったさ。


「でもさ。リゼの周り、結構な数の怪物がいるよ。急がないとまた捕まっちゃう」

「わかった。急ごう。……邪魔だ」


 こっちにすがりついてくるゴブリンを蹴り殺しながら、カイが全体に指示を出す。


 建物があるってことは、それが敵の本部だろうし。そこに怪物も多いだろう。

 ロライザの空爆支援も、今はドラゴンを相手にするのに忙しそうで期待はできない。俺達が行くしかないってことだ。

 それまでの間は、リゼには敵地を逃げ回って混乱させていてほしい。

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